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2013年09月のエントリー一覧

  • 薬種狩り 九の4

    《青緑茸《あおみどりたけ《があれば、 助けられる》 その場にそぐわない 陽気な声を上げたのは天狗だった。 もの問いたげに振り向いた衣都に応えて 説明する。《少しだけ緑色がかった 青いちっさい茸《きのこ《だ》「そんなの、 聞いた事が無いぞ。 衣都は知っているか」 穂田里が 大声で反応した。 衣都は かぶりを振る。《土気の病だけではなく、 いろんな病にもよく効く薬だが、 んーと、 五、 六十年ほども前になるかな...

  • 薬種狩り 九の3

     声を掛けたが 返事が無かった。 怪我の様子を考えれば、 摩周が まだふせっているはずだ。 留守にしているはずはないのだが、 と首をひねり、 もう一度 声を張り上げようとした時、 中から 呻き声に重なって 押希里の甲高い叫びが聞こえた。 驚いて 扉を開けて入ると、 初老の男の襟首《えりくび《をつかんで 睨みつけている押希里が、 さらに叫ぶのが見えた。「なんで助けてくれないんだら。 こんなに苦しそうなのに 何...

  • 薬種狩り 九の2

     導師が おごそかに頷くのを見て、 玲は続ける。「悪を遠ざけよ。 暴力を以って 諍《いさか《いの解決を図ろうとする者を遠ざけよ。 慢心を遠ざけよ。 繰り返し書かれた『遠ざけよ』を数えてみたら、 百八もあった。 九日毎に 村民がうんざりするほど聞かされている言葉だ」 導師は片眉を上げ、 「数えたのか」 とあきれ顔で答えた。「客観的に資料を分析するには、 鍵になるものを見つけて 具体的に数値化し、 検討すると...

  • 薬種狩り 九の1

     佑流は叱られた。 それはもう、 こっぴどく。 村中から叱られた。 導師の怒鳴り声から とっさに逃げた行為は 防衛本能だから仕方が無いとしても、 その後 いたずらに保身を図るあまり、 子供たちの指導を怠り、 摩周が行方不明になっている事にも気付かなかったばかりか、 重要な手掛かりを握ったまま、 のんきにコソコソしていた事を めいっぱい叱られた。 急に不機嫌になった玲から逃れようと、 外に出てきた穂田里が...

  • 薬種狩り 八の6

     明日妥流は 櫓に登ろうとしていた村長を捕まえ、 事の次第を告げた。 村長が すでに櫓の上にいた導師に合図を送ると、 導師は すぐさま大声で叫び、 村人たちの様子が一変した。 群衆の中から 七人の男女が人々を掻き分けて櫓に近づく。 途中で おろおろしていた佑流を見つけた一人が、 ついでとばかりに 引っ張って櫓に上がり、 導師を交えた九人が 代表して日暮れの儀式を始めた。 残りは 村長がかき集めて、 捜索隊を...

  • 薬種狩り 八の5

     導師が 三人との話を打ち切った。 しかし、 やはり教導が居ない。 村内を迷走しているのか、 職場放棄に気付いて どこかで落ち込んでいるのか、 佑流という教導は、 いまだ行方不明のままだった。「今日も手伝うよろし」 また、 いいように使われそうだ。「あれ、 衣都さんたち。 まだ居ただか。 何しているだか」 子供たちの中から、 柚希里が 驚いたような声を上げた。「臨時の先生だ。 摩周から聞かなかったのか」 衣都...

  • 薬種狩り 八の4

     成り行きで 先生を務める羽目になった。 玲の字は きれいだ。 穂田里の字は 豪快だが、 それなりに しっかりしている。 衣都の字を見た導師は「おまんは子供らと一緒に練習するがよろし」と断った。 衣都が 筆記用具を借りて練習していると、 隣からこっそりと声が掛かった。「ちっこいの、 探し物は見つけただか」 摩周だった。「まだ」「ふううん。 わいが手伝ってやろうか」「いい」 肝心の山に入れそうにない。「まだ...

  • 宙に浮かぶ白い点々を見た

    興味を引かれた事を、 試しに ちょこっとやってみる。 よくあることである。 ある時、 書店で 気功の入門書のような本を、 衝動買いしたのであった。 読みながら、 やってみた。 まずは 呼吸法である。 毎日やれと書いてあったので、 毎日した。 読み進めながら、 ゆっくり体を動かしたり、 イメージしてみたり、 くりかえし読みながら しばらくの間やってみた。 特に変化は感じられない。 休日に、 朝から 真面目に一通りしてみた...

  • 薬種狩り 八の3

    「村長、 頼みがある。 気を悪くした人が居たみたいだが、 偉そうな態度は 玲の地だ。 権威を嵩に従わせようというんじゃないんだ。 帝は 安易にどうでもいい勅命を出す方ではない。 ただ事ではない事態に陥っているのは確かなのだ。 朝廷も せっぱつまっている。 手をこまねいていては、 大勢の命にかかわる。 西にある寝床山とかいう山に 探している薬草があるかもしれないのだ。 協力してくれ」 ふんふんと聞いていた...

  • 薬種狩り 八の2

    「教えの書には、 わいらが より良き生を全うする為に、 遠ざけなくてはならぬ悪しき事柄が ことごとく書き記されておるのだ。 『美辞麗句で惑わそうと近付く者を 遠ざけよ』 『ねえ、 今晩お暇?  あたし寂しいの。 あっためて欲しいわぁ~ん。 などと色気で惑わす 怪しい女を遠ざけよ』 わいら自身を守り、 一族の誇りを守る為に、 心して あらゆる悪を遠ざけよ。 いささかでも教えの書に背く事があれば、 日々悔い改め...

  • 薬種狩り 八の1

     茂みに囲まれた小さな窪地に、  まったりと寛ぐ穂田里と しかめっ面の玲が隠れていた。 ガサガサと茂みが揺れて、 衣都が現れた。「駄目だ」 と 首を横に振る。「んー、 連中、 まだ山を見張ってるのか。 すっかり警戒させてしまったな」「こうなったら、 こっそり登るのは難しい。 作戦を変えよう」 玲が きっぱりと言った。「作戦なんかあったのか?」 穂田里の疑問を無視して、 玲は先を続けた。「責任者にあって、 直談...

  • 薬種狩り 七の6

     翌日は 夜明けと共に起きだし、 狩りに行くという明日妥流と 家の前で別れた。 目指すは 西に聳える寝床山だ。《山頂近くに 一番霊気が強い》 という天狗を信じて、 登り口を探した。 神域の結界を表したつもりか。 山裾には 間隔をおいて 様々な形の柱が立っている。 なだらかで こんもりとした姿は 登り易そうに見えた。「ここまで来た道に比べれば、 庭遊びみたいなものだ。 行くか」 穂田里の掛け声で 山に踏み出そう...

  • 薬種狩り 七の5

    「無理にほじくり返した 百年も前の噂だ。 調べてみるまで、 こんな場所に住んでる人間が居るとは 想像もしていなかった。 あなた達は すんごい所に住んでいるんだなあ」「調べたのか」「うん、 めったに無い貴重な薬草を探している。 まだ探していない場所を調べた中の一つが ここだ」「『援けを請うものがあれば、 心を開け。 持てる物を与え、 為せる事を為せ』 と 教えの書にもあるのだら。 別に歓迎している訳でもないだ...

  • 特異点について、恐れ多くも説明してみます

     limeさん へのコメ返で、 数学的に 特異点に居合わせたせいで、 予知夢を見たのかもしてない、 などと勝手な妄想めいた説を 書いてしまったのですが、 ちょっと不親切なコメだったかと思い、 少し説明してみます。 自慢じゃありませんが、 私は 数学で赤点 を取るのを得意にしていました。 その私の説明ですから、 専門的ではなく、 ど素人の説明です。 まず、 遊園地のジェットコースターの線路をイメージしてください。...

  • 予知夢を見ちゃいました。

     死の淵から生還して、 入院することになりました。 少しは回復して、 三人部屋に移ったものの、 身動きできないのは 相変わらずで、 寝たきりの生活が続きました。 暇でした。 寝たままできることは限られます。 本を読んだり、 小さな絵を描いたり、 テレビを見たり、 親が持ってきた 知恵の輪セット に挑戦したりする程度です。 知恵の輪は、 私の頭じゃ無理!  的な、 難解なもので、 時間がつぶせそうではありま...

  • 薬種狩り 七の4

    「ん?  三人?」 指を折って、 首をかしげる明日妥流をそのままに、 どっかと腰をおろして くつろいだ穂田里は、 押希里が台所に引っこんでも 明日妥流にひっついて 離れようとしない子供たちに向かって、 陽気に自己紹介を始めた。「俺らは ヘンな奴ではないぞ。 薬草を探して旅をしているんだ。 たくましくてカッコイイ俺が 穂田里だ。 で、 きれいなこいつが玲。 態度は偉そうだが、 害は無い。 こっちの ちっこくて可...

  • 薬種狩り 七の3

     居心地の悪い沈黙を向けられて、 さてどうしようか と顔を見合わせた二人の頭上から、「うちに泊まるだか?」 と、 とぼけた声が降ってきた。 見上げれば、 皺《しわ《だらけの かたまりが見下ろしている。 皺の中に 目鼻と口があるのを見分けるのには 注意力が必要だった。 櫓の上にいた 小太りの方だ。「おお、 有難い。 頼む。 金はちゃんと払う」 皺だらけと穂田里の のんびりした会話に、 村人の呪縛がやっと解けた。...

  • 薬種狩り 七の2

     初めに見かけた建物に近づき、 声を掛けて見たが 返事がない。 続けて二、三軒、 声を掛けてみたが、 どの家からも返事がない。 横手に回り、 開けっぱなしの窓から中を覗いてみても、 やはり誰もいない。 留守のようだ。 そのままの勢いで 片っ端から目についた家々を次々に当たってみるが、 どれも同じように留守だ。 思い切って 入口の扉を開けてみれば、 特に戸締りもしていなくて 簡単に開いた。 ついさっきまでそこ...

  • 薬種狩り 七の1

     たどり着いた先に、 隠忍の里があった。「地図よりも 西寄りだったな。 状況を考えれば、 このくらいの誤差は 許容の範囲内だ」 木々が途切れた先に 畑らしきものを見た玲は、 面白くもなさそうに断言した。「それより、 こんなところに 人が住んでいる方が驚きだ」 穂田里は 信じられないと言いたげに目を丸くする。 全く隔絶された村だ。 よくもまあ、 長い年月の間 無事に暮らしていたものだと感心するしかない。 改め...

  • 薬種狩り 六の8

    「そうだ!  天狗苺っていうくらいなんだから、 天ちゃんが何とかできないのか?  ちょちょいと生やすとか出来たら、 俺たち 楽できるんだけど」 穂田里が 衣都の肩でくつろいでいでいる天狗に話しかける。《天狗森に生えとったから 天狗苺という名が付いただけじゃ。 わしが作った訳ではない。 そんな事が出来るくらいなら、 わざわざ旅に出る必要は無いわい。 あれは 霊力のある場所にしか生えんのじゃ》 それを聞いた...

  • 死にぞこないの告白

     死にそこなった事があります。 いわゆる、 心肺停止状態です。 心拍も呼吸も、止まっちゃったらしいです。 私のことですが、 最近の事ではありません。 現在は、 一年半近く、 ほぼ毎日のように ブログを更新できるくらいですから、 問題なく生きています。 医療ドラマでは 見慣れたシーンですが、 実際に経験した人は そんなに多くはないと思うので、 その時、 どんな具合だったのかを書いてみようと思います。 なあん...

  • 薬種狩り 六の7

    「おお、 触れるのか。 それでは俺も」 つかもうと手を伸ばした穂田里の鼻先を、 天狗は 残った下駄で 容赦なく蹴飛ばす。 大きなくしゃみが 立て続けに四つ出た。「へえ、 天狗に触ると くしゃみが出るのか」 少し信じかけた玲に、 衣都が答えた。「違う…… と思う」 あっさりした返事を聞いて 冷静さを取り戻した玲は、 危ないところだった、 見えもしないものを簡単に信じるところだった と反省し、 手放そうとした不信感...

  • 薬種狩り 六の6

     衣都が 目を丸くした。「見えるのか」「ん?  おじさん?」 玲には、 何が何だかさっぱりだ。「ってことは、 やっぱり居るんだ。 ちっさいおじさん」 一転して パッと明るい表情になった穂田里は、 衣都の肩に顔を近づける。《こらこらこらあ!  ちっさいおじさんとは失礼千万な。 天狗様と呼べ!》 拳《こぶし《二つ分ほどの小さな天狗は、 赤ら顔を更に真っ赤にして怒鳴り返した。「わっ、 しゃべった」「ずっと見えて...

  • 薬種狩り 六の5

     衣都が ふらりと戻り、 採ってきた木の実や果物と、 持参してきた食料で 朝食を取った。 そこからは しばらく下り、 小さな沢を渡る。 谷川で顔を洗い、 口をすすいだ玲の機嫌も直って、 それまで登ってきた尾根から 隣の尾根に移って登っていった。 見晴らしの良い場所で休憩を取ると、 眼下に 昨日諦めた岩場が見下ろせた。 上った先には さらに大きな岩が切り立っていて、 行く手を塞いでいるのが見える。 無理して登...

  • 薬種狩り 六の4

     もしかして 一人で行ってしまったのか、 と穂田里と玲は 慌てて周りを見回した。 こんな場所に置いていかれたら、 慣れない二人にとって、 何をどうしたらよいのかも分からない。 遭難決定だ。「いっちゃーん」「おーい、 衣都、 出てこーい」 必死に名前を呼んだ。 すると、 下方の岩の陰から ひょっこりと顔を出し、 二人を確認してすぐに消えた。 慌てて追いかけ、 巨岩を回り込むように下ってみれば、 少し開かれて平...

  • 薬種狩り 六の3

     途中の町や村に泊まりながら駆け続け、 五日目の午後遅く「ここまでで良い」と 衣都が一行を止めた。 玲が 懐から地図を出す。「隠忍の里の位置が どこまで確かなのか判らないとはいえ、 ここからでは遠くないか。 もっと近い登り口がありそうだが」「ここ」 衣都は ほとんどの会話を 一言で済ませようとしているかのようだった。 何の説明も無い。 三人は 稲城たちと別れ、 近くの民家に一夜の宿を借りた。 翌朝、 さっそ...

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Author:しのぶもじずり
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