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くれないの影 第六章――5



 闘いから離れた庭の奥、
 金糸銀糸の衣装を身にまとい、 月の光を浴びて立つのは、 賊が目当てにする 綺羅君。
 動く度に光が踊る。

「やあ、 たんと現れたな」
 のんきにキラキラ光っていた。

 後発の面々は、 陽映たちを無視して綺羅君を目指し、 踊りかかった。
「ぐえっ」
「ぐわあー」
 たどり着けずに、 先頭が倒れた。

 綺羅君を背中に守るように、 十人ほどの黒装束が囲っている。
 形成は逆転した。

 頭目は 打つ手を求めて辺りを探った。
 黒装束の守りは堅く、
 肝心の綺羅君に近づくことはおろか、 確実に仲間が倒されていく。
 腹を空かせているはずの三人も 衰えを見せない。
 部屋の中には、 赤黒い横顔を見せて 座っている女がいる。
 白い塊は うずくまった猫だろうか、 役に立ちそうも無い。

 そして、 柱の陰から 恐る恐る覗き見をしている娘がいる。
 見つけた!

 牛車を襲った時に、 まくれ上がった簾から垣間見えた 鳥座領主に間違いない。
 使える。
 人質に取って脅せば、 都の流人などより主を選ぶはずだ。

 頭目は 黒装束の者たちを、 鳥座家配下の忍と判断していた。
 残念ながら不正解。

 九十谷から 修験者の姿でやって来た御所忍とは 知る由も無かった。
 綺羅君に頼まれ、 紫苑が門柱に記した『目』は、 彼らへの合図。 
 しかし 思い込んでしまったものは 仕方が無い。
 近くにいた一人に目配せを送り、 乱闘をぬって部屋に近寄った。



 鹿の子は 押さえきれない興味に引かれて、 少しだけのつもりで覗きに出たのだが、
 あまりのすごさに うっかり動けなくなっていた。
 騒ぎに動じることなく座っている白菊も、 とんでもないと思った。
 どっちが勝っているのか負けているのかも よく分からない。
 やっぱり隠れよう と決心して、 後ずさり始めた時、
 明らかに鹿の子をめがけて来る賊と 目が合ってしまった。
 ものすごく ヤバイ。
 どんどん近づいてくる。

 賊は 縁側に足を掛けざまに飛び掛ってきた。
 つかまれた袿(うちぎ)を置き去りに、 中身だけ逃げたが、
 そんなことで諦めるはずも無く、
 袿を放り捨てて 腕を伸ばしてくる。

 と、 賊は もんどりうって吹っ飛んだ。

 突然投げ飛ばされて地面に転がった頭目は、 あやうく体勢を立て直す。
 目にしたのは、 忽然と現れた 美しい若武者だった。

 人間(ひと)とも思えぬほどに 妖しく美しい。
 頭目は、 綺羅君が流される前の 鳥座のことは知らない。
 無論、 少年にも見えるたおやかな若武者が
『鳥座の小天狗』と呼ばれた剛勇、 紅王丸とは 思いもよらぬことだった。

 紅王丸は、 切れ長の双眸に光を宿し、
 真一文字に すらりと太刀を抜き放った。

 頭目も 剣を構える。
 紅王丸は 賊をめがけて、 月を背に 高々と飛び上がった。



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