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くれないの影 第五章――4



「その者たちの面倒を、 手厚く見てやれ」
 公然と顔を上げ、 はっきりと命じた。

「ははーっ」
 報せにきた家臣が 下がった。

「何か 問題ありますか」
 黙っている土岐野を、 挑戦的な目で 睨むように見た。

「いいえ、 何も。 おや、 納得のいかない顔をしていますね」
「こともなげに 罪人を打ち首に……」
 そんな暗く冷たい心を持った白菊ならば、 追い出すかもしれないと思ったのだ。
 らしくない事をするな、 と 土岐野が文句を言うとばかり思った。

「ああ、 あれの罪は、 一度や二度のことではありませんでした。
 酷い目に遭った領民は 大勢います。
 悪賢い上に、 何度罰を下しても 懲りないどころか、
 近頃は 年端も行かない者どもをそそのかして 悪の道に走らせておりました。
 見せしめにしたのは、 その者たちの目を覚ます為でしょう。
 お屋形様は ご承知の上で、 領主としての断を下されただけのこと」

 あの闇は そうして出来たものだったのだろうか。
 鹿の子は、 知らず 身震いした。

「お屋形様のご様子は どうですか。 お医者に見せなくてもいいのかなあ」
「あまり良くはありません。
 だが、 火傷の手当てをした医師は、 困った事に 先日亡くなりました。
 謙介に 口の堅い代わりの医師を探させています」
 白菊に 余計なことはするな と言われたが、 こればかりは 聞くわけにはいかない。

「お見舞いをしようかしら」
「ならぬ」
 土岐野は とっさに答えていた。
 会わせてはいけないような予感がする。

 思いもかけず 強い口調で断られ、
 鹿の子は 自分に出来ることは無いだろうか と考えているうちに、
 先ほどの家臣が 再び現れた。

「四人が、 お庭先からなりと お礼を申し述べたいと申しております」
「許す」

 四人の男女は 庭の端に膝を着いて、 頭を下げた。

「ありがとうございました。 権佐と申します」
「紫苑でござんす」
「逸です」
「ガジ」
 鹿の子が知っている顔と名前ばかりが 並んだ。



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コメント
609: by lime on 2012/09/24 at 17:11:39 (コメント編集)

なんと。みんな生きてたのですね。
これはここから、また物語が動きそうな予感。
鹿の子、よかったね。

612:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/09/24 at 18:14:43 (コメント編集)

はい、生きてました。

名前とキャラ設定も考えましたし、もったいないですから。
なんちゃって。

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