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ヴェニスの商人考


 「ヴェニスの商人」を読んだのは、学校の図書室でした。
 戯曲ではなく、子ども向けの物語になっていました。

 有名な作品ですから、だいたいの内容は知っていました。
 
 アントニオという商人が、
 友人の結婚資金をユダヤ人の高利貸しシャイロックから借りたが、
 持ち船が難破して返却できなくなる。
 借金の時に、公文書を作ってあったため裁判になる。
 借金の形に、アントニオの肉を1ポンド。
 アントニオの友人バサージオの恋人ポーシャが裁判官に化けて、
 肉をとっても良いが、血を一滴も探してはならないと言って、
 めでたしめでたし。

 シェークスピアの喜劇だということと、
 おおざっぱなあらすじくらいは知っていました。

 ところが、読みはじめて吃驚。
 冒頭からシャイロックが公衆の面前で唾を吐きかけられ、
 蹴っ飛ばされて、散々馬鹿にされたのです。
 シャイロック可哀想です。
 結末を知っているだけに笑えませんでした。
 いやいや喜劇じゃないんのん。
 悲劇の間違いじゃないの。

 シャイロックはユダヤ人の高利貸し。
 それしか説明がありません。
 散々馬鹿にしたアントニオが、借金を申し込みます。
 いやがらせしてもおかしくないじゃん。

 これを喜劇に分類した人は、
 ユダヤ人の高利貸し=人間のクズ
 という記号化をしたのかもしれません。
 当時はそれが世間の常識だったのかも。

 アントニオは商人で、名誉を重んじ友情に厚い男です。
 友人のバサーニオは血筋が良く、何らかの才能があるらしいけど、
 経済的には駄目男です。
 その恋人のポーシャは、受け継いだ高額の財産を恋人に差し出し、
 友人を救うために知恵を絞る愛の人です。

 彼らには金銭以外のアイデンティティがあるわけです。
 シャイロックは、金にしがみついて娘にも見放される人物。
 金銭以外の価値観VS金の亡者。
 そういう図式なのでしょう。

 商売はもちろん、何をするにもお金は必要です。
 研究には研究費、技術には開発費、芸術にもパトロンやご贔屓はつきものです。
 ピカソの青の時代は、一番安い青の絵の具しか買えなかったせいだといわれています。
 赤い絵の具が買えるようになって、反動で赤の時代になったとか。
 様々な価値観を支えるのに便利で使いやすいのがお金です。

 金銭そのものにしか価値観を持たないシャイロックが、
 他の価値観に破れる話とも読めます。

 世界中がシャイロックだらけになっちゃった感がある昨今、
 無理矢理ですが、喜劇に一票入れたくなりました。


 でも、この作品の中で、一番存在感があるのはシャイロックなんだよな〜。


知的財産権の扱いが違うらしい★★★全豪オープンテニス

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3714:おはようございます。バーソです。 by ☆バーソ☆ on 2017/01/11 at 09:26:18 (コメント編集)

西欧の人間がユダヤ人を嫌うようになった大きな原因が、
この『ヴェニスの商人』の本だという話があります。
ユダヤ人は国がなかったため、世界で生き残るためには
金融業と知恵を使う業種しかなかったのだそうです。

でも、ユダヤ人イコール狡い人種というステレオタイプ思想
を単純に信じるほうは、イコール愚かしい人種。

著名な、あるいは大勢の人が嘘を言い続けていると、
それがだんだんと真実になり、固定される恐ろしさ。
正義というのは言い張ったほうが勝ちということがありますね。

3716:Re: おはようございます。バーソです。 by しのぶもじずり on 2017/01/11 at 18:02:20 (コメント編集)

ええ〜っ、「ヴェニスの商人」が原因だったの?
でもねえ、子どもの素直な感性だと「シャイロックの悲劇」に読めちゃうんですよ。
喜劇に分類されたのは、すでに観客の側にユダヤ人の高利貸しに対して共通の差別意識があったのではないでしょうか。
それをシェークスピアがあからさまにした。

シェークスピアのせいにするのは、違う気がします。
あの人がそう言ったから、で片付けるのはずるいです。
怖いのは、顔の見えない大勢に思えます。

3718:http://barso.blog134.fc2.com/ by ☆バーソ☆ on 2017/01/12 at 09:36:25 (コメント編集)

言葉足らずでした。
ユダヤ人は才覚ひとつで生きる流浪の民でしたから、
当時すでに世の中にユダヤ人嫌悪思想があり、
それがこの著名な書で西欧社会に定着されたと
いう意味だろうと思います。

金貸しはいつの時代も嫌われますね。
山本夏彦なんか、銀行は高利貸しだとか言ってました。

あの契約書にはどう書いてあったか忘れましたが、
 「借りた金を返すことが出来なければ、
 彼の肉1ポンドを与えなければいけない」
という言い方であったのなら、
返すほうが肉を切り取って“与える”べきですから、
シャイロックが「裁判官よ、アントニオが自分で
肉を切り取って出せばいい」と
どうして言わなかったのかと思います。

3720:Re: http://barso.blog134.fc2.com/ by しのぶもじずり on 2017/01/12 at 18:41:15

☆パーソ☆様 ご丁寧なお返事をありがとうございます。
裁判官は、ポーシャですから、
「アントニオが自分で肉を切り取って出せばいい」とは絶対に言わないでしょう。

銀行は確かに金貸しです。
金貸しも商売ですから、借りたお金は返しましょう。
二宮金次郎は、薪を背負って勉強しながら、親の借金を全部返しました。
金貸しを嫌っても、借りたからにはしょうがないです。
暴力で取り立てるのはやり過ぎですが、貸した金が返らなければ、金貸しは成り立ちませんもの。

3721: by める on 2017/01/12 at 21:58:08

しのぶさん こんばんちーっす

「ヴェニスの商人」のコメじゃなくてすみません。

昔の物語と言えば、「レ・ミゼラブル」は
マンガになってて、連載中だと思います。
掲載誌読んでいませんが、
コミックスが途中まで発刊されてますので・・・・
結構暗い感じですが、コミックス買ってます。

3722:Re: める様 by しのぶもじずり on 2017/01/13 at 17:41:48 (コメント編集)

「レ・ミゼラブル」は読んでないです。
銀の燭台をもらうやつですよね。
なんか暗そうでめんどくさそうな予感が……。
食わず嫌いならぬ読まずぎらいですかしら。
かなり長い話じゃなかったでしょうか。
まあ、読まないと思います。

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