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くれないの影 第四章――10



 惣右衛門が いそいそと白菊の部屋にやってきた。

「国司様が、 五日後は ちょうどお日柄も良く、
 祝いの挨拶には まことにもって吉日ゆえ、 その日に如何か と仰せでございます。
 よろしゅうございましょうや」
 張り切って 報告した。
 白菊の了承を得て、 ほっと一安心の様子である。

 部屋にいる時には 相変わらず御簾を降ろしているが、
 陽映とは 直接会って 睦まじくしているらしいことに、 心底 肩の荷が下りた思いでいた。

 法要を終えたというのに 波止女母子が 居座っている。
 あからさまに 嘘っぽい理由を言い立てているが、 よからぬ目論見があるとしか思えない。
 用心したほうがよさそうだ。
 しかし、 さっさと陽映と白菊の婚儀を挙げてしまえば、 手出しはできなくなる。

 晴れやかな想いの惣右衛門を、 突き刺すように見つめる瞳があった。
 隔てる御簾が 焼ききれないのが不思議だ。

 白菊が 『影』 を選んだ。
 使うことを 決めた。
 全て 自分が選んだ方向に進んでいる。
 だが、 闇はますます深く、 炎は ますます身を焦がす。
 狂ってしまえば 楽になれる。
 しかし、 ほかならぬ己が、 それを許そうとしなかった。



 国司の館に向かって、 のんびりと牛車が進んでゆく。
 綺羅君が使っているものだが、 乗っているのは 陽映と鹿の子だ。
 法要の翌日から 晴れた日が続き、
 穏やかな秋の日差しが 簾を通しても感じられる。

 綺羅君は、 『婿君のお友達』として おおっぴらに 屋形に出没するようになっていた。
 不用意に白菊の部屋には近づかないことが分かり、 屋形の者たちも 胸をなでおろしている。
 お騒がせ君を御しているとは、
 さすがに陽映様だ と婿としての評価も上がったらしい。

 しかし 賑やかなのは相変わらずで、
 忍になるはずではなかったのか、 あんなに派手で良いのかと、
 鹿の子は あきれながらも心配していた。
 本当に 調べているのだろうか。

 当初の予定では、 鹿の子は輿(こし)で、 陽映は馬で 行くはずだったのだが、
 長く使われることのなかった輿が、
 鼠(ねずみ)に齧(かじ)られたりして 傷(いた)んでおり、 間に合わなかったのだ。
 白菊が 激怒するかと家人は身をすくめたが、
 何の咎(とが)めも無かったことに驚き、 安堵した。

 うろたえていた家人に、 綺羅君のほうから 牛車を提供しようと申し出たのだ。
 二人一緒に 仲睦まじく乗っていけば よいではないかと。
 鳥座家は、 有り難く とびついた。
 陽映は 少しく難色を示したが、 面白がる綺羅君に押し切られた格好になった。



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