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くれないの影 第四章―9



「では 何故閉じ込められているのだ」
「さあ、 聞こうとしたのですが、 関わるな と言われてしまいました。
 変ですよね。 ずっと気になってます。
 助けてあげたい。 土蔵なんかから出して 自由にしてあげたい」

 三人は 顔を見合わせた。
「調べようではないか。 面白いことになってきた。
 近頃 次嶺経守からも、 しきりに遊びのお誘いがあるが、
 こちらのほうが面白そうじゃ」
 不謹慎な発言をしたのは 綺羅君だ。

「面白いとは何事ですか。 まったく もう。
 それに、 どうやって調べるというのですか」
 伊織が 胡乱(うろん)な目つきで 綺羅君を睨む。
 帝の弟君だということを すっかり忘れているに違いない。

「存外得意だよ。 細作(さいさく)とか 忍(しのび)の者に 向いているかも。
 敵に捕まって 拷問されたりして。 うふっ」
 伊織は 返す言葉も無く、 すっかりあきれ顔だ。

 そんなお茶目な二人にかまう事無く、 陽映は さすがに本筋を忘れない。
「鹿の子殿、 白菊姫に伝えてもらえまいか。
 私の気持ちは変わらない と。
 どんなお姿であろうとも、 我が愛しき人だと」

「そんなに簡単にいくでしょうか。
 第一 それでは、 あたしがばらしちゃったのが 丸分かりじゃないですか。
 殺されそう。
 何より、 白菊様のお気持ちが………… 簡単に お心を開くとは思えない……」
 鹿の子は ふるりと身を震わせた。

 垣間見た闇と炎が 未だに恐ろしい。
 陽映は こともなげに言うが、
 自分は 半ば飲み込まれて、 己を見失ってしまったのだ。
 漆黒の闇を吹き払い、 燃え狂う炎を鎮めることが、 簡単であるはずが無い。
 陽映にならば 可能なのだろうか。
 少なからず 覚悟が必要なはずだと思った。
 陽映にとっても、 白菊にとっても。

「然(しか)り、 詰めが甘ければ 失敗するやもしれぬ。
 状況を調べて 様子を見たほうが良い。
 有能な忍の活躍を待つのだ。
 準備を整えて、 然る後に 押し倒したほうが良い」
 綺羅君は、 自信満々に 言い添える。

「押し倒す前に 告白でしょう。 まったく あなたというお人は……」
 伊織は まだ諦めてはいなかった。
 綺羅君を 真っ当な人間にしようとあがいた。
 健気(けなげ)だ。



 法要が終わっても、 波止女家の母子は 腰を挙げようとはしなかった。
 白菊の叔母、 堅香子は、 娘に 実家の郷を見せてやりたい と鳥座の屋敷に居座り続けた。

「陽映を落すのは 難しそうですね。
 あれを引き離せば、 代わりの婿を探すのは 容易ではないはず。
 やりやすくなるところだったのだけれど」
 堅香子が 忌々しそうにはき捨てた。

「田舎侍とは思っておりましたが、 田舎者が過ぎましたわ。
 あんな朴念仁(ぼくねんじん)が 婿殿とは。
 おまけに 帝のお怒りを被(こうむ)った流人までが邪魔をして」
 冷ややかに返したのは 日鞠。
 明るくもお茶目にも見えない。

「我らのお屋形様が、 内側から切り崩す手配を進めてはいるはずですが、
 婿殿は なんとしても目障りだのう」
「ええ、 法要の折に 御しやすそうな人物を見つけて、 父上に知らせてあります。
 内部からの切り崩しは 着々と進んでおりましょう。
 残るは 婿殿の始末。 さっさとけりをつけたいものです。
 戦になれば 費用の無駄。 出費を抑えて乗っ取りませんと、 割に合いません」

 堅香子は、 利に聡い娘を見て、 父親によく似ていると思った。
 否、 もしかしたら 上手(うわて)をいくかもしれないとも。

「国司様に 挨拶に行くらしい。 急がねばな」
「その前に なんとかしたいと思ったのですが、 あの朴念仁。 私を振るとは いい度胸だわ。
 要は、 消えてくれれば 良いだけの話です。 慌てることはありません」

 恥ずかしいのを我慢して、 自分から言い寄る真似までして見せたのに と思えば、
 ふつふつと屈辱が煮えたぎった。

 許さない。



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コメント
552: by 十二月一日 晩冬 on 2012/09/10 at 21:32:50

綺羅君、冴えてますね~ww
真っ当な人間になってはだめだ~

553:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/10 at 22:06:26 (コメント編集)

伊織の努力は、無駄に終わる事でしょう。
綺羅君が、ちょっとやそっとのことで真っ当な人間になるとは思えません。

ご安心ください。

554:おはようございます。 by かじがやごろぉ。 on 2012/09/11 at 06:51:28

えへへ 少し追いついてきましたょ。
鹿の子 お屋形さまと会ったところ、  遠いかな?
新幹線の中 一気読みしてます〜。 はは、ごろぉ。

555:Re: おはようございます。 by しのぶもじずり on 2012/09/11 at 11:06:35 (コメント編集)

かじがやごろぉ様 おはようございます。

お忙しいでしょうから、お暇な時、お気が向いた時に、ぼちぼち読んで頂ければ嬉しいです。
途中からでも読んで頂き易いように、と「目次のページ」を作りましたが、
携帯からだと見にくいらしいです。携帯を持っていないので、なかなか確認できていません。
私がブログをやっていると知ってる人と会った時に、見せてもらうのを忘れてしまいます。
ご近所には内緒なので。

お気をつけて行ってらっしゃいませ。

556: by ポール・ブリッツ on 2012/09/11 at 16:56:37

女怖ぇえ……。(゚o゚;

557:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/09/11 at 18:00:22 (コメント編集)

まんまと怖がって下さってありがとう。

そういうことですから、ポール様も くれぐれもご用心あそばせ。

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