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バベルの塔と混沌帝


 バベルの塔が気になる。

 聖書にある話らしい。
 さすが聖書。良くできた話である。

 誰でも知っているとは思うが、簡単に言うと、
 人類が協力して、天に至る高い塔を建てようとした。
 神様が怒って、人々の言葉が互いに通じなくしてしまった。
 意思疎通ができず協力できなくなった人々はバラバラになり、
 バベルの塔の建設計画は頓挫した。

 言語が多様化したわけだ。

 近頃、バベルの塔が気になる。
 インターネットでバベルの塔を作ろうとしているんじゃないかと気になる。
 ある時突然何かが起こり、インターネットが崩壊したら、
 たちまち世界が大混乱を起こしたりしないだろうか。

 一気に来たらヤバいよね。


 そんな事を考えていたら、ふと思い出した。
 昔教科書で読んだ気がする。
 たぶん教科書だったような……そんな気がする。

 「混沌の話」
 どうも「荘子」が元になっているらしい。
 荘子は読もうとした事がある。
 混沌の所まで行けなかった。

 しょっぱなから壮大すぎて、呆然としてしまった。
 「北冥に魚あり 名を鯤と為す」というあれだ。

 北の海には幾千里にも及ぶでっかい鯤という魚がいる。
 鯤は変じて、鵬というでっかい鳥になる。
 中国の神話にある話が元らしい。
 往年の名横綱「大鵬」のしこ名は、ここから付けたと聞いた事がある。

 鵬が怒って飛び立つ時、翼は天に垂れる雲のようだ。
 季節が変わって海が動く時、鵬は南に移ろうとする。

 めちゃくちゃ壮大な話である。
 度肝を抜かれていると一転する。

 空が青く見えるのは、本当に空が青いからなのか。
 青く見える海の水もすくえば、透明だ。
 水が多すぎるから、海は青く見えるのだろう。
 地上から天が遠く離れているから、青く見えるだけじゃないのか。
 天の高見から地上を見れば、青く見えるんじゃないのか。

 「正解!」思わず叫んだのだった。
 荘子ってなんだかすげえ。

 小さな水溜まりに大きな船は浮かばない。
 大きな鳥が飛ぶ時、翼の下には強い風がたくさん必要なはずだ。
 いきなり科学的な考察になってる。
 感心のあまり、先に進めなくなった。

 だから私の記憶は、たぶん教科書である。


 「混沌の話」とはこんな話だ。

 南海の帝と北海の帝は、中央の混沌帝の所で共に会った。
 その時、混沌に厚くもてなされた。
 感謝した二人の帝は、混沌にお礼をすることにした。

 混沌には、人間にあるはずの七つの穴が無い。
 目も耳も鼻も口も無い。
 お礼に、七日間かけて穴を開けた。
 七日目に、混沌は死んだ。


 そんな話だ。
 調べたら、南海の帝は 儵(しゅく)という。
 瞬間的に現れるという意味の名前らしい。
 
 北海の帝の名前は忽(こつ)。
 瞬間的に消すという意味がある。
 「忽然として姿を消す」などというときの忽然の「忽」である。
 訓読みでは「たちまち」になる。

 二人とも、即断即決の人なのだろう。

 面白いよねえ。
 混沌には即断即決で穴を明けちゃいけないのだ。
 何でもはっきりさせれば良いという事は無い。
 急げば良いという事でもない。

 世界は簡単にはいかない。


 バベルの塔は、一体になって高みを目指した人類が神の怒りに触れて、
 バラバラになった話。

 混沌の話は、ごちゃごちゃとはっきりしない人(?)を、人並みにしようとして、
 殺した話。

 どちらも話の筋は簡単だけど、中身は簡単じゃない。
 つくづく 世界は簡単じゃない。


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コメント
4743:邯鄲(かんたん)の夢 by sado jo on 2021/08/19 at 14:07:20 (コメント編集)

真上に見える空が青いのは大気が太陽の青い波長を「レイリー散乱」させているからです。
その一方夕焼け空が赤いのは、角度のせいで太陽の赤い波長が見えてしまう目の錯覚です。
「混沌の話」で思い出しましたが、自分の好きな荘子の説話に「邯鄲の夢」と言うのがあります。
ある男が自分が蝶になって舞っている夢を見た。そして目が覚めると人間の自分がそこにいた。
男は思った「自分は蝶になった夢を見たのだろうか?それとも蝶がここにいる自分を夢見ているのだろうか?」
今ここに存在している様に見える自分は、実は誰かが夢に見ている自分なのかも知れませんね(笑)

4744:地は混沌として空しく by ☆バーソ☆ on 2021/08/19 at 15:03:29 (コメント編集)

うーん、名エッセーですね。名文です。
こんなフレーズが目につきました。
「さすが聖書。良くできた話である。」
「たぶん教科書だったような……そんな気がする。」
「しょっぱなから壮大すぎて」
「度肝を抜かれていると一転する。」
「感心のあまり、先に進めなくなった。
 だから私の記憶は、たぶん教科書である。」
「 面白いよねえ。」
「世界は簡単にはいかない。」
「つくづく 世界は簡単じゃない。」

