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犬派のねこまんま 16である        byねこじゃらし

<日本語の発音>

 子どもの頃、 アナウンサーになりたいと思ったことがある。
 言っておくが 女子アナ ではない。

 バラエティー番組で おちゃらけたい訳でも、
 クイズ番組で ボケをかましたい訳でも、
 画面の中で 歌を歌いたいわけでもない。
 ナレーションとか、 朗読とかをしたかったのである。

 ある時、 クラスメイトの一人に 「何か面白い本はなあい?  あったら貸して」 と言われ、
 読み終わったばかりで 興奮状態にあった事もあり、
 芥川龍之介の 「奉教人の死」 を貸した。
 ところが、 すぐに返された。

「ええっ、 面白いのに―」 と言えば。
「なんかあ、 読むのが めんどくさそう。 読んでも 頭に入ってこなーい」 との返事。
 面白いのに、 なんで 読みもせずに返してくるかなあ。
 じれったさが高じて、 その場で 声に出して 1ページ目から読み上げてやった。
 そうしたら、 ちゃんと聞くのである。

「読んでもらうと、 意味がよく分かるぅ」 なんてことを のたまう。
 そのまま 一冊読み切ってやろうかと思ったが、
 放課後の教室は、 そんな悠長な事を許しはくれなかった。

「ねえ、 宿題なんだけどさー、……」
「ねえ、 まだ帰んないの?」
「今日、 部活は?」
「掃除するから、 どいてくんない」
 朗読の場ではなかった。 欲求不満である。

 読むのが好きだ。
 聞いている人が 内容を理解できるような読み方に 興味がわいた。
 読む仕事って何だろう。 そうだ、アナウンサーになろう。 単純である



 そこに 一人の国語教師が居た。
 独特の授業 をする人で、 まあ、 うるさい先生だった。
 何しろ 生活指導の先生 だったのだ。 想像してもらえると思う。

 吾輩は 大して悪いことはしない。
 普通の生徒だったのだが、 生活指導とは、 相性 があまりよろしくなかった。
 何故だか分からない。

 宿題 をしなかったり、 遅刻 が少々多かったり、
 たまに 、学校が開く前に 早朝登校をして、 校内をうろつく くらいしかしていない。
 開いていないから、 門は よじ登って越える しかないのだ。
 鍵をかけ忘れた窓から 校舎に侵入したことは 1、2度しかなかったはずだ。
 見つかってはいない と思う。

 いじめをしたことはないどころか、 いじめられっ子に懐かれたりした。、
 学校のイベントには 張り切って参加した。
 かなり良い子のはずだ。 分からない。


 ある日の授業の事である。
「教科書を読みたい人」 先生が言うと、 ほぼ全員 が一斉に手を上げる。
 まあ、 そういう仕組み である。 テストの成績に 加算されるのだ。
 吾輩が指されて、読んだ。
 途中で 先生がさえぎる。
「非常によく読めているが、語尾が弱い」 と言い出した。
「~です」の「」、 「~でした」の「」 の音の発音が弱い。 というのだ。
 気をつけて呼んだつもりだが、 やっぱり ダメダシ を喰らった。

 吾輩は、 腹の底から でかい声 を出して読んだ。
 先生は「語尾が弱い」 というばかりで、 止めないので、
 その日の授業予定の範囲を越えて、 どんどん、 どでかい声で読んだ。

 国語の授業で、 日本語の発音 をあそこまで指導されたのは、 あれが 最初で最後だった。
 通常の授業では、 案外、 発音を指導されることはないよう思う。
 何故 そこまでこだわったのか 分からない。
 アナウンサーになりたい などとは誰にも告白していなかったのだから、 先生が知っていたはずがない。

 読み間違いは 一つもない。
 咬んだりも しない。
 句点、 読点 を意識して、 リズミカルに読んだ。
 ふつう、 国語の授業なら、 それで良いではないか。
 だが、 先生は「語尾が弱い」 としか言わない。
 それ以外は文句無し なのだそうだ。

 念のために言っておくが、
 その先生は、 授業中に ねちねちと生徒をいじめるタイプではない。
 文句があれば、 職員室に呼び出して、 みっちりお説教 をするタイプだ。
 断言できる。

 何故かと言うと、 経験 したからだ。 間違いない
 先生はあきらめたのか、 戻って次の子が読んだ。
 その時、 どこが違うのか分からなかった。

 アナウンサーの線は消えた。

 あれは 運命の授業 だったのだろうか。


 社会人になり、 独り暮らしをするようになって、
 ひょんなことから 二週間ほどデンマーク人を居候させていた事がある。
 デンマーク語を知らない日本人と、 日本語を知らないデンマーク人 の同居である。
 それなりらしい英語と 赤点常習者の英語 でも何とかなるものだ。
 デンマーク人は、 日本語を覚えたいらしかったが、 こっちはそれどころではない。
 バイト先で 少しずつ教わっていたらしい。


 そんなある日、 デンマーク人が言ったのだ。
 日本語の語尾「~です」は 「~des」の発音であって、 「~desu」ではないと。
 これは、 向こうから不思議そうに言ってきた。
 吾輩が言いだした訳ではないから、 彼女が会った日本人の多くが そうだったのだろう。

 という事で、 「~です」の「」 は大目に見てもらうとしても、 問題は「」である。
 「まごやき」 は平気だ。 「すっもんだ」 も問題ない。
 が、 「~でし」 がいけない。 特に「~だっ」 が駄目だ。
 声帯が動かないから、 半分、 無声音のようになる。 喉が 震えていないのだ。
 無理して発音すると、 なんともわざとらしい 不自然な話し方になる。

 頑張って もうちょっと説明してみよう。

 えーと、 マンガでは、 擬音語がよく使われる。
 走るところで、 「タッタッタッタッ」 なんて字があったりする。
 忍者 が足音をたてないように、 素早く走る 感じをイメージして欲しい。

 そんな「タッタッタッタッ」 である。

 よけいに 分かりにくくなったかもしれない。


 つまるところ 、困った事に、
 吾輩は日本語の発音が不自由 らしい。


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コメント
561:田口トモロヲ by 夏音 on 2012/09/13 at 23:25:01 (コメント編集)

こんばんは

アナウンサーとタレントの境界ってよくわかりません
容姿でしょうか!?・・・・えっ、ちがう?

