FC2ブログ
RSS

くれないの影 第五章――5



「話を聞きたい。 しばし そこに控えよ。
 人払いを申し付ける。 誰も近づけるな。
 土岐野、 陽映様に お越し頂く様、 急ぎ伝えよ。
 そなたも下がっておれ」

 鹿の子は立ち上がり、 ことさらにゆっくりと 庭に面した廊下に近づく。
 そうしないと、 走り出しそうだった。

 人が居なくなったのを見計らって、 口を開いたのは逸だ。
「よっ、 久しぶり。 あのお転婆が きれいになったな」

「逸さん?  紫苑姉さんとガジは すぐに分かったけど、
 まさか 髭がなくなったら、 こんなに間抜け面になるとは思わなかった。
 ものすごい垂れ目だったのねえ」
「だから 髭を生やしていたんじゃないか。
 この顔で 短剣投げは 迫力が無いだろ」

 内容も 口調も 変わらないのに、
 見た目が変わると 性格まで違って見えるのは 不思議だ、 と 鹿の子は思った。
「こっちは 権佐おじさんよね。
 少し痩せた?  それとも髭のせい?」
「思うところがあって、 頑張って痩せようとしているところだ。
 そうか、 痩せたか」
 権佐が嬉しそうに言うと、 三人は じろりと睨(にら)んだ。

「大いに思うところがあるだろうよ。 まったく、 こっちまで死ぬところさ」
 相変わらずの 紫苑の憎まれ口に、 権佐は小さくなった。
 負い目があるらしい。

「良かった、 生きてて。 死んじゃったかと思った。 他の人たちは?」
「生きてる」 とガジ。

「調子に乗って 名前まで変えちまったから、 気が付かなかったんだねえ。
 菓子屋じゃあるまいし、 お萩とせんべい だってさ。
 都茱姉さんと隼人だよ」
 鹿の子は、 紫苑の話に驚いた。
 馘になった 飯炊きと下僕の代わりに来た二人だ。
 鹿の子を含めると、 一座の七人が 領主屋敷に揃ったことになる。

「じゃあ、 あたしが居ることを、 随分前に知ってたんだ。
 どうして 会いに来てくれなかったの」

「鹿の子は記憶を無くして この近くで拾われた。 そうだな」 と逸。
「だから 鹿の子はここんちの子で、 生まれた場所に戻ったのかもしれない と思ったんだよ。
 それなら あたしらの出番はないから、 そっとしとこうってね。
 あたしらの知ってる鹿の子は お姫様にゃ見えなかったけどさ」
 一言多い紫苑が、 思い出したように 寂しい顔を見せた。

「で、 様子を見てたら、 ややこしいことになってると知ってさ。
 綺羅ちゃんに相談したら 『任せなさい』 とか言うから」

 権佐は 困ったように首を傾け、 以前より ほんの少しだけ小さくなったお腹をさする。



戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
613: by 十二月一日 晩冬 on 2012/09/24 at 18:46:50

まさかの展開!!

冒頭のはやる気持ちがひしひしと伝わってきました。ただ走っちゃあかんですねww
鹿の子的には、綺羅君がまさか――って感じでしょうかね。
……彼の登場はあるのだろうか

615: by ラ コンシェル on 2012/09/24 at 19:13:23 (コメント編集)

こんばんは、お久しぶりのコメントです。

今トレード中ですが、一段落ついたので、遊びに来ました。

相変わらずの更新速度、完全に速度オーバーですよ(笑)

昔の作品からちょこちょこ拝見させてもらってますが、とても追いつきません。

以前、新作の小説の終着点が、なかなか見えないとおっしゃられていたと思うのですが、それって、プロット通りに進んでいないということですか?

私も小説を書いていたときよくあったことなのですが、最初に登場人物やトリック、大まかなストーリー展開と結末を決めて書き始めても、小説内の登場人物が書き手の思惑とは違う行動や言動をとったり、後で使うはずのトリックを先に使われたり、そんなことがありました。
自分で書いているのにおかしな話ですが、それが主役級の登場人物だと、どうしても途中で手直ししたり、伏線の張り直しをしたり、結構苦労しました。

実は私が小説を書いていたとき、ミステリ小説を書いているプロの作家さんとメールでやりとりをしていて、そのことを話したところ、それは登場人物が生きている証拠だから、ある程度は自由に動かしてみなさいと助言を受けました。

勘違いのコメントでしたら申し訳ありませんが、一応こんなこともあるということで、一筆書かせてもらいました。

これからも陰ながら応援してますので、苦悩はあると思いますが、がんばってくださいね。

616:Re: しわすだ 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/24 at 19:20:46 (コメント編集)

まさか と思っていただけましたでしょうか。

安請け合いをしておいて、綺羅ちゃんは こんがり丸焼け?

お友達(?)の陽映は、鹿の子は、どうするのか。乞うご期待!

618:Re: ラコンシェル様 by しのぶもじずり on 2012/09/24 at 19:53:33 (コメント編集)

いらっしゃいませ

あれは、別に書いている物の事でした。まだ未完成のままです。
「くれないの影」も、あれっ?となって、路線変更をせざるを得なかった部分があります。
本当に、私が作ってやった人物なのに、次々と好き勝手な事をしでかす奴らばかりなのです。

でも、考えてもいなかった事を思いつかせてくれたりもするので、むげにはできない。
そういう時、書くのが面白いと思います。

お忙しい中、アドバイスをありがとうございます。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア