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くれないの影 第二章――5



「土岐野様、 お願いがあります。
 じっくりと見せてください。
 そのう、 立ったり 座ったり 歩いたり のお手本を」
 土岐野が来た時、 切り出してみた。

 土岐野は わずかに目を見張る。
 鹿の子から 進んで申し出をしたのは 初めてのことだった。
 考えるように 一度目を閉じる。

「よかろう」
 土岐野は、 ひなびた領主屋敷の侍女とは思えぬ優雅さで 所作(しょさ)を披露した。
 鹿の子の様子が ぼんやりと頼りないものになる。
「これ!  しかと見たか」
 一通り所作を繰り返した土岐野は、
 心ここにあらず という様子の鹿の子に 鋭い声を投げかけた。

「…………は、 はい、 確かに」
 鹿の子の顔つきまでが みるみるうちに 凛(りん)としたものに変わり、
 驚く土岐野の前で、 寸分違わぬ動きで 繰り返して見せた。

「なるほど、 そなたには 手本を見せるのが良いようだ。
 では、 今日の食事を この部屋で共に取れるよう手配しよう。
 あとは 細かい日常の所作だな」
「待ってください。 さっきの動きが馴染むまで 時をください」
 鹿の子は、 まだ 半分くらいぼうっとした状態だった。

 得意技とはいえ 頻繁(ひんぱん)に使っていたわけではない。
 一度覚えた軽業の技も 馴染むまで繰り返し練習して、
 さらに 見栄えが良くなるように工夫してきた。
 立て続けに使ったことなど無いから 不安があった。

「そうか。 では 明日にしよう」
「もう少し……」
「明後日がよいか」
「もう 一声」
「では、 三日後に来よう」

 鹿の子の不器用に悩んでいた土岐野は、 あっさりと承知した。


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コメント
416:初めまして by ラ コンシェル on 2012/08/11 at 12:45:39

私のブログにご訪問してくださったようで、ありがとうございます。
ブログ初心者で、今更ながら訪問者リストというものに気づきました。
お礼が遅くなってしまい、申し訳ありません。
貴殿の小説、少し拝見させていただきました。
ジャンルが違いますし、ファンタジーはほとんど読んだことがないので、評価はできかねますが、なかなか楽しい小説ですね。
時代物にも疎いため、新鮮さを感じました。
私のブログはFX取引がメインのため、日々掲載とはいきませんが、よろしければ暇なときにでもご覧になってみてください。
本格ミステリ小説なので、多少文章は堅めですが、会話部分などは読みやすくしているつもりです。
よろしければ末永いお付き合いができればいいなと思っています。
また、ブログ作成の御指南などいただければ嬉しいです。

417:Re: 初めまして by しのぶもじずり on 2012/08/11 at 14:03:53 (コメント編集)

ラコンシェル様 いらっしゃいませ。ご丁寧なご挨拶、いたみいります。
ミステリは好きなので、また寄らせていただくと思います。こちらこそ宜しく。

私もブログを初めて まだ半年にもならなりません。ほとんど初心者です。
指南できるほど分かっていませんが、お役にたてる事があれば、うれしいです。

418: by lime on 2012/08/11 at 16:15:11 (コメント編集)

そうですよ、鹿の子には、この手があった。
ここで使わねば。

紅王丸の出現で、物語がとても鮮やかで奥深くなりましたよね。とても興味深い人物です。物語を動かす人なのでしょうか。
鹿の子の反応がまた、素っ気なくてかわいいですね。
続き、楽しみです。

419:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/08/11 at 17:39:33 (コメント編集)

鹿の子は奥の手を出しました。
鹿の子の運命や 如何に。

紅王丸は気に入っていただけましたか?
幽閉された美少年です。

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