「desu」と「des」の件、確かにおっしゃるとおりです
子音が曖昧ですよね、日本人じゃなかなか気づきません

「~だった」についてはお手本がありますよ
田口トモロヲさんです!

563:Re: 田口トモロヲ by しのぶもじずり on 2012/09/13 at 23:59:52 (コメント編集)

こんばんは

田口トモロヲさんですか。恥ずかしながら知りませんでした。
プロジェクトXのナレーションをした人なんですね。

お手本、欲しいです。どうやって探せばいいのでしょうか。
詳しく知りたいです。

564: by まっちゃん on 2012/09/14 at 09:38:33

語尾を強く表現することによって 相手に感じさせる
と言うことなのでしょうかねぇ~ よく分かりませんが ガハ!
切るとこはきり 強く表現するところは表現して‥
話さなければ 伝わる物も 伝わらないと家の相棒が‥
これって 唱うときもそうだと 思いますね
今の歌手の方々は それが無いので 下手だと思います
表現 下手なまっちゃんでしたぁ~~ 

565:Re: まっちゃん様 by しのぶもじずり on 2012/09/14 at 10:52:30 (コメント編集)

こんにちは

話し言葉としては、方言のほうがよく出来ていますよね。
なんといっても歴史があるし、リズムに乗ってじゃべれば、強弱も自然にできる感じがします。

標準語の話し言葉は、人工的にまとめられたものですから、これからもっと洗練されていくのかもしれません。
私の日本語は、洗練されていけるのかなあ。

へば、またね。

566: by ママ長 on 2012/09/14 at 14:55:14

これだけ上手な文章を書ける方が
《日本語が不自由》って言ったら
ウチのおニイはどうしましょう(^◇^;)。
《人間として不自由》ですよ(^^;;。

色んなお客様がいますが、
色んな教師もいるもんですね(^◇^)。

567:Re: ママ長様 by しのぶもじずり on 2012/09/14 at 16:45:43 (コメント編集)

いらっしゃいませ

> ウチのおニイはどうしましょう(^◇^;)。
> 《人間として不自由》ですよ(^^;;。
兄上様にが申し訳ないですが、笑ってしまいました。

人間、何かしら不自由なものを抱えて、日々生きているのかもしれませんねえ。
兄上様 に宜しく。
お互いに強く生きていきましょう、とお伝えください。

568: by ポール・ブリッツ on 2012/09/14 at 17:48:36

対人関係が不自由なわたしよりはマシ……かもしれない。

569:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/09/14 at 19:43:46 (コメント編集)

もしもし、どういう返事をしたらいいのか、分かんないじゃないですか。

570:日本語は難しい by じゅべ です on 2012/09/15 at 12:39:32

しのぶもじずり 様
こんにちは
日本語は難しいと思います。
どんどん新しいコトバが生まれると同時に廃れていくコトバもあるし、なにしろイントネーションも変化していく。
100点取れるヒトはいないのでは!

ところで音訳ボランティアご存知ですか。
視覚障害のかたのために小説とか音読して
録音すると全国の点字図書館に配信されます。
デビューする前に10回ほどの講義があるので、それだけでも勉強になるそうです。
自分でも興味を持っております。

じゅべ

571:Re: 日本語は難しい by しのぶもじずり on 2012/09/15 at 13:46:45 (コメント編集)

> しのぶもじずり 様
じゅべ様 こんにちは

はい知ってます。
たまたま福祉会館に立ち寄ったところ、ちょうどやってました。
近所なので、それからは なるべく避けて通っています。(笑)

まだ「~だった」を克服していません。

900:こんばんは。。 by on 2012/12/05 at 17:49:49 (コメント編集)

授業中に本を読む、懐かしいです。
でも、その先生は、もう少し、優しく諭すように教えてくれたらよかったのに。
そうすれば、今は有名なナレーターになっていたかもしれないのに。
思うのですが、有能な先生はその子のいい面を引き出し、
そうで無い先生は
せっかくの才能を壊してしまう、そんな気がしますね。

同じような授業、中学2年で。
詰まったら、次の席順の者が読む。
案外、プライドがかかっているので、みんな真剣だった。
得意だった。最期まで読んでしまうことが、何度もあったので、先生に誉められ、学友に一目置かれた。
なのに、全く違う道に進んで、挫折したww
面白いですね、人生は。。
訪問ありがとうございました。☆彡☆

901:Re: 雫様 by しのぶもじずり on 2012/12/05 at 18:27:49 (コメント編集)

いらっしゃいませ

> でも、その先生は、もう少し、優しく諭すように教えてくれたらよかったのに。
たぶん、先生もおかしいことには気がついても、解決方法までは分からなかったんだと思います。
癖みたいなものですからねえ。まあ、しかたがありません。早く気が付いて良かったのかも。

おお、雫さんも読むのが得意だったのですね。

> 詰まったら、次の席順の者が読む。
> 案外、プライドがかかっているので、みんな真剣だった。
先生たちも、色々と授業に工夫を凝らしていたのですね。

> 面白いですね、人生は。。
色々あっても、今はこうして全く見知らぬ同士が、コメントをし合う。
それもまた、楽しからずや です。

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