しかしインターネットが崩壊すると、世界は大混乱は起こすでしょうか。
しばし呆然として、唖然として、混沌として、頓挫するでしょうか。
しかし、その程度で頓挫するならたいした人生じゃねえ、にゃろめ。
と言いたくなりますが、どうでげしょう。

4745:Re: sado jo様 by しのぶもじずり on 2021/08/19 at 16:48:35 (コメント編集)

「邯鄲の夢」も荘子でしたか。教えてくださって、ありがとうございます。
「邯鄲の夢」も物議をかもしそうな話で印象的ですが、私は「混沌の話」が好きです。

やっぱ荘子って面白い。

4746:Re: 地は混沌として空しく by しのぶもじずり on 2021/08/19 at 17:03:50 (コメント編集)

☆バーソ☆様 毎度ありがとうございます。

インターネットが崩壊したら、
私のように、いい加減年を取った庶民にはさほど影響が無いでしょう。
でも、お仕事関係には大きな支障ができそうに思います。
ファクシミリが使えないだけでも大変そう。
若い方の中には、生活の多くをネットに頼っている人も多いと聞きます。
金融関係がどういうシステムになっているのか知りませんが、その辺に影響が出るようなら、パニックになりそうな気もします。
そんな事になりませんようにと祈るしかないですけどね。

4747: by ユーアイネットショップ店長うちまる on 2021/08/20 at 04:49:17

バベル
昔、横山光輝先生の漫画でバビル二世って
あったなぁ。バベルって聞いて思い出しました。

4748:Re: ユーアイネットショップ店長うちまる様 by しのぶもじずり on 2021/08/20 at 16:57:02 (コメント編集)

ありましたねえ。
題名は思い出しましたが、内容はさっぱりです。
横山光輝の作品はたくさんありますから。
鉄人28号。魔法使いサリー。伊賀の影丸。赤影。
そっちの方が印象深いです。

4749:ネット以前のほうが by ぐん on 2021/08/21 at 21:30:40 (コメント編集)

生き生きしてたような気がします
友達にじじいかって言われましたけど
愛してくれと言ってくれの電話やファックスでやりとりとか不便なんだけど
まあインターネット体感したから崩壊したら困りますね

4750:Re: ネット以前のほうが by しのぶもじずり on 2021/08/22 at 16:54:35 (コメント編集)

便利なものに慣れてしまうと、元には戻りにくいですよね。
生まれたときからネットが会った世代には大変でしょうね。
できたのが人類の歴史ではごくごく最近ですから、無くてもやってはいけるんですけどね。

4751: by さえき奎(けい) on 2021/08/27 at 21:25:30 (コメント編集)

しのぶもちずりさん、今晩は。
いつもありがとうございます。

混沌やカオスの話は面白く尽きないですね。
そもそも宇宙の開闢がそこからなんですからね(笑)。
古い映画ですが、ブラピや役所広司、菊地凛子も出演していた『バベル』を観ました。
まあ、いろいろ強引な展開もありましたがそれなりに面白かったです。
最近アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の作品をあまり聞かないのは残念ですが、今のハリウッドではこういう作品は無理でしょうね。

4752:暴虐の世も秩序あればこそ by miss.key on 2021/08/28 at 09:57:24 (コメント編集)

 一人一人はそれなりに良い人なのに、それが集まると気が大きくなって、狂暴になって、暴れまわって、悪い事ばかりする。ま、それが彼らなりの一種の秩序なんだが、御免被りたい。
 それはさておき
 法の恩恵を一番受けているのは誰か知ってますか。実は法を守らない人だったりします。何故なら、他人に法の枷を嵌めていればこそ、法を破る事で得られる利益が最大化するからであります。他人を出し抜いてこそ甘い汁を吸えるのに、枷に嵌められていなければだーれも大人しく出し抜かれてくれませんからねぇ。
 それにどんなに強い奴だって、周りが総て敵か味方か判らない状態では、粋がっていては命なんて幾つあっても足りゃしない。俺様の天下なんて夢のまた夢、大人しくしているのが吉。悪にもそこなりの秩序が必要なのでありますの事よ。
 ということは、だ。秩序こそが暴虐の世の始まりだったのかも・・・なんて思ったりもする。
 うーむ。

4753:Re: さえき奎様 by しのぶもじずり on 2021/08/28 at 18:20:55 (コメント編集)

いらっしゃおませ。こちらこそ、いつもありがとうございます。
残念ながら「バベル」は見ていません。

> 混沌やカオスの話は面白く尽きないですね。
> そもそも宇宙の開闢がそこからなんですからね(笑)。
宇宙の始まりの混沌は、ヒッグス粒子のおかげで、穴が開いても死ななかった。
なんてね。わっはっはっは

4754:Re: 暴虐の世も秩序あればこそ by しのぶもじずり on 2021/08/28 at 18:23:37 (コメント編集)

miss.key様 いつも面白いコメントをありがとうございます。

ほらね。人間の世界は、簡単じゃないのよ〜。

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