2013年06月のエントリー一覧
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「九徳」って知ってた?
職場の 休憩時間のことだった。 雑談に花が咲き、 「人徳」の話になった。 なぜ、 そんなことになったのか、 経緯は まったく覚えていない。 女子の雑談ネタは 何でもアリの世界だ。 ゴミ処理から、 新発売の家電から、 地域の医療情報、 もちろん ダイエットに、 豪華な海外旅行まで、 なんでも一通り取り揃う。 たま~に、 こういう不思議なネタが飛び出すこともある。 たまたま、 その時 読んでいた本に「九徳」という...
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天州晴神霊記 第八章――8
四郎五郎…… 退魔の剣…… 大男の側近…… 家出……! もしかして 四郎と五郎ではなく、 四郎五郎。 思い出した。 そういえば、 奇御岳の二男は そんな名前だった。「ええーっ」「何を驚いている。 どっちにしろ、 大勢に影響は無い」「あのう、 そういえば、 二郎三郎様は、 生涯不犯の誓いを立てた とかおっしゃっていませんでしたか」「どうせ 実質の伴わぬ婚儀じゃ。 世間は不犯の誓いなど知らぬこと。 名目だけなら、 二郎三郎...
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天州晴神霊記 第八章――7
二五ノ目辻に光石が戻され、 浄石が浄められ、 しっかりとした結界が貼り直されたが、 魔の気配は 日に日に増え続け、 鬼道門は忙しくなるばかりだった。 結局、 自分は 出来損ないの霧呼姫でしかなかった。 化け物にとどめを刺したのは、 一夜姫の「大内裏一周そうめん流し計画」のおかげ というしかない。 危機を救ったのは 自分ではない。 ただでさえ落ち込んでいたというのに、『術者が巨大化しなかったのが、 生彩...
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天州晴神霊記 第八章――6
「あちき以外には しゃべってないと思うよ。 でも、 ほら、 あの人は聞いちゃったかな」 二人が、 写録に気付いた。 神官が慌てる。「困りましたね。 内緒にして頂けますか」 写録は 落ち着いて話しかけた。「私は 探偵をしている写録と申します。 ご心配なく。 言いふらしたりはしません。 亡くなったことは知っています。 ただ、その時の様子を知りたいと依頼を受けましたので、調べています。 依頼人以外には洩らしませ...
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天州晴神霊記 第八章――5
写録は 大神殿の杜を歩いていた。 現場検証と、 発見者の聞き取りの為である。 ふかふか座布団探偵のする事ではない。 何故 こんなことになったのか と、 内心 忸怩(じくじ)たるものがある。 これでは、 草履を履きつぶしてなんぼの、 そこいらの探偵と変わりがないではないか。 しかし、 今回ばかりは 事件の周辺が広すぎて、 座っているだけでは らちが明かない。 出不精なはずが、 どうも 近頃は出歩くことが多くなっ...
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天州晴神霊記 第八章――4
上司に促されているのに、 青梅は ぼうっとして返事をしない。「若人よ、 過ぎ去った事を悩むな。 とっとと前を向け」 ふかーいため息が 返事になった。「あの女は、 斎土府が邪魔くさかったから、 潰そうとした。 老いぼれ神官も見習いも、 寝付きが良すぎると思っていたら、 どうやら 毎晩 一服盛られていたらしい。 唯一の官吏であるそなたも 排除しようとした。 それだけのことじゃ。 斎土府が無くなれば、 配置転換が...
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さよならは アデューじゃないよ
「さよなら」は 寂しくなるから嫌いだ、 そう言う人がいる。 そのまま、 会えなくなるような気がするから、 嫌なんだ。 だって、 もう一度、 いや何度だって会いたいじゃないか。 だから、 私が「さよなら」を言うのは、 二度と こいつとは会いたくない という時だ。 気持ちは なんとなく解る。 でもね、 日本語の「さよなら」は、 フランス語のアデューじゃないよ。 アデュー(adieu)は きっぱりお別れしちゃう意味らしい...
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天州晴神霊記 第八章――3
大内裏の楼門の前で、 写録は 大きく深呼吸を繰り返した。 突然呼び出されて、 こうしてやって来たものの、 身に覚えがない。 吉と出るか、 凶と出るか、 材料が無さ過ぎて、 得意の推理もままならない。 先が全く読めないのは、 どうにも不安だが、 お上に逆うほどの度胸なんか、 ノミのクソほども無い。 諦めて、 震えそうになる足を踏みだした。 吃驚仰天した。 極光殿が壊れたらしい という話は聞いていた。 大内裏...
