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2014年02月のエントリー一覧

  • 馬十の辻に風が吹く 第三章―2

     二人の可愛らしい言い合いを聞いて、 葦若が得意げに笑った。「うふふ、 壊れませんよ。 からくり名人に相談して、 揺れが少なくなるように 特別な工夫をしたのです。 とても良い乗り心地になりました」「どんな工夫なのかしら。 知りたいです」 桜子が目を輝かせる。「まだ秘密ですが、 試しに乗ってみますか?  ただし、 飛ばすのは無しです。 怖いですから。 …… 私が」 そういう次第で、 桜子と幸真千が乗って来た馬車...

  • 馬十の辻に風が吹く 第三章―1

     北山院の 賀の祝いが催されることになった。 賀の祝いは、慣例により 年若い者たちの手によって進められる。 六十歳の長寿を祝い、 東宮を中心に 若くて元気な次世代を担う青少年が、 院の住まいである北山の館に集った。 皆、 これからという 十代を中心にした若者ばかりである。 東宮は別格として、 朝廷でそれなりの地位にあるのは、 参議に就いている葦若と 中務省の内記(ないき)である 磐之倉徳晃(のりあきら)くらい...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―11

    「真咲。 これの名が判らぬ。教えてくれ」 唐突に質問されたが、 あい にく 虫には詳しくない。 名札の付いていないものが 他にいくつもあるからには、 例の奥の手は使えない。 全部 自分で調べろ と言ってしまったら、 あまりにも無責任だ。 見たことがあるような気がしないでもないが、 箱を手にとり、 近くで見ても はっきりしたことは言えない。「虫は あまり知りません。 虫好きの子供が 『道教え』と呼んでいたような...

  • 平和と誇り

     日系アメリカ人と在米日本人が、 慰安婦の像撤去に向けて訴訟を起こしたらしいです。 ワシントン国立公文書館には、 1944年の――ということは、終戦の一年前。戦時中―― 米軍による慰安婦への聞き取り調査の報告書が残っているらしく、 そこには、 《慰安婦は強制されたものではなく雇用されていた》 《接客を断る権利を認められていた》 《女性たちは大金を持って楽しんでいた》 と書いてあるらしいです。 米国の著名な...

  • 毛糸屋さんのおかしな客

     駅ビルに、 小さな 毛糸屋さんがありました。 夕方のラッシュが ひと段落ついた夜、 仕事帰りらしい女が、 毎日、 毛糸が並んだケースを熱心に眺めては 通り過ぎるようになりました。 やがて そのお客は、 一日に一つだけ 毛糸玉を買ってゆくようになりました。 でも、 おかしなことに、 散々見比べたあげくに買っていくのは、 違う色ばかりでした。 毎日一玉ずつ、 違う色の毛糸を買っていくのです。 そのおかしな客...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章-10

    「命の恩人が忘れられない というお話を聞いたことがありますけど、 本当なのですか。 その方を 娶られるおつもりなのかしら」 桜子の問に、 葦若が やさしい笑顔をかえす。「おや、 そんなことまで ご存じでいらっしゃる。 皇女様は情報通ですね。 あの乙女に助けられなければ、 私は今、 こうして生きてはいません。 出来るものなら 妻にしたい」(えっ、 ちょっと待って。 それって私だわ) 突然のことに 真咲は焦った。...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章-9

    「胃は元気になりましたか」 桜子が 余計なひと言を付け加えた。 葦若が とぼけた笑顔を 桜子から真咲へと移す。「いえ、 残念なことに、 すぐ吐きだしてしまいましたから。 あまりの苦さに驚いて 典薬寮に駆けこんでしまいました。 先生が あんな悪戯(いたずら)をするお茶目さん とはつゆ知らず、 してやられました。 おかげで 千振を覚えました。 もう忘れません」 怒るでもなく へらへらされると、 それはそれで面白くな...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章-8

     何事も起こらないままに、 幾日かが過ぎた。 その間に、 真咲は警戒すべき要所を押さえていった。 幸真千が 剣の稽古をしていると聞いて、 こっそり見に行ってみたが、 まるで役には立ちそうにない。 まだ八歳である。 表面的には 平和な世が続いているから、 実戦に巻き込まれたことも、見たことさえ無いと思っていい。 大人を相手にして 多少なりとも身を守れるようになるには、 まだまだ 時間がかかりそうだ。 真咲...

  • 国会中継を見て、つらつら思った事

     間違えて追記のコーナーに書いてしまいました。 すいませんお手間を取らせますが、そのまま行きます。...

  • 犬派のねこまんま 32である byねこじゃらし

    <ゾーンてヤツだったのかもしれない> オリンピックとか国体とか、 そういう たいそうな話ではない。 中学校の体育祭の話である。 ある日のホームルームで、 競技出場選手の割り振りが行われたのであった。 自薦他薦で次々と決まってゆき、 最後に残ったのが、 走り幅跳び と 吾輩になった。 まずいなとは思った。 運動神経も、 跳躍力も、 足の長さも、足りない。 だからといって、 では何が得意なんだと聞かれても、無...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―7

    「まだ諦めていない ということですか?  でも、 石切親王は 陛下から 太政(だいじょう)大臣になって 政務を助けて欲しい という要請をお断りになり、 表舞台から身を引かれた と聞いていますけれど。 ご本人にその気が無ければ、 周りがいくら画策しようとも どうにもならないんじゃ……」「どうなのでしょう。 人の心の中は 誰にも容易に推し量れるものではありませんから、 どなたが何を考えていらっしゃるものやら 分かり...

