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2013年03月のエントリー一覧

  • 天州晴神霊記 第二章――13

    「へえ、 相手は二人連れの男で、 あっという間に叩きのめされました。 とにかく 手当てをしてやってください」「どうせ こいつらの自業自得なんだろ。 悪さばかりしている報いだ」「そりゃあそうなんですが、 こんなところで死なれちゃ 商売の邪魔なもんで。 荒い稼ぎをしようと無茶したみたいですね。 良いカモだと思ったんでしょう。 田舎から出てきたばかりに見える、 呑気そうな 金持ち風ボンボンの二人組みにちょっかいを...

  • 天州晴神霊記 第二章――12

    「残念です。 人気の春風一座も 星都が戦渦に巻きこまれることを恐れて、 東国の町に本拠地を移す という噂もありますし、 寂しくなりますねえ。 まっ、 仕方のないことかもしれません。 ここのところ 不穏な噂も絶えませんから」「狸やバカ殿様の霊のことか?」「何です?  それ。 巨大鰻のような妖魔が、 夜な夜な 大内裏の上をクネクネ飛び回っているとか、 ゴキブリが増えたと思っていたら 実は妖魔だったとか、 裏の畑...

  • 天州晴神霊記 第二章――11

    「でもねえ。 そんな怪しすぎるお妃様をお貰いになって 大丈夫なのかしら。 おかしなことが起こらないといいけど。 心配だわ」 最後は、 ひそひそ声で不安を訴え始めた。「奥さんが四人か。 一人でも大変そうなのに、 すごすぎる。 やはり 陛下は只者ではない」 志信は、 ブルッと身を震わせた。 代々 女領主が治める地、 水輪繋で生まれ育った志信にしてみたら、 四人もの奥さんと暮らすなど、 とてつもない難事業にしか思...

  • 天州晴神霊記 第二章――10

     ぶらぶらと見物をしているうちに、 渇いた季節は過ぎて 湿気が増え、 むしむしする本格的な夏に突入していた。 これでは 単なるお上りさんの都見物だ。 気がついた斎布は あわてた。 星都の地理には詳しくなったが、 作戦は何も進んでいない。「気になっているところがあるんだけど。 火伏せ神事の後で行った町、 孔雀町って言うんだっけ。 途中で雨に降られたから、 ほとんど見物出来なかったわ。 続きを見たい」 何かあ...

  • 天州晴神霊記 第二章――9

    「どうですか。 ドキドキしませんか」「何がです?」「おかしいなあ。 危ない目に逢って助けてもらったら、 恋に落ちたりとかしませんか」「はあ、 そうなんですか」「そうなんですよ。 そのはずなのですが、 近頃の女人は うまくいきませんねえ。 また失敗ですか」 どうしよう。 分からない。 斎布の頭の中が ぐるぐるになってきた時、 パシャパシャと足音が聞こえて、 やっと志信が戻ってきた。「霧呼様、 傘を借りてきたぞ...

  • 天州晴神霊記 第二章――8

     男は 新しくはないが 上品な柄の上物をまとっている。 しかし、 片手を懐に隠したまま、 狩衣の盤領(まるえり)も 随分横にずれた崩した着こなしが、 それを台無しにしている。 下は 身軽な狩袴。 烏帽子も着けず ぞろりと垂らした髪は、 肩口のあたりに 紅布(もみ)の切れ端で適当に括ってあるだけだ。 世間に対して斜めに構えている感じがする。 あまりまっとうな人間には見えない。 こういう知り合いは いない。「ちっ、...

  • 天州晴神霊記 第二章――7

     一人残されてみると、 なんとも怪しげな街角である。 にぎやかな表通りの影に ひっそりと身をすくめているような、 それでいて 油断なく何かを待ち受けて狙っているような、 剣呑(けんのん)な雰囲気を感じて、 斎布は居心地が悪くなってきた。 志信を無理にでも引き止めればよかった。 衰える気配もない雨を眺めて、 気温が下がったせいばかりでもなく 身震いをした時、 ガタンと音がして、 飲み屋の戸が開いた。 あばた...

  • 天州晴神霊記 第二章――6

     斎布が 何の足しにもならないことを ぐるぐる考えているうちに、 厳かな中にも華やかな行列が 大神殿の門に消えて、 太鼓の音が響き、 神事が始まったことを伝えた。 集まった参詣人達も 拝殿に向かって祈りを捧げる。 火伏せ神事だというのに「戦争(いくさ)が起こりませんように」とか「星都が戦火に見舞われませんように」とか 祈っているところを見ると、 やはり 海辺の争いが 人々の心を不安にさせているのだ。 厄除け...

  • 犬派のねこまんま 26である     byねこじゃらし

    <