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くれないの影 第三章――13



「ええっ?」
 伊織が先に驚いた。
 疑問形で 驚きの声をあげる。

 陽映は 口を開くことができなかった。
 驚きはしても、 そういう感情を一笑に付すことはできない。

「はしたない娘とお思いください。 でも……でも、 思い切ることができません。
 ……は……る……あ・き・ら様。 きゃっ」
 日鞠は、 袖で顔を覆って 動かなくなった。

 返す言葉も見つからず、
 視線を あちこちにさまよわせた陽映の目に、 不思議なものが映った。
 縁側から上半身をのぞかせ、 両手で顎を支えるように 頬杖を突いている 派手な狩衣姿の青年であった。
 あれは 何だ。

「いいなあ、 もてて」
 気づかれたと知って、 狩衣男が ぼそりと呟く。

「何処から 湧いてこられた」
「あっち」
 陽映の問いに、 適当に指を指して立ち上がった。

「なるほど、 あなたが 噂の綺羅君ですね」
 鳥座の家人たちが愚痴るのを、 あちらこちらで耳にした。
『法要の支度があるというのに 大雨とは。 しかし、 おかげで 綺羅君が出没しないのがありがたい』 とか、
『綺羅君が出てこないのなら、 大雨のほうがなんぼかましだ。 ずっと降ってくれてかまわない』 とか、
 言いたい放題に 言われている。

「噂?  どんな噂なのだろう」
 陽映の言葉を否定しないからには 当人に間違いはなさそうだ。
 乙女の一大決心の告白が、 宙に浮いた。

「とっても 迷惑をしていると」
「うわあ、 苛められた。 初対面なのに 苛められた…… なかなか良い感じだ」
「苛めてません。 事実です」
「それは残念」
 美しい人なのに とっても残念だと、 陽映も思った。

「して、 そこな姫君のけなげな告白を受けるのか?」
「婿入りが決まった身です」
「つれないなあ。 しかし 婿入り早々に 側室を抱えるわけにもいかないよねえ。
 では、 私が貰っちゃおうかなあ」
「お断りします」
 日鞠が 隠していた顔を上げて、 そこだけは きっぱりと言い切った。

「うっ、 またふられた。 感動した。
 この快感から抜け出せなかったら どうしよう」

「はい?」
 伊織が 首をかしげた。
 ほとんど 首が直角だった。



                    第四章につづく


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コメント
501: by lime on 2012/08/31 at 19:31:57 (コメント編集)

綺羅君、炸裂ですね。
大真面目なのか、ふざけてるのか。
どっちにしても楽しいキャラで、陽映がかすんでしまいそう。

白菊はなにかたくらんでいそうですが、この後何かが起こるんでしょうか。

502:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/08/31 at 20:00:14 (コメント編集)

綺羅君はこの後もこんな調子で爆走する予定です。

> 白菊はなにかたくらんでいそうですが、この後何かが起こるんでしょうか。
第四章はまず、陽映が何かたくらみます。
いろんな人がそれぞれに たくらんでいるっちゃぁたくらんでいます。

ですから 乞うご期待!

503: by 晩冬 on 2012/09/01 at 07:47:34

なんだ、この展開は!
なんだなんだ、残念すぎるこの青年は(笑)
ポジティブなのか、マゾなのか……いや最早ハイブリッドか。
今後、伊織の首がもげないか心配だ

505:Re: 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/09/01 at 14:42:49 (コメント編集)

> なんだ、この展開は!
主人公がおかしくなっているので、今のうちに脇役のストーリーを展開してます。

> なんだなんだ、残念すぎるこの青年は(笑)
帝の弟ですけど。作者にとっても謎の人物になってきました。(^^ゞ

> 今後、伊織の首がもげないか心配だ
丈夫な奴なので、平気です。

2033: by レバニラ on 2014/03/21 at 22:38:13 (コメント編集)

どうも、こんばんはです。

結婚の決まった男に恋心を抱いて憚らない日鞠、
あんな性格だったせいか帝の弟君なのに放逐された綺羅、
まぁ、何というか雅な方々は我々には計り知れない恋愛観をお持ちのようで・・・

以前、日本の古典という事で源氏物語を読んでみたら、凄いエロエロな内容で面喰った覚えがあります。
それで、お公家さん達は光源氏を反面教師にして不自由な身分でいる中、自制をしているものかと思っていたら、
南北朝の動乱を招いた後醍醐天皇が光源氏に勝るとも劣らぬエロエロな人だったので、これまた面喰った覚えがあります(^^;

そんな中で鹿の子ちゃんも複雑な愛憎の渦に巻き込まれてしまいそうな予感がしますね・・・
次章も楽しみに読ませて頂きますね。

2034:Re: レバニラ様 by しのぶもじずり on 2014/03/21 at 23:29:07 (コメント編集)

いらっしゃいませ。

確かにね。
光源氏はお父さんの奥さんに恋するところから始まりますし、とっかえひっかえ。
次から次ですものねものね。

後醍醐天皇は波乱万丈 お騒がせな方だったようですね。
英雄色を好む というタイプだったのかしら。

この物語は、残念ながら、エロエロにはなりません。ごめんなさい。
コメントをありがとうございます。

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