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くれないの影 第四章――15



「うふっ、 お友達はよいのう。 では、 今夜はしっぽりと……」

「お友達ですから、 しっぽりなんかしません」
「私もお供いたします。 させません」
 伊織も すかさず言い切った。

 屋敷を出るのは簡単だった。
 襲撃を知らない門番は、
「これからでは、 お帰りの頃には日が暮れます」と 心配したが、
 そのときには泊めてもらう と答えると、 お気をつけて と見送った。



 翌日、 陽映が 流人屋敷から朝帰りをすると、
 たちまちのうちに 困った噂が飛び交った。

 曰く、 婿君が衆道に走られた。
 綺羅君と妖しい関係に陥った。
 お屋形様が 黙って見過ごすはずが無い。
 怒り狂われるに違いない。
 これは破談だ。
 とんでもないことになったと、 屋敷中が大騒ぎだ。

 部屋に来た五葉は、 真っ青になって 噂を鹿の子にまで伝えた。
 珍しいまでに うろたえている。
 鹿の子を 身代わりにあてがおうとしたくせに、
 いまさら そんなことで慌ててどうするんだと思い、
 鹿の子は 知らぬ顔をした。

(でも、 ありそうで、 なんかやだわ。 綺羅君様って、 何でもありなんだもの)
 こっそりと思うにとどめた。

「まさか、 殿方までとは……」
 五葉は 大きな体を丸めて、 随分と落ち込んでいる。

「五葉、 婿取りを邪魔立てするのか。 鳥座家を潰すつもりか」
 白菊を真似て、 ギロリと睨んだ。

「め、 めっそうもございません」
 五葉は大慌てで、 左右にぶんぶんと 首を振る。
「だったら悪いことは言わない。
 無責任な噂なんか、 お屋形様に言わないほうが良いわよ」
 鹿の子に戻って 優しく言った。
「もちろん、 そうですよね」
 同意しながらも、 まだ屈託ありげにしている。

「気になることがあるなら、 あたしが聞いてあげる。
 何でも言って。 あたしと五葉の仲じゃないの。 遠慮しないで相談してよ。
 黙っているのは体に悪いわ。 お腹が膨れて 太っちゃうわよ」
 五葉は、 すでに充分膨らんだお腹を撫でた。

「ありがとうございます。
 言ってはいけないことが増えるばかりで、 そうおっしゃって頂くと、 気が楽になります」

「そうよ、 言っちゃって、 言っちゃって。
 ほら、 内緒にしていて気が重いこととかあるでしょ。 隅から隅まで聞くわよ」

 紅王丸に食事を運んでいるのは、 今は 五葉だという話だった。
 それなら 紅王丸について知っていることもあるだろう。
 この機会に 訊き出せるかもしれない。

 鹿の子は、 五葉が話し易いように、 にっこり笑ってあげた。

「実は…………」



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コメント
576: by 十二月一日 晩冬 on 2012/09/17 at 18:22:10

鹿の子のなかで、綺羅君の評価は上昇することなさそうですねww
今日、ズルいぐらいいいとこで終わってる……。続きは明日か

577:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/17 at 19:02:32 (コメント編集)

鹿の子にとって、綺羅君の第一印象は悪かったですし、別世界の生き物ですから。
理解できないと思います。

> 今日、ズルいぐらいいいとこで終わってる……。続きは明日か
少し引っ張ってみました。上手く行きましたでしょうか。

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