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赤瑪瑙奇譚 第九章――7



 しかし、 倒れないのを見て、刺客は 予備の吹き矢を慎重に構え、 もう一度飛ばす。
 首と額に 当たったはずだ。 外すわけがない。
 それでも 微動だにしない人影に、 四人は うろたえた。

「終わりか」
 カムライの声が 聞こえるが、 四人には、 もう毒は残っていなかった。
 失敗を悟って くず折れる。

 人に見えていたものが 不自然に ぐにゃりと倒れ、
 幹の陰から現れたカムライが、 それを引きずって 歩き出した。
「危なかったなあ。
 ホジロ、 人形を作るのが 上手いね。 わたしにそっくりだ」

 ゴミ箱一つを片付けられなくても、 一晩で 生き人形を作れちゃうのが、 ホジロという男なのだ。
「実験用に いくつも作ったことがあるんだ。
 今回のは、 急いだ分、 細部に少し納得がいかない」
「何の実験?」
「まだ内緒。それより、結婚式に遅刻するよ」

 ホジロが 注意を促すと同時に、 警備兵が 報告に来た。
「殿下、 乱入してきた者は すべて取り押さえました。 城へお急ぎください」

 結局、 ホジロは昨夜、 せっかく頼んだ布団部屋に 帰れなかった。
 大工のアトメに教わっていた仕掛けを 動かす作業と、 人形作りで、 夜なべをする羽目になったからだ。



 黒い王子ウルクが 片手を挙げて 合図をすると、
 反乱軍が 袖なし外套を 次々と脱いでいき、 兵士の姿をあらわにした。

 ウルクが ユキアに向かって言う。
「心配するな。 俺が嫁にしてやる」

 ウルクの声は、 のんびりした抗議に 遮られた。
「それは困る。 ユキアは わたしの后にするからな」
 反乱軍兵士たちから死角になってる 目立たぬ扉、
 調理場に続く扉から カムライが 姿を現した。

 ユキアに向かって笑い、
「遅刻してごめん」
 と詫びる。
「どういたしまして。
 どうせ邪魔されましたから、 今日は、 婚礼を上げるのは無理みたいですし」
 ユキアも 笑い返した。

「ふん、 目障りな奴を 先に消しておこうと思ったが、 やはり、 しぶといな」
 ウルクが言い終えるや否や、 反乱軍が 一斉に躍りかかった。

 だが、 列席者も 事態を予想して、 武器を携えていた。 猛然と反撃を始める。
 大広間は、 一転、 戦いの場と化した。
 若い時には 戦場を駆け巡ったであろう大臣たちも、 反乱兵相手に けっこう互角に 戦っている。
 カリバネ王の合図で、 城に潜んで 待ち構えていた兵士たちも 飛び出し、
 剣の打ち合う 壮絶な音が鳴り渡った。
 カムライも 兵に指示を与えながら、 その渦に飛び込んでいく。

 その中から、 反乱兵の一団が、 ユキアに向かって 迫ってきた。
 目的をうかがわせる動きだ。

 七人の護衛が、 ユキアを背に 迎え撃つ。
 鉄壁の守りに焦ったのか、 ハヤブサに組み敷かれた反乱兵が 苦しげに叫んだ。

「姫を死なせてもいいのか!  もうじき 城は 炎に包まれるぞ。
 離せ!  我らに任せれば、 外に連れ出して 命を助けられるのだ」


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コメント
296: by ポール・ブリッツ on 2012/07/15 at 18:54:24 (コメント編集)

とことんまで悪辣な敵ですね~(^^)

297:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/07/15 at 20:06:18 (コメント編集)

毎度どうもです。
まだ、ユキアが活躍してませんから、敵にも頑張ってもらわないと。(あ~あ、舞台裏)

298: by 十二月一日 晩冬 on 2012/07/15 at 21:46:35

ホジロ、格好良い!
ゴミ箱片付けられないのに・・・なんて奴だ

299:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/07/15 at 22:44:52 (コメント編集)

あははは、カッコイイですか。
特殊能力に特化した男です。

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