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クロウ日記 一

 およそ自然界においては、 雄のほうが はるかに美しい。

 百獣の王、 獅子の勇姿を象徴する鬣(たてがみ)も 雄のものである。

 優美な鹿の頭上を飾る 見事な角も、雄鹿のみが 持つ。

 鳥類でも 孔雀をはじめとして、
 より華麗な彩りの羽をまとっているのは 決まって雄のほうだ。
 求愛の踊りを踊る鳥も、 身を震わせて啼く 虫たちも、
 見栄えのしない雌に対し、命の限りを尽くして 愛の告白を 繰り返す。


 闘魚 と呼ばれる魚がある。

 宮中の舞姫か と思われるほどに華麗な 真紅の鰭(ひれ)を持ち、
 水中花のごとく襞(ひだ)を 水中に なびかせるのが 雄であり、
 くすんで 褪(あ)せたような色をした、 ずんぐりと大きめ なのが雌である。
 
 雌は 卵を産んだらそれっきり。
 寝食を忘れて、 生まれた卵を守る のは雄の仕事だ。

 子育てさえしない 丈夫だけが取得の 不細工な雌を獲得する為に、
 闘魚の雄は 鱗を散らし、 赤い衣装を 血に染めて、
 ボロボロになるまで 競争相手と 闘うのだ。

 自然界の 悲哀である。

 人間もまた、 そういう自然界の一部である。
 女よりも はるかに美しい男 がいたとしても、なんら 不思議は 無い。

 クロウは そういう男だった。
 その艶(あで)やかな 美しさは、 国一番の美女 と称(たた)えられる兄嫁 をさえ凌(しの)いだ。

 但し、 人間は もう少し 複雑だ。


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コメント
71: by LandM(才条 蓮) on 2012/05/13 at 18:58:40

あ、ありますよね。
自然界で。メスが大きいとか。
色々・・そういう薀蓄大好きですね。
それを語りで始めるのは非常に文章力があってよいですね。
感服いたします。

初めましてです。
場末でファンタジー小説を書いている才条 蓮です。
よろしくお願いします。

73:Re: 才条様 by しのぶもじずり on 2012/05/13 at 22:14:49 (コメント編集)

ようこそ いらっしゃいませ

蘊蓄がお好きですか。

「闘魚」はまたの名をベラ。
少し前に、TV受像機のCMフィルムで使われていた真っ赤な魚が、ベラの雄です。

蘊蓄はほどほどに、と心がけていますが、また覗きにいらしてください。

286: by ササキ on 2012/07/14 at 21:49:20 (コメント編集)

しのぶもじずりさんこんばんは。

漢文さながらの品格ある文章に見とれておりましたが、半角のスペースで読み易く工夫されてもいるのですね、文の固め方も工夫うの跡が……凄い!!

完全に本とは違う形を創られているのですね。モノを知らない僕ですが、感嘆致しました。

物語にも惹きつけられてしまいます。またよらせて頂きます。

287:Re: ササキ様 by しのぶもじずり on 2012/07/14 at 22:14:36 (コメント編集)

ようこそ いらっしゃいませ

多くのブロガーさんが、 横書きの記事は 読みにくい、 という不満を持っています。
しかし、 縦書きのテンプレートは 非常に少なく、 まだ 使い勝手の良さそうなものを選べるまでになっていません。
ブロガーとしては 新米ですが、 少しでも読みやすくしよう と悪戦苦闘しています。
何度か表記方法を変更したりして、 印刷物とは違うスタイルを試行錯誤中でございます。
縦書きでは 苦もなく読める流れが、 横書きでは流れないと感じ、 半角スペースを入れています。

ご意見などありましたら、 お寄せ頂けると ありがたいです。

是非、 またお越しください。 お待ちしております。

1503:管理人のみ閲覧できます by on 2013/07/24 at 00:34:18

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