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くれないの影 第三章――9



 着ている物から推し測れば、 下女や召使ではなさそうだ。
 いずれ ひとかどの家の 息女だろう。
 それならば、
 主に叱られたとか、 仕事で失態を演じたとかいう簡単な理由で泣いているとは思えない。

 陽映は 困った。
 大いに 困った。
 泣いている女人は すこぶる苦手だ。
 どう対処すればよいのかが 全く分からない。
 今後は それなりの技も 必要になってくるのだろうか。
 それにしても 苦手だ。

 陽映の気配に 娘も気づいたらしい。 あわてて顔をそむけた。
「侍女でも呼ぼうか」
 仕方なく声をかけたが、 かたくなに 首を横に振る。

 一人になりたいのだろう と勝手に解釈して、 部屋に引き返すことにした。
 後ろの泣き声が、 ひとしきり すがるように大きく聞こえた気がしたが、 かまわず逃げた。


 しばらくして 側近の伊織(いおり)が、 若い男を伴って戻った。
「ご希望であれば、 明日にでも この者が 領内を案内してくれるとのことでございます」
「平題箭(いたつき)謙介と申します。 お見知りおき下さいませ」
 無表情に挨拶されて、 陽映は鷹揚に答えた。
「急ぐことではない。 ご法要の支度に差しさわりの無い時でよい」
「万事 滞りなく進んでおります。 お気遣いは ご無用に」

「それならば 頼むといたそう。
 先ほど、 庭の隅で どこぞの姫君が泣いておった。
 収まっていれば良いが、 様子を見て、 まだ泣いているようなら、 しかるべく対処してやって欲しい」

「姫君……あっ、 かしこまりました」
 平題箭は 少しだけ考えたが、 心当たりがあるのだろう。
 すぐに承知して下がった。


「愛想の無い男ですなあ」
 伊織が 感想を述べた。
 普段は 他人をとやかく言うことの無い男だが、 やはり 勝手が違って 戸惑いがあるのだろう。
「うむ、 しかし有能そうだ」
「そういえば、 波止女家から 白菊様の伯母上が 姫君を伴われていらしているとか。
 泣いていたのは その姫かもしれません」



 翌日、 東の領内を案内されて 部屋に戻れば、 夕暮れが差し迫っていた。
 伊織を相手に こもごも感想を述べ合っているところに、 世話役の家人が来た。

 波止女の奥方が 会いたがっているという。
 挨拶かと思い、丁寧な人だ と通してもらうことにした。



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コメント
481: by 晩冬 on 2012/08/27 at 18:19:08

陽映……そりゃあ、いかんよ。
泣いている女性を置いて逃げるなど言語道断(苦笑)

男の見せ所だろうにー

482:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/08/27 at 19:03:55 (コメント編集)

女性経験のスキルが足らないのです。
まだ若いのです。
一応、その他の理由もあります。

生温かい目で見てやってください。

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