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天州晴神霊記 第八章――2
大内裏に近い住民が、 燃え上がる怪しい炎を目撃していた。 真夜中の ただならぬ騒ぎにも気付いていた。 あとは、 お察しのとおりである。 それまでは、 単なる噂だと冷静に静観していた人間までが、 浮き足だった。 「なんとなく不安」から 「身に迫る恐怖」へとなだれ込んだ。 魔除けの札が大量購入された。 そんな折に、 長年、 犬猿の仲として有名だった 奇御岳家と鬼道門家の間に、 しごく平和に 縁談が持ち上がっ...
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天州晴神霊記 第八章 催事の後――1
翌日、 大納涼大会は強行された。 はじめは 全壊の極光殿と半壊の朝堂に ため息をつきつつ、 さすがに反対していた朝廷の面々も、 最後は やけくそのドンチャン騒ぎになだれ込んで 盛り上がるしかなかった。「陛下がご無事で 何よりでございました。 いやはや、 大内裏は瓦礫の山です。 化け物退治に利用した竹の樋を そのまま使ってのそうめん流しとは、 成果を喜んでいるのか 傷をえぐっているのか 解りません。 複雑...
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天州晴神霊記 第七章 恋すてふ
身の毛もよだつ化け物によって 極光殿が 跡形もないまでに壊された夏、 帝に恋した乙女、 阿古屋(あこや)が その命を閉じましてございます。 瓦礫にうずくまり、 胸に 黒い匣(はこ)を抱きしめて 事切れておりました。 斎土府に内侍として上がって、 いくらもたたない内のことでございました。 匣の中には 盗まれた光石が入っておりました。 九―九八七番灯篭は、 巽町にある実家の屋敷から一番近い 大路灯篭だったとか。 東...
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天州晴神霊記 第七章――17
勢いよく振り回される霧呼紐に呼び寄せられて、 順調に 霧が流れ込んできていた。 大内裏の建物や 出来たばかりの瓦礫の山が、 白く霞んで見えるほどだ。 しかし、 肝心の化け物には届かない。 渡殿が崩され、 困ったことに 火が付いた。「必殺じゃなかったな」「それでも止めないと。 しょうがない。 突っ込むわ」「気をつけろ。 あいつは出来立てじゃない。 他にも技を持ってるかもしれない」「うん」 二人は、 互いに...
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あやめと花菖蒲は どっちがどっち?
六月だというのに、 関東では雨が降らないです。 お洗濯にはありがたいけど、 暑いです。 もう 夏みたいです。 でも、 植物は間違えていないみたい。 あちらこちらで「あやめ祭り」 という名の 花菖蒲の観賞会が始まっています。 「アヤメ」で画像検索すると、 花菖蒲がいっぱい出てきます。 花菖蒲、 あやめ、 杜若、 いちはつ。 何だか みんなそっくりです。 いちはつは、 一番先に咲くから、 イチハツらしいです。 素直な...
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天州晴神霊記 第七章――16
一方、 二五ノ目辻では、 浄め石に異変が起こっていた。 青梅が蹴りだした守り袋が張り付いたところから、 禍々しい気配が溢れ出ていた。「何だ。 これは! 魔寄せの香が 結界を破るなんて 聞いたことがないぞ」 四朗五郎が、 いち早く気づいた。「私もです。 もしかしたら、 あれやこれやの 不運な偶然が重なっての 複合作用とか……」 閼伽丸が首をひねったが、 そんな場合ではない。「……ああ! 去年の大祓の時、 こ...
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天州晴神霊記 第七章――15
斎布が居れば、 東雲町で魘妖(えんよう)を退治した時の手が使える。 気になるのは、 切った尻尾が 短くなったまま形を変えないことだ。 こいつは 生まれたてではない。 しっかりとした形を得るまでの時を経ている。 それだけ 力をつけているということだ。 油断は禁物だ。 バリバリ ズシン 考えあぐねている隙に、 化け物が 瓦礫の山から一歩踏み出した。「内裏を、 帝を護れ!」 怒号が入り乱れ、 無駄と知りつつ 兵...
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天州晴神霊記 第七章――14
たっぷり神霊水を振りかけた剣を 縦横無尽に振り回し、 行く手を邪魔する蝶モドキを蹴散らしながら、 志信は やっとのことで 極光殿の扉にたどり着いた。 開けば、 広がる暗闇のなかほどに、 ぽつんと一つ、 手燭の弱々しい明かりが見えた。 ごく狭い範囲だけを かろうじて照らす光の中に 浮かぶ人影が、 ゆっくりと振り向く。「失せろ! 邪魔立てするな」 見る間に目がつり上がり、 吐き出された声と共に 唇が大きく裂...
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天州晴神霊記 第七章――13
「えーと、 どちらさんかしら」 輪が 胡散臭いものを見るように問いかけた。「光石捜索の専門家じゃ。 見た目は大いに怪しいが、 怪しい者ではない。 陛下に仕えている十三彦じゃ。 光石とはツーカーの仲らしい。 この者がツーと言えば、 光石がカーと反応する」 一夜姫の紹介は意味不明だが、 その場で問いただす余裕はない。 異変の最中だ。「だいぶ違いますが、 詳しく説明することはできませんので、 それで良いですぅ...
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天州晴神霊記 第七章――12
いつもは 東宮殿に近い暁明門から入れてもらう手はずになっていたが、 障害物を避けて進む一夜姫を追う内に、 内裏の正門、 健令門の近くに出てしまった。「真夜中にならないと、 出てこないと思うぞ」「では、 あれは何じゃ」 健令門のすぐ南、 大内裏の奥中央に建つ極光殿の陰から、 見慣れた青白い蝶が一匹、 姿を現していた。 志信もすぐに気がついた。「あれっ、 なんか、 いつもと感じが違うな」 もはや 蝶に似せる気...
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天州晴神霊記 第七章――11
「あの蛾、 見かけによらず すばしっこいぞ」 短い夏の夜とはいえ、 まだ宵の口である。 輪と志信は ひと気の無い斎土府に居た。「だから、 『良し』と云うまで 勝手に動くなって言ってるでしょ。 『待て』もできないんじゃ犬以下じゃないの。 まったくお調子者が」「じゃあどうするんだよ。 虫が苦手のくせに」 真夜中を待つ間を持て余し、 恒例の罵り合いで時間を潰す二人だった。「こっちだってちゃんと考えてあるのよ」 ...
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アウトレイジ ビヨンド を観ちゃいました
「アウトレイジ ビヨンド」を観ました。 事情があって 映画館に行けなかったので、 DVDで観ました。 映画館で観たかった と思いました。 最初のアウトレイジより面白かったです。 大きなストーリーの流れに沿って、 テンポ良く、 次々とエピソードが盛りだくさんに叩きこまれていて、 最後の場面で、 えっ、 この終わり方? でも、 スカッとしました。 ビートたけしの登場シーンは少ないのに、 最後の最後で、 良い...
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天州晴神霊記 第七章――10
少し離れた場所に立っていた閼伽丸は、 苛立っていた。 魔寄せの香につられて 湧いてくる妖魔を、 片っぱしから元気に退治している四朗五郎の活躍を眺め、 成すすべの無い己自身に 苛立っていた。 火照りの剣を強く握りしめる。 《守れ》の一言と共に 二郎三郎から授けられた時、 誇らしい気持ちで 胸がいっぱいになったことを思い出すと、 今の自分が情けなかった。 守れていない。 握りしめた剣を引き抜き、 渾身の気...
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天州晴神霊記 第七章――9
残った六人が夜空を見上げているうちにも、 妖魔は一匹、 二匹 と集まって来ていた。「こりゃいかんな。 せっせと片付けないと 洛中に溢れ出す」 孤軍奮戦し始めた四朗五郎を見やって、 管虫が感心したように言う。「邪気祓いのできる人って、 斎土府と神官以外にも居るもんなんだねえ。 しかし、 患者を斬るわけにいかないしなあ。 あの人は 治療には役に立たないなあ」「邪気祓いに関しては、 斎土府は当てにしないでくだ...
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天州晴神霊記 第七章――8
雅彦君の目の色が変わった。 声も慌てふためいて 悲鳴に近い。 斎布と、 手持無沙汰で辻に立っていた閼伽丸と、 妖魔を一匹片づけたばかりの四朗五郎が 駆け付けた。「どうしたの」「内裏近くの光石が、 真緑色に変わっています。 こんなに濃い色は初めて見ました。 内裏で 大変なことが起こっています。 霧呼様行ってください」「これは、 星都の上空なのか。 どういう仕掛けだ」 四朗五郎と閼伽丸が、 目をまん丸に見開...
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天州晴神霊記 第七章――7
「残念ながら、 私は、 内裏はおろか 大内裏に行ったこともないので、 何処に使える水が在るのか、 お二人が 何処にいらっしゃるのかも見当がつかないのです」「じゃあさ、 片っぱしから内裏のあちこちから 大声で業務連絡を放送するっていうのはどう?」「大がかりな幽霊騒ぎになって、 私がお役御免になるのが決定でしょう。 内裏を混乱に陥れては、 ただで済みそうにありません。 それより あずきちゃん。 エダマメは 志...
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天州晴神霊記 第七章――6
雅彦君が難しい顔になった。 普通、 匂い袋は魔除けの為に持ち歩く。 良い匂いは 精神を落ち着かせ、 邪気を寄せ付けないものなのだ。 逆に、 嫌な臭いが邪気を招き寄せることもある。「不思議な香りだが、 嫌な臭いではなかった。 間違えちゃったのだろうか」 首をかしげた青梅に、 雅彦君は きっぱりと首を横に振る。 めったに使われることがない物だが、 作るのは非常に難しい。 うっかり調香を間違えて出来ちゃいまし...
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天州晴神霊記 第七章――5
路の真ん中では、 断末魔まであと三歩 みたいな 情けなくも必死な、か細い悲鳴をひーひー上げて 逃げ惑う青梅を、 情け容赦なく追い詰める 管虫が居る。 魔封じの光線が途切れた夜の目辻だということを、 完全に忘れているに違いない。 斎布が、二四ノ目辻に通じる方角から 不穏な気配を感じて、 様子をうかがおうと移動しかかった時、 何処から現れたのか 一匹の妖魔が、 変態風にくんずほぐれつしている二人めがけて 飛...
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天州晴神霊記 第七章――4
「き、き、き、消えてます。 光石が一つ 消えてます」 雅彦君が 蒼い顔で報告した。 どさくさまぎれに うっかりしていた。 本来の任務を忘れてしまうところだった残りの五人が 一斉に緊張し、 余分な一人、 管虫を見た。「犯人はおまえか!」 そろって指をさす。「違うってば。 みんな落ち着こうよ。 あちきは 青梅ちゃんが心配で 探していただけなんだってば。 良かった」 管虫が言いながら、 青梅の懐に おもむろに手を...
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天州晴神霊記 第七章――3
しかし、 あれから毎日待っていたのだろうか。「ば、 馬鹿じゃないの。 返事を待てないわけ」 またぎくしゃくしそうになって、 落ち着こうと 斎布は大きく深呼吸をした。「何処に行くのだ。 次の作戦実行か」 『天州晴に平穏を作戦』なら、 まあ、 当たっていなくはない。「二五ノ目辻の光石を調べに行きます」 青梅が 仕事の途中とは思えない のんびりした様子で答えた。 あずきとつないだ手を まだ揺らしている。「ようし...
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リメイクって なかなかに難しそう
過去の名作映画をリメイクする というのがあります。 昔評判になった作品なのだから、 オリジナルは 間違いなく面白かったわけで、 上手くいけば、 美味しいはずです。 でも、 そうは問屋がおろさない。 オリジナルが名作ゆえの難しさがある と思われます。 比べられちゃいますしね。 古い話で恐縮ですが、 黒沢明の 「隠し砦の三悪人」 をリメイクしたのを観ました。 私は、 残念ながら、 オリジナルを見ていないのです...
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天州晴神霊記 第七章――2
「一条路門脇に 『民の声・お届け箱』 が設置してあるのは知っているよね。 そこに 二五ノ目辻の光石が光っていない という投書が入っていたのだ。 それを確かめに行く」「へえ、 誰が届けたの? 届け人には確かめたのかしら」 青梅の言葉に、 斎布は疑問を投げかけた。 『民の声・お届け箱』は 名前の通り、 誰でも朝廷に意見やお願いやらを書いて投書できるが、 住所・氏名・年齢・職業・性別の他に、 何故か 特技及び趣...