万葉集だよ
あれこれ放談 - 2022年11月13日 (日)
友人に頼まれて、デンマーク人を二週間ほど居候させたことがあった。
うちを出た後イングリッシュハウスとやらに移ったので、
居候を押し付けてきた友人夫妻と遊びに行った。
居候は、何故か私になついていて、かなり喜んだ。
部屋には、ルームメイトだというアメリカ人が居た。
彼女は、英会話学校で講師のバイトをしていたらしい。
私も、乱暴な英語で会話に混ざって盛り上がった。
英会話講師に褒められた。
英会話学校の生徒のレベルがしのばれる。
おそらく、初期の生徒を担当していたのだろう。
なんでかしらんポエムの話になった。
アメリカ人は英会話を教えているくらいだから、日本語に興味があったらしく、
俳句の話をし始めた。
彼女が、俳句を <オールド ジャパニーズ ポエム>と言ったので、
私は、人差し指を横に振り、即座に否定した。
俳句はニュータイプのポエムでっせ。
仲間内のゲームから発生したゲーム性の高いポエムだもの。
日本のポエムと言ったら短歌でしょう。
さらにオールドなポエムは長歌というのもある。
アメリカ人は話に付いて来れない。当然だ。
そこで、調子に乗った私は、万葉集の最初の長歌を披露した。
何故か覚えていた。
古文の授業で暗記したのかもしれないが、気に入っていた。
籠もよ み籠もち 掘串(ふくし)もよ み掘串もち
この丘に 菜摘ます子 家聞かな 告(の)らさね
そらみつ 大和の国は おしなべて 吾こそをれ しきなべて 吾こそませ
吾こそは告らめ 家をも名をも
外国人組は、当然チンプンカンプンである。
日本人であるはずの友人妻も「わたしも分んな〜い」とのたまう。
このままでは終われない。
仕方なく英訳してみた。
hey beautiful girl on spring field.
I am strong. I am 天皇.
THIs country is mine.
I love you.
いやぁ、古文の先生にも英語の先生にも、しこたま叱られそうな
とんでも英訳です。とんでも意訳でもあります。
でも、出先ですし、辞書も資料もありませんし……ごめんなさい。
アメリカ人は言いました。オー バッドプロポーズ
ふん、アメリカ人には分るまい。
このおおらかで伸びやかな妻問いの良さは。
そんな事がありまして、スラングの日本語訳資料をもらって帰りました。
大恥をかいた黒歴史ではありますが、
拙い英訳(?)に挑戦したことで、一つ気づいたことがあります。
例の長歌の詞書(ことばがき)には「天皇の御製歌(すめらみことのおおみうた)」
とあります。
雄略天皇の御歌と伝えられていますが、はっきりとは書いてない。
古事記にある、雄略天皇の妻問いのエピソードが似ているかららしい。
そこから勝手な妄想が始まりました。
「万葉集」は国家事業です。重要な国家事業です。
その最初の歌です。ただの相聞歌のはずが無い。
この辺りからは、独断と偏見です! キッパリ!!
「この丘に菜摘ます子」は
「この国で暮らす全ての民」を意味するのではなかろうか。
それであれば、
この国の美しき民よ 楽しく暮らしているか。
吾こそが 大和の国を一面に従えて統べよう。
力ある吾こそが 皆を愛しもう。
そんな建国宣言なのかも。
なあんて珍説を編み出しましたとさ。
どっとはらい。