  • カテゴリーをツリー化しました

    <PCで読んで下さっている方へ> 画面の上の方が真っ青になってきたので、 カテゴリーをツリー化しました。 すっきりしたのではないかと思います。 いつも読んで頂いて ありがとうございます。...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―6

    「もちろんです。 ここを何処だと思っているのですか。 権力を手に入れたがっている方など 珍しくもなんともありませんことよ。 むしろ 独創性に欠けると言っても良いくらいに ありふれていますわよ。 四年前にだって、 朝廷が 真っ二つに分裂しそうになったではありませんか」 先の帝が 北山に館を建てる計画が漏れ、 退位しようとしていることが明るみに出た時、 次の帝をめぐって 朝廷の意見が割れた。 当時 東宮だった今...

  • 違う名前で出ています

      本名は シネラリア(cineraria)と申します。  だけど お花屋さんでは、  読み方を変えて、サイネリアにされちゃいました。  シネは 縁起が悪い感じがするかららしいです。  ああ、こんなところにまで言葉狩りが……(笑)...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―5

     三匹のうち 尾黒(おぐろ)という名の猫が、 高貴な生まれのはずなのに 気性が全くの野生である。 庭に訪れる小鳥のうち何羽かが 油断した隙に襲撃され、 無残な最期を遂げた。 内裏からは ネズミが姿を消した。 後始末をさせられた女官たちの顰蹙(ひんしゅく)をよそに、 文字通り猫可愛がりをしている木五倍子は それさえも自慢で、 小さな狩人などと呼び、 事あるごとに ますます自慢が増え、 ついには 紅椿(こうちん)殿...

  • お知らせ と ちょっとしたこと

     雑文が増えてきたので、 試しにブログ村のカテゴリーを一部変更してみました。 なので、バナーも一部変更しました。  それはともかく、国会中継って、色々飛び出して面白いです。 先日、阿部総理が、朝日新聞の人から 「阿部政権を倒すのが、朝日の社是です」と言われたらしいです。 「社是でも何でも良いですけどね」と、阿部総理は笑っていましたが、 聞いていた私はびっくらこきました。 いやいや、国民の多くは、新...

  • チョコレートと子どもの宝物

     以前の記事で、 ある理由があって、 大好きな明治の板チョコを しばらく買っていない、 と書きました。 今日は、 その「ある理由」を書こうと思います。 コマーシャルに 腹が立ったからです。 たいした理由ではありません。 小さな男の子が、「半分こ」と言いながら、 クレヨンをポキポキと折る。 最後に、「半分こ」と言って、 折ったチョコを 妊娠中のお母さんに渡す。 そういうコマーシャルです。 かなり長い間放映...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―4

     真咲の姉花澄は 女蔵人(にょくろうど)として内裏に居る。 官位は低いが、 女官の筆頭に当たる 尚侍(ないしのかみ)の カッコよく言えば 秘書のような仕事、 ありていに言えば 雑用係をしている。 内裏の中の何処をうろついていようとも 目立たない上に 不審がられることはない。 お役目で動いているのだと思われるだけである。 ちなみに、 内裏では卯白(うしろ)の女蔵人と呼ばれている。 まずは 手近なところから始めると...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―3

    「さすがに広いわ。 敷地は どれくらいあるのかしら。 建物の外観も美しいのでしょうね。 じっくりと 広さと美しさを感じてみたいものだわ。 塀伝いに ぐるりと回りましょう」 勇んで歩きだした三人だったが、 いくらも進まないうちに、 今度は あっさりと見つかってしまった。 初老の男が駆け寄って、 深々とひざまずいたのだ。「皇子様、 皇女様、 御用がございましたら 係りの者を差し向けます。 先日のこともありますゆ...

  • 馬十の辻に風が吹く 第二章―2

     裏からのぞく びっくり内裏めぐり。 そんな感じだ。 庭木の陰を移動したり、 渡殿(わたどの)の下をくぐったりは 当たり前。「あのう、 殿下。 何故 縁の下を通らなくてはいけないのかしら」「決まっている。 おもしろいからだ」 おかげで、 表から堂々と行ったのでは 決して分からないだろう通り道や、 下働きの人たちの怪しい噂話まで もれなく付いてくる。 あまり使われていない納戸(なんど)の中を 突っ切ったりするのだ...

  • 参政権は ものすごく大事なんだと思うわけで

     世界を見回しても、 外国人に国政の参政権がある国は、 グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国などの、 ごく一部の 特殊な例を除いては、 ほとんど見当たりません。 なぜ、 イギリスではなく、 グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国 という正式名称にしたのかというと、 そこに 分かりやすく 特殊事情が見えるからです。 アイルランド島は 北海道と同じくらいの大きさです。 北部の一部に イギリスが食...

  • 馬十の辻に風が吹く――登場人物

       ※物語が進むにつれ、追加していきます。<真神門(まかみかど)一族> 真咲(まさき)―― 体術は得意だが、呪術には自信が無い一族の姫。 太久郎(たくろう)―― 真咲の兄。 背衛(そともり)―― 真神門の当主。 阿久り(あぐり)―― 背衛の妻。真咲たちの母。 花澄(かすみ)―― 真咲の姉。宮中では卯白(うしろ)の女蔵人と呼ばれている。 飛丸(とびまる)―― 真咲の弟子。少年。<帝の家族> 桜子皇女(さくらこのひめみこ)―― ...

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とりあえず女です。
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