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くれないの影 第四章――11



 かくして、
 二人を乗せた牛車は 檜笠(ひのきがさ)を被る 痩せた牛飼いに引かれて、
 南東の国司館に向けて ゴトゴトと出発した。
 鳥座惣右衛門、 達磨坂栗右衛門、 平題箭謙介と喜谷部伊織が 馬で後ろに付く。

「気持ちいいお天気だね。 ねえ、 綺羅君は 本当に調べているのかなあ。
 ちっともそうは見えないんだけど」
 牛車の中は 二人きりだ。
 周りを気にすることなく話ができる。
 さっそく 鹿の子は気になっていることを訊いてみた。

「千種という人のことが 分かったようだよ」
「すごい。 悪いけど、 本当にできるとは思ってなかった。 どんなことが分かったの」
「親戚ということになっているが、 先代様が 外に作った娘らしい。
 奥方様が亡くなり、 相次いで 千種の母親も亡くなった時に、 屋敷に引き取ったようだ。
 紅王丸が幽閉されてからは、 一人で世話をしていたらしい。
 ちなみに 今は、 五葉という侍女が 食事を運んでいる」

「へえ、 誰から聞いたんだろ」
「先ごろ馘(くび)になった、 飯炊きのばあさんから聞き出したらしい」
 それを聞いた鹿の子は、 自分が馘にしたことを うっすらと思い出した。
 しかし あれは綺羅君のせいだ。
 よくも図々しく聞き出せたものだ。 どうやったんだろう。

「千種さんは 何故 おかしくなっちゃったの?」
「そこまでは 分からない。
 だが 千種が亡くなる半年ほど前に、
 白菊が 怪我をして臥せっていた時期がある というから、
 火傷をしたなら その時だろう。
 それ以後 御簾で隠すようになっている。
 千種も その頃から 人前に出なくなったそうだ。
 屋敷を出たのではないか という話もあったらしい」

「ちゃんと調べてる。 関心関心。 肝心の紅王丸様のことは?」
 鹿の子にとって大事なのは そこだ。

「元飯炊きばあさんは、 土蔵に閉じ込めたのは 千種だと思っているようだ。
 幽閉されてからの紅王丸君の事は、 千種が一切を取り仕切って、
 他の人間の目には触れなくなった。
 そこから推量したのだろうが、 確かなことは分からない。
 調査中だそうだ」

「……ふうん。 あたしは孤児だから分かんないけど、 腹違いでも弟だよねえ。
 閉じ込めたりするかなあ。
 だって 心の病でもなんでもないんだよ」
 白菊として人前に出るようになってから、 紅王丸に会いに行くことが難しくなってしまった。
 会いたかった。 綱渡りも見せたかった。

「特別な恨みでもあれば、 有り得ん話でもない」
「綺羅君様に 調べられるんだろうか」
 鹿の子は、 綺羅君がどこまで役に立つのか、 信用しきれていない。

 人間は、 日ごろの行いが大切だ。



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コメント
558: by 晩冬 on 2012/09/12 at 19:55:29

鹿の子VS綺羅君のマッチメイクいいですね。
やれば出来る子、ただやらないだけ、でいいのでしょうか(笑)

559:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/12 at 20:49:08 (コメント編集)

う~~~~~ん、
たぶん、ご期待にはそえないと思いますよ。
鹿の子にとっては 未知の世界のすったもんだ ですからね。
旅のつれづれに読んだ草紙本では 役に立たないと思います。

綺羅君忍者の活躍のほうが、いくらか見込みがあるかも。

名探偵は いるのかな?

560: by あひるさん on 2012/09/13 at 23:21:40

こんばんは。

先日は、コメントありがとうございました。

教えていただいて、
やっと出来るようになりました。

とても丁寧で分かりやすかったです。

ありがとうございました。

またお邪魔しますね。

ではでは。



562:Re: あひるさん様 by しのぶもじずり on 2012/09/13 at 23:54:39 (コメント編集)

上手く行きましたか? それなら良かったです。

私もブログを初めて半年。いろいろとやっちゃってます。
FC2ブログのヘルプページも、役に立ちますよ。

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