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くれないの影 第四章――4



「私のお友達、 綺羅君だ」
 陽映が言うと、
 屋敷を守る者達は 互いの顔を見合わせて、 困った顔になった。

 婿君のお友達といわれては、 追い出すこともはばかられる。
 うろたえた混乱に乗じて 白菊の居る奥へと通った。

「かわいそうに。 やっぱり、 こっそりと行ったほうが良かったのでは」
 伊織は言うが、
 綺羅君が 派手な狩衣を脱いで 地味な変装をするのを、 断固 拒んだのだから仕方が無い。
 堂々といくしかなかったのだ。

「お友達がいるというのは、 なかなかに便利なものだ」
 その派手な綺羅君が 感心している。
「今まで いなかったのですか」
「お友達からはじめても、 すぐに関係が発展してしまうので、
 こんなに長くお友達のままなのは始めてかも」
 まだ 半日しか経っていない。

「『あーれー』 というのは 無しにしてくださいね」
「いやだなあ、 軽い冗談なのに」
「お友達でいたかったら、 他の冗談にしてください」
「ふふ、 うふふふ」
 ヘンな笑い方をしている綺羅君を横目で見ながら、
 陽映の胸に、 人選を間違えたのか と不安がよぎる。


 白菊の部屋に程近い庭の隅に 二人を残し、
 陽映一人が 白菊を連れ出しに行った。
 すでに 会いたいと伝えてある。

 陽映に伴われて現れた『姫』は、 綺羅君の姿を見るや、 不機嫌をあらわにした。
 そんなことには一切かまわず、 雅(みやび)な君は 陽気に声をかけた。
「我が愛(いと)しの乙女子よ、 また会えましたね」

「五月の蝿(はえ)君、 追っても 追っても 湧いて出ますね」
 『五月蝿い』と書いて、 うるさい と読む。
 ミミズにされようが、蝿にされようが 気にも留めないのが 綺羅君の特技(?)のようだった。

「姫君に 歌を一首。
 白菊やー  ああ白菊や  白菊や  まつとしきかば  今かへり来む」
「それ、 根本的に 問題があると思います。
 思いっきり手抜きですし、 待たれてもいないようです」
 伊織が 情けなさそうに、 口を挟んだ。

「うむ、 ちと 詰めが甘かったか」
「そういう 些細な問題ではありません」
「では 下の句を変えよう」
「いえ、 下の句だけ変えても、 問題は 依然として解決しませんから」

 朗々とした声で のんびりと話す綺羅君に、
 いちいち突っ込む 伊織の間合いが絶妙なのだが、
 『姫』の機嫌は 改善の方向を見せない。
 ますます 眉間に苛立ちが滲んでゆく。

「白菊やー  ああ白菊や  白菊や 
 もっと虐(いじ)めて  縛ってぶって  あは~~ん  字余り」

 綺羅君渾身の作。  ? 



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コメント
538: by 十二月一日 晩冬 on 2012/09/05 at 20:32:58

渾身の作、確かに受け取りましたww
なかなかのフェティシストだ。本当に憎めないキャラ。別に憎まないけどww

539:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/05 at 20:48:24 (コメント編集)

どーも。
第三章――4 の追記に隠したものを含めて、この作品の為に和歌を三首ばかり詠んでみたのですが、
本文中に使うのはこれだけです。
ええ、ええ、分かってますとも。素養なんてありませんから。

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