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くれないの影 第四章――8



「この先は 私がお力になります。 なんとしても お守りします。
 そう約束をした。 破るつもりは無い。
 どんな姿になろうとも、 私の白菊だ」

 白菊にたどり着こうとする道は、 遠く、 危うく思えた。
 やっとここまで来て 迷いは無い。

「あっさりと約束だなんて言って、 本当に 大丈夫ですか」
 鹿の子は 心配だった。
 白菊に巣食う闇を 垣間見ているのだ。

「そんなに酷いのでしょうか」
 伊織が 恐る恐る尋ねる。 彼も 主人が心配だった。

「えーと、 なんて言ったらいいんだろ。
 そりゃあ 初めて会ったときには、 あんまりそっくりなので 吃驚したわよ。
 でも、 あたしにとって お家形様は、 はじめから火傷のある方だった。
 顔が似ている以外は 全くの他人だし、 そういう方だというだけのこと。
 陽映様には 違うでしょ。
 以前のお可愛らしい…… あれ?  あたしが言うのは照れるけど、
 陽映様がおっしゃったんだから、 まっ、 良いか。
 以前の白菊様をご存知なら 辛いかも、 悲しいかも、と思ったんです」

「ということは、 鹿の子殿は お身内という訳ではないのだな。
 ものすごく 似ている」
 陽映が聞いた。

「はい、 赤の他人です。 似ているのは偶然。
 あたしは 軽業一座と一緒に、 この春 初めて次嶺経に来ました。
 孤児の軽業師だから、 ご領主様のお身内なんてことはありません」

「では 何故ここに居る」
「無理やり連れてこられたんです」
 鹿の子は これまでのことを話した。
 途中、 細かいことを 綺羅君が問いただして、 長い話になった。

 あの火事は なんだったのだろう。
 偶然にしては酷すぎる。
 おかげで みんな居なくなってしまった。 何処にも逃げ出せなくなった。

「今思えば、 千種さんという人と出会ったことが、 あたしにとって 全ての始まりだったんですねえ。
 暗かったし、 怯えていたから 分からなかったけど、
 紅王丸様がおっしゃるには、 ご親戚で 白菊様に似ていたみたい」

「紅王丸君……。 快復なさっているのか」
 陽映が 目を見張る。

「あっ、 土蔵に閉じ込められています。
 内緒で会ったことがありますが、 心の病には見えません。
 とっても美しい若君で、 寿々芽の名付け親です」

 うっとりと言う鹿の子だったが、
 他の三人は、
 鴉に スズメ と名づけた紅王丸の正気を ほんの少し 疑ったのだった。

 大丈夫か?



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コメント
550:やっと読めた~♪ by 園長 on 2012/09/09 at 22:13:15 (コメント編集)

やっと くれないの影 最初から読み通すことができたわぁ。
訪問できない期間があって 話が飛んじゃったから
読みたくて気になってたの(*^。^*)
いやぁ、面白いわ。
笑ったり 登場人物につっこんだりしながら 
ここまで来たよ。

でね、第3章7の文末に「戻る」しかないから
「次へ」を付けておいてくださいな。
私は左カラムの最新記事にある第4章の5から
逆にたどって第3章の8にたどり着いたんだ。
以上 ミニ探検記でした(笑)

551:Re: やっと読めた~♪ by しのぶもじずり on 2012/09/09 at 22:29:10 (コメント編集)

園長様 ありがとうございました。
目は大丈夫でしたか。

お手数をかけてすみませんでした。おかげさまで、第三章――7末尾のリンクを入れました。
こういう事が無いように気をつけていますが、もしも、またやっちゃた時は、
カテゴリーの「目次」から、直接各話に行けるようにもなっています。

探検、お疲れさまでした。
読者様に探検させないよう、チェックをもっと慎重にしまーす。

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