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赤瑪瑙奇譚 第一章――3


 カムライが気づくと、 覆面から 心配そうな目が 見つめていた。
 柔らかい寝台に寝ている。 知らぬ間に 運ばれていたようだ。
 きっちりと 結ってあったはずの髪も、 知らぬ間に 解かれて流れていた。

「気分は どう?」
「まだ 体中がだるい。 水をくれないか」
 ユキアが 水差しから汲んだ水を持ち、 カムライの肩に 腕を差し入れて 飲ませた。
「余計な事をしたようですね」

「そんな事は無い。 飛投剣は 私を狙ったものだ。
 貴女がいなければ、 どのみち毒で死んでいる」
「飛投剣というの?  曲線で飛ばせても、 命中率は 低いでしょうに」
「ふっ、 本来は捻らない 真っ直ぐなものだ。 毒を塗ってあったから……」
「わかった、 どこかに かすり傷でも付けられれば良かったから、
 避けにくいように 捻りを入れたのね」

 カムライは頷くと、 苦心して 帯に絡めてあった鎖をはずした。
 何の変哲もない 金の鎖の先には、 原石そのままの 赤い石が付いている。
 半透明の 朱色に近い赤が、 暖かな光を宿していた。
「命の恩人に お礼を」

「気にしなくても良いのに。 お礼を受けるほどの事ではないし」
「私の気持ちだ。 受け取れ」
 無理やり渡されたものを、 ユキアは何気なく 首に掛け、 胸に下げた。
 胸に 安心感のような 暖かい気持ちが 広がる。

「これは 何と言う石?」
「赤瑪瑙(あかめのう)、高価なものでは ない」
「とってもきれい。 本当に 貰ってもいいの」
「君に 持っていて欲しい」

 この時、 カムライにも 解らなかった。
 顔も知らない娘に 何故 あれを 渡す気になったのか。
 幼い頃から、 お守りのように 肌身離さず持っていた石なのに……。


 翌日、 別荘に馬車が来た。
 降り立ったのは セセナだった。
 付いてきた召使が、 扉を訪っても 答えが無い。
 セセナは勝手に入って、 姉を 探すことにした。

 奥まったところにある 日当たりの よさそうな部屋、
 見当をつけた セセナが扉を開くと、 寝台に 見知らぬ若い男が 寝ていた。

 セセナは、 父より美しい男に 初めて出会い、 呆然として見つめてしまった。

 部屋の外から、 侍女が 大声で呼んでいるのが聞こえる。
「ひめさま~、 姫様、 どこですか」
「あ……」
 慌てて 部屋から飛び出した。

 廊下を戻ったところに、 ホジロが やって来た。
「セ…セナ様 ですか?」
「ええ、 あなたは?」
「この別荘の管理をしている ホジロと申します。
 突然いらっしゃったので、 びっくりしてしまいました。 失礼」
「あの部屋に寝ているのは どなた」
「ああ、 庭で倒れていた 怪我人です。
 ユキア様が 手当てをするように とおっしゃいましたので。
 ユキア様は 離れにおいでです。 ご案内いたしましょう」

 セセナは上の空で 離れに連れて行かれた。
「メドリさん、 セセナ様が お越しです。 ユン……ユキア様は 御目通りできますか」
 ホジロは 扉を叩きながら、 不自然とも思える 大声をあげる。
 しばらくして やっとメドリが 顔を出した。

「まあ、 セセナ様 どうなさったのですか 突然に……」
「あ、あの、お姉さまを驚かそうと思って、
 流れ星が見えるとおっしゃっていらしたから、わたしも見たいし」

 慌てて着替えたユキアが 笑って出迎えた。
「本当に驚いたわ、 吃驚よ」
「お姉さまは 母屋にいらっしゃると思って、 男の方が寝ている部屋を 開けてしまったの」
「ああ、 怪我をしていたので 手当てをさせたけれど、
 得体の知れない人だから、 関わっちゃ駄目よ。
 治ったら すぐに出てもらうわ」

 自分の所為で 傷を負わせたと思い、 手当てをしたが、
 明らかに 殺し屋に追われていたようなのに、 事情を話そうともしない。
 あんな危険な男を、 セセナに 近づけるわけにはいかない。

 だが、 心配することも無く、 まだ動かぬ体に 力を振り絞って、
 その日のうちに カムライは 何処かへ 姿を消した。


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コメント
30: by ポール・ブリッツ on 2012/04/29 at 08:49:57 (コメント編集)

三角関係のはじまりですか?(^^)

カムライさんには女難の相がありそうですね(笑)

31:Re: タイトルなし by しのぶもじずり on 2012/04/29 at 11:11:20 (コメント編集)

> 三角関係のはじまりですか?(^^)
うふふ、ドロドロはお好きですか?

ざ~んねん。昼メロじゃないので。ドロドロにはなりません。
冒険ファンタジーですから。一応ね。

そんな事しなけりゃいいのに って事を片っ端からやってのけて、ドツボにはまる。
そういう昼メロのパターン、苦手です。

でも、大人として、苦手なことにチャレンジするのも 大切ですかね。
今度やってみようかしら。  ドロドロ

32: by ポール・ブリッツ on 2012/04/29 at 13:46:48 (コメント編集)

実はわたしもドロドロ苦手で(^^;)

だからわたしの書く恋愛ショートショートは、やたらと短いですよ(^^)

37:Re: タイトルなし by しのぶもじずり on 2012/04/29 at 20:01:57 (コメント編集)

> だからわたしの書く恋愛ショートショートは、やたらと短いですよ(^^)

まだ読んでいないので、恋愛ショートショートを読みに行かなくちゃ。

41: by lime on 2012/05/03 at 07:47:18 (コメント編集)

カムライと言う男、なんか気になりますねぇ。
(って、いい男だからというのもあるけど^^)

ユキアは、このあとカムライと、どんな関係になって行くのかも気になります。
読むのが遅くてごめんなさい。
ゆっくりと物語を追わせていただきますね。

43:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/05/03 at 10:46:01 (コメント編集)

毎度 ご来店ありがとうございます。

> 読むのが遅くてごめんなさい。
いえいえ とんでもございません。

どちら様も ご自分のご都合とペースで 読んでいただければ、充分です。
多少の暇つぶしになれば、光栄です。

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