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くれないの影 第四章――6



 見破られた。

 身近にいた人たちさえ騙しおおせたことで、 油断があったのだろうか。
 大変なことになってしまった。

 与えられた役目に失敗した 挫折感と、
 見失っていた自分が 帰ってきたことの安堵がごちゃ混ぜになって、
 鹿の子の目から 涙があふれ落ちた。

 陽映に 容赦はなかった。
 ぽろぽろと涙を流し続ける鹿の子に向かって、 さらに 問い詰めることをやめない。
「そなたは誰だ。 白菊の身に 何があった」

 鹿の子は きちんと答えることが出来ず、 泣きながら 『何故』 を繰り返した。
「何故、ひっく、何故分かったんですか。
 あたし、どんな失敗を…… ぐすん、 うわああん。 何故」

 答えられそうに無い と知って、 陽映は まず自分から 問いに答えることにした。
 ゆっくりと話し始める。


「二年半ほど前になる。 私は 白菊姫に 一目ぼれをしたのだ。
 しかし、 出会った時には すでに兄の許嫁だった」

 苦しくて、 夜も眠れずに 泣いた。
 陽映の様子に気づいたのは、 その兄だった。
 問い詰められて ついに白状すると、
 鳥座様に話して 相談してやろう といってくれたのだ。

 跡継ぎでもない男に姫はやれぬ と言われたら 諦めろ。
 領地と領民を 簡単にくれてやるわけにはいかない。
 欲しければ 自分の力でもぎ取って見せろ。
 だが、 次男の陽映でも良い というなら 白菊姫は兄が諦める と言ってくれた。
 場合によっては 鳥座に婿入りするという手もある。
 鳥座様なら 姫君を手元に置けることを喜ぶかも知れぬ と。

 しかし、 相談する暇もなく、 鳥座家当主が 急な病で身罷られた。
 だから 鳥座家から使いが来て、 陽映を婿に と申し入れがあったときは、
 紅王丸には悪いが 嬉しかった。
 元々、 紅王丸が病に臥さなくとも、 婿入りして二人の力になりたい と思いつめていたのだ。

「法要の折も、 昨日も 違和感があった。
 どう見ても 白菊姫にしか見えないが、 私が一目ぼれをした人ではない気がして、
 何が起こったのかと悩んだ。
 ……白菊はね、 笑うと 右の頬に 小さなえくぼができるのだ。
 とても小さな 可愛らしいえくぼがね。
 そなたには 無い」

 えくぼを確かめたくて、 陽映は 何とかして笑わそうと試みたのだ。
 人選には たぶんに問題があったが……。

 カノコー

 気まぐれに 寿々芽が一声叫んで 飛び去った。



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コメント
542: by ポール・ブリッツ on 2012/09/08 at 12:22:40 (コメント編集)

なるほど。陽映くん一途な男ですな。

でも、これはひと波乱なしではおさまりそうもないですねえ。

545:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/09/08 at 12:34:01 (コメント編集)

現実には、一途じゃない男が悪目立ちしますからね
せめて物語の中では、一途な男に活躍してほしいじゃないですか。

ストーカーになったらまずいですけど、一途な男女は物語になります。

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