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くれないの影 第四章――7



「鹿の子…… あたしの名は 鹿の子」
 飛んでいく寿々芽を目で見送って、 鹿の子は答えた。

「お屋形様―― 白菊様のことは、 決して言ってはならぬ と釘を刺されています」
「私にも?」
 鹿の子は、 仕方なく頷いた。
「では、 鹿の子殿が 私の妻になるつもりだったの?」
「ああ――っ!  そうですよね。
 あのままいったら そうなっちゃいますよね。
 気づかなかった。 そ、 それは困ります」
「きっぱりとふられたねえ」 
 綺羅君が 嬉しそうだ。

「もしかして 白菊姫にも嫌われているのではないか。
 それで 身代わりを立てたんだったりして。
 辛いよねえ、 片思い。 一目ぼれした相手に、 片思…… い …… うぐっ」

 伊織が 綺羅君に飛び掛って 口を塞いだが、 すでに遅し。
 陽映の周りだけが どっぷりと日が暮れたような闇に包まれた。

「あのう、 違います。 そんな理由じゃありません」
「ということは、 他に 理由があるのだね」
 沈没してしまって 這い上がりきらない陽映に代わって、 綺羅君が聞いた。
 ひたと正面から見据えられて、 鹿の子は 逃げ切れないと分かった。

『あの方は…… 押しが強い というわけではないのですが、
 つかみ所が無い と言いましょうか、
 ひらりひらりと いつの間にか 好き勝手をなさるのがお上手なのです』

 土岐野が そんなことを言っていたっけ。
 何処に逃げても、 ひらりひらりと いつの間にか追い詰められそうな、 そんな気がする。

「実は……」 左頬と左手の 酷い火傷のことを話してしまった。
 火傷を負う羽目になった経緯は 知らないとも。

 怖くて 陽映を見られなかった。
 愛しい人が 醜い火傷を負って、 どんな気持ちになっただろう。
 逃げ出すだろうか と考えたら、 白菊に悪いことをした気になる。


「がっかりしました?」
 横を向いたまま、 そっと聞いてみた。



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コメント
546: by 次席家老 on 2012/09/09 at 12:52:35 (コメント編集)

とうとうばれちゃったか。

新しい展開になりますね~。

わくわく,です。



547:Re: 次席家老様 by しのぶもじずり on 2012/09/09 at 15:22:38 (コメント編集)

ばれちゃった、というより 鹿の子がばらしちゃいました。
はじめから、この子には 秘密を守りぬくという、堅い決意なんか持ち合わせていませんからね。
成り行きに流された子なわけで、つつかれたら簡単です。

おっしゃる通り、ここから展開が変わるはずなのです。
行くぞ!   どこに?

548: by lime on 2012/09/09 at 16:18:02 (コメント編集)

ある程度、謎が解けてから、物語は本格的に進むんですよね。
こっからまた、楽しみです。

綺羅君は、あれですね。
本気だしたら、けっこう凄い人かも。

549:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/09/09 at 17:57:28 (コメント編集)

> 綺羅君は、あれですね。
> 本気だしたら、けっこう凄い人かも。
それ以前に、本気を出すのか、という問題がありますね。
さらに、何が本気なのか、という問題もありそうです。

どうでもいい脇役でない事は、確かなんですけど。

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