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くれないの影 第五章――2



 知らせを受け、 話を聞いた惣右衛門は、
 ここにきて やっとあることに気が付いた。

 白菊姫と陽映様を乗せた牛車が襲われたのは、 間違いだったのではと。
 賊は 陽映を狙って諦めた と考えるより、 襲う相手を間違えたことに気づいて引いた、
 と 考えるほうが 理にかなっていた。

 陽映が牛車を飛び降りた途端に 引いていったのだ。
 そう考えれば、 賊の目的は いつも牛車を使っている綺羅君の公算が高い。
 何しろ こんな田舎で 牛車を使う酔狂は、 綺羅君しかいないのだ。

 さて、 お屋形様には 流人屋敷が襲われたことを報せなくてはならない。
 お屋形様のことだ。
 先日の襲撃について、 その可能性にも気づいておられることだろう。
 牛車に乗っていたのが身代わりだとは、 まだ 知らない惣右衛門だった。


 土岐野が 鹿の子を呼びに来た。
 お屋形様の気分がすぐれず、 床に着いているから 代わりを務めよとのことだった。

「ご病気なら 仕方ないじゃないですか。 それじゃあ 駄目なんですか」
「そう申し上げたのだが、 お屋形様が『影』を と言っておられる」

 土岐野だって、 あまり『影』を使いたくないのだ。
 この『影』を使い出してから、 白菊が 悪い方に向かっているようで 気が気ではない。
 気分がすぐれないのも、 そのせいだ という気がして仕方が無い。

 この娘が居なければ、 と考えて はっとした。



 鹿の子は 事件の報せを 御簾の内で聞いた。
 血の気が引く。
 惣右衛門からは 表情まで見えない と分かっていても、 うろたえた。
 白菊なら どうするだろう。 分からなかった。
 なんとかして 落ち着かなくては。
 時を稼ぐしかない。

「流人屋敷の検分は済ませたのか」
「ただいま人を走らせて、 直に 見にやっております」
「では、 その者が戻ったならば、 ここによこせ」

 それまでには 落ち着いて考えなければ。
 これから どうしたらいいのかを、 土岐野と五葉に相談しよう。
 そういえば 五葉が見当たらない。
 何処に行っちゃったのよう。

 帝の弟君だというのに ヘンな人だったけど、 うっかり仲良くなっちゃったんだもの、
 急に いなくなるなんて嫌だ。
 涙が止まらない。
 生きていてくれたら、
 いくらでも 苛めて 縛って ぶってあげるから、 出てきて欲しい、 そう思った。



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コメント
592:管理人のみ閲覧できます by on 2012/09/21 at 00:30:38

このコメントは管理人のみ閲覧できます

737: by 西幻響子 on 2012/10/27 at 08:12:03 (コメント編集)

この綺羅君って・・・とってもお茶目ですね(笑)
伊織さんもなにげにいい味だしてる。
紅王丸もすてがたい(というか、紅くん、登場が少なくて淋しい…
白菊姫は未だ何を考えてるのか、謎ですね。
ここからラストまでどう転がっていくのか・・・楽しみに続きを読んでいきます。

738:Re: 西幻響子様 by しのぶもじずり on 2012/10/27 at 11:30:27 (コメント編集)

コメントありがとうございます。

紅王丸を少し放置しすぎた感がありますが、完成してみると、しかたがなかったかなあと思う面もあります。

綺羅君は、おかげさまで、なにげに 人気者になりました。
最後まで楽しんで頂ければ、嬉しいです。
ダメダシも、受け付けます。

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