バベルの塔と混沌帝
あれこれ放談 - 2021年08月19日 (木)
バベルの塔が気になる。
聖書にある話らしい。
さすが聖書。良くできた話である。
誰でも知っているとは思うが、簡単に言うと、
人類が協力して、天に至る高い塔を建てようとした。
神様が怒って、人々の言葉が互いに通じなくしてしまった。
意思疎通ができず協力できなくなった人々はバラバラになり、
バベルの塔の建設計画は頓挫した。
言語が多様化したわけだ。
近頃、バベルの塔が気になる。
インターネットでバベルの塔を作ろうとしているんじゃないかと気になる。
ある時突然何かが起こり、インターネットが崩壊したら、
たちまち世界が大混乱を起こしたりしないだろうか。
一気に来たらヤバいよね。
そんな事を考えていたら、ふと思い出した。
昔教科書で読んだ気がする。
たぶん教科書だったような……そんな気がする。
「混沌の話」
どうも「荘子」が元になっているらしい。
荘子は読もうとした事がある。
混沌の所まで行けなかった。
しょっぱなから壮大すぎて、呆然としてしまった。
「北冥に魚あり 名を鯤と為す」というあれだ。
北の海には幾千里にも及ぶでっかい鯤という魚がいる。
鯤は変じて、鵬というでっかい鳥になる。
中国の神話にある話が元らしい。
往年の名横綱「大鵬」のしこ名は、ここから付けたと聞いた事がある。
鵬が怒って飛び立つ時、翼は天に垂れる雲のようだ。
季節が変わって海が動く時、鵬は南に移ろうとする。
めちゃくちゃ壮大な話である。
度肝を抜かれていると一転する。
空が青く見えるのは、本当に空が青いからなのか。
青く見える海の水もすくえば、透明だ。
水が多すぎるから、海は青く見えるのだろう。
地上から天が遠く離れているから、青く見えるだけじゃないのか。
天の高見から地上を見れば、青く見えるんじゃないのか。
「正解!」思わず叫んだのだった。
荘子ってなんだかすげえ。
小さな水溜まりに大きな船は浮かばない。
大きな鳥が飛ぶ時、翼の下には強い風がたくさん必要なはずだ。
いきなり科学的な考察になってる。
感心のあまり、先に進めなくなった。
だから私の記憶は、たぶん教科書である。
「混沌の話」とはこんな話だ。
南海の帝と北海の帝は、中央の混沌帝の所で共に会った。
その時、混沌に厚くもてなされた。
感謝した二人の帝は、混沌にお礼をすることにした。
混沌には、人間にあるはずの七つの穴が無い。
目も耳も鼻も口も無い。
お礼に、七日間かけて穴を開けた。
七日目に、混沌は死んだ。
そんな話だ。
調べたら、南海の帝は 儵(しゅく)という。
瞬間的に現れるという意味の名前らしい。
北海の帝の名前は忽(こつ)。
瞬間的に消すという意味がある。
「忽然として姿を消す」などというときの忽然の「忽」である。
訓読みでは「たちまち」になる。
二人とも、即断即決の人なのだろう。
面白いよねえ。
混沌には即断即決で穴を明けちゃいけないのだ。
何でもはっきりさせれば良いという事は無い。
急げば良いという事でもない。
世界は簡単にはいかない。
バベルの塔は、一体になって高みを目指した人類が神の怒りに触れて、
バラバラになった話。
混沌の話は、ごちゃごちゃとはっきりしない人(?)を、人並みにしようとして、
殺した話。
どちらも話の筋は簡単だけど、中身は簡単じゃない。
つくづく 世界は簡単じゃない。

