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くれないの影 第五章――6



「綺羅ちゃん?……
 綺羅ちゃんて……、 権佐おじさん、 気安く呼ぶのね」

「昔の知り合いなんだ」
 鹿の子は 詳しく聞くのが怖かったので、
 聞かなかったふりをして 通り過ぎた。

「火事から どうやって助かったの?  その後 ずっと綺羅君様の所に居たの?」
「そうじゃないけど、 それを話すと 長くなっちゃうんだよねえ。
 あっ、 陽映さんが来た」

 案内してきた土岐野が下がるのを待って、 陽映が言った。
「呼んでくれて、 ちょうど良かった。 どうやって会おうかと考えていた。 無事だね」
「えっ、 えっ、 えっ、 知ってるの?  お知り合い?」
 鹿の子が 四人と陽映を見比べて 不思議そうな顔をする。

「国司館の近くで襲撃された時、
 弓の射手に短剣を投げて 助けてくれたのは、 逸殿だったらしい」
「へえ、 そうだったんだ。 逸さんは 短剣投げの名人なんだよ」
 鹿の子は嬉しくて 思わず自慢してしまってから、 あれっと思った。

 では 檜笠を被った痩せた牛飼いは 逸だったのだ。
 後姿が似ているなあ とはおもったが、 まさか本人だったとは。

 牛車を引いて 先頭にいた逸が、
 いち早く 弓を構えた男を目にとめて 短剣を放ったということなのだ。
 近くに居ながら 全然気が付かなかった。
 ちょっと落ち込む。

「それに、 一昨晩 泊めてもらったからね。 みんな知っている。
 おかげで とんでもない噂を 撒き散らされたけど」
 陽映は、 心底嫌そうに 顔をしかめた。

 その表情を誤解して、 鹿の子は 呼び出した理由を思い出した。
 仲間に会えた嬉しさに舞い上がって うっかりしていたけれど、
 綺羅君の最期の様子を 一緒に聞こうと思ったのだ。
 陽映は 仲良しを亡くして、 さぞや辛いだろうと。

 どう切り出そうかと悩んだが、 うまい言葉が見つからないまま 口を開いた。
「えーと、 綺羅君様なんだけど……」



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