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くれないの影 第五章――7



「えーと、 綺羅君様なんだけど……」

「隠れ場所は自分で何とかする と仰せだったが、 大丈夫だろうか。
 今頃 押し倒していなければいいのだが」
 陽映が 苦笑交じりに、 ぼそりと言う。

「えっ、 誰が誰を?」
 鹿の子が聞き返したのは、 あくまでも反射神経だ。
「綺羅君が……」 と、 陽映。
「あの方は 生きているの?」

「このお屋敷の何処かに居るよ」
 こともなげに答えた逸に、
 鹿の子は 何がどうなっているのか 教えてと詰め寄った。


 綺羅君と陽映は、 鳥座家が用意した使用人たちには 出て行くように言ったが、
 綺羅君を放って出るのは心配だから と、 いうことを聞かなかったものの、
 襲撃を予想していた流人屋敷では、 警戒を怠ってはいなかったのだ。

 夜、 綺羅君は、 にわか造りの牛小屋に、 牛と一緒に寝ていた。
 いち早く 異変に気づいた権佐が、 こっそりと皆を起こし、
 逸が 牛小屋の破れ目めがけて 短剣を飛ばして 知らせた。
 綺羅君は 牛の背中に襤褸を被ってしがみつき、
 火事に怯えて遁走する牛の体(てい)で 抜け出したということだった。

「短剣を飛ばしたくらいで、 ちゃんと目が覚めたの?  嘘みたい」
 のんきに グースカ寝ていそうな気がして、 鹿の子は言った。
「伊織が居たからね。 起こしたのだろう。
 一緒に牛に乗って 飛び出したと言っていた。
 私が 綺羅君を護るつもりだったが、
 伊織が、 自分がやると言ってきかなかったのだ」

 伊織は、 単に 綺羅君から陽映を護るつもりだったのだろうが、
 陽映が居ては、 敵も襲撃を控えただろう。
 帰ったところを見計らって、 襲ってきたと思われた。

「裸馬は お尻が痛くて堪らないが、 牛は 案外乗り心地が悪くない とも言っていたな」
 面白そうに付け加えた陽映に、 逸が 頷いて相槌をうつ。
「馬の背中は 尖った背骨が尻に当たるから、 鞍が無いと辛いが、
 牛の背中には 肉が付いているからね。
 牛のほうが 尻が痛くならない」
 垂れ目をいっそう垂れ目にして 嬉しそうだ。
 牛が好きらしい。

 伊織は 屋敷の手前で、 様子を見に出てきた家人たちに紛れて 帰ってきたという。

「あのう、 聞いてもいいですか。 綺羅君様が 誰を 押し倒すんですか」
 鹿野子は、 先ほどからずっと気になっていた事を口にした。
 顔が赤い。

「五葉」

「い……つ……は……」
 鹿の子には どう考えても、 想像がつかなかった。



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コメント
627: by lime on 2012/09/27 at 17:46:04 (コメント編集)

無事でよかったです、綺羅君。

五葉は、大女でしたよね。
逆に押し倒されてたり・・・。
あ、そのほうが喜ぶのか。綺羅君。^^;

628:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/09/27 at 18:36:22 (コメント編集)

初めの予定では、綺羅君に死んでもらうことにしてたんですが、
しぶといです。

五葉と何があったのか、なかったのかはR指定していませんので、書きません。
お好きに想像してやってくださいませ。(注・何でもありです)

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