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くれないの影 第五章 再会――1



 鳥座家の門前に、 十人近くが ずるずるとやって来た。
 煤で汚れ、 着ている物が あちらこちら焼け焦げている者も居る。
 中の一人が、 不機嫌そうな牛を一頭 引いていた。
 一行の様子から、 ただならぬことが起きたことが知れる。

 門番の知らせを受けて、 事情を聞きに出た者から、 屋敷内に知らせがいき、
 大騒ぎとなった。

 前夜、 綺羅君の住まいが 何者かに襲われ、 火を掛けられたという。
 一行は 命からがら逃げてきた者達だった。

 綺羅君が住んでいたのは、 鳥座家が用意したものだ。
 流人の侘び住まいの為だから、 さして広い屋敷ではない。
 身の回りの世話をする者達も、 最低限 鳥座家が手配した。

 帝のお怒りが激しかったらしく、 下僕一人も 都から連れ出すことを禁じられたから、
 住んでいた人間は 少なかった。
 それが……、

「増えている。 何処から拾ってこられたやら、 いつの間に……」
 しかし あきれている場合ではなかった。
 肝心の 綺羅君の姿が無い。

「綺羅君は どうなされた」
「それが…… 気が付けば 屋敷は火の海。
 なんとか逃げ出しては来たものの、 お屋敷は すっかり焼け落ちて 跡形も無くなりましてございます。
 お探ししては見たものの、 何処にもお姿がございません。
 牛車も焼けてしまい、 牛だけは 連れ出したのですが……」

 牛の背には、 持ち出した物か 焼け残った物か、
 雑多な荷物が わずかばかり括り付けられている。
「牛よりも 後回しにされたのか……。 とにかく 誰か遣って調べてまいれ」
 一気に騒然となり、 何人かが確かめに走った。

 たどり着いた者達は 疲れきっているようだった。
 休ませて 詳しい話をさせようと 屋敷に入れれば、
 痩せた牛飼いが、 裏庭の隅なりと借りて 牛を繋ぎたいと願った。

 いつも 牛車を引いていた男だ。
 檜笠を取れば、 たいそうな垂れ目で、 いかにも頼りなさそうに見える。
 この牛飼いも 鳥座家が入れた者ではない。
 言われた家人は、 牛車の付属品だろうか とつまらぬことを考えた。

 他にも 鳥座家が預かり知らぬ者が 何人かいる。
 愚鈍そうな大男。
 目が開いているのか 瞑っているのか 判断に迷う地味な女は、
 門柱の下にしゃがみ込み、 口の中で ぶつぶつ言いながら、
 髪から抜いた 割り箸と間違えそうな 粗末な笄(こうがい)の先で
 カリカリと門柱を傷つけている。
 「臨……者……列・在……」

「これ、 何をしている。 やめんか」 門番が注意すると、
「魔除け」と言い、 座り込んで 動かなくなった。
 
 そして、 綺羅君によくくっついて現れた 太った髭もじゃの従者も、
 思い起こせば 鳥座の手配ではない。
 いったい何人拾ったのだろう。
 彼らに 水と飯を与えて 詳しく聞き取った。

 夜半過ぎに 虫の音が止んだのだという。
 一人 耳聡いのが居て 不審に思い、 仲間を起こして 確かめに出たところ、
 赤々と燃える松明を手にした者たちに 取り囲まれていた。

 賊は 剣も抜いており、 切り殺されるかと怯えて 逃げ惑う使用人たちには目もくれず、
 次々と屋敷に火を放ったという。

 秋晴れの晴天が続いていた為、 あっという間に火が回って 炎に包まれた屋敷を、
 賊は 抜き身を下げたまま囲んで 見守り続けていたので、
 隙を突いて 逃げてきたのだという話だ。
 虫の音に気づかなかったら、 眠ったまま 焼け死ぬところだったと、 改めて身を震わせた。

「では、 しかと綺羅君を探したわけではないのだな」
 家人の問いに、 彼らは 戸惑った顔を見合わせた。

「……はい ……怖くて ……それどころではない ……というか……」
 やっぱり、 牛より 後回しにされていた。



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コメント
584: by 晩冬 on 2012/09/20 at 01:34:30

第五章のタイトルは『再会』ですか。
これは、と思いきや放火(笑)
そして綺羅君よりも牛……この事実を綺羅君が生きて知ったときには、パンチのある歌を詠んでくれそう

586:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/20 at 10:30:39 (コメント編集)

各章のタイトルに一貫性がありませんね。(←他人ごと)
他に考えつかなくて。
まあ、色々と再会します。

和歌を詠ませるのも大変で……、あんなものでも意外に時間がぁ……w
歌詠みにはなれそうもありません。けっこう好きなんですけどね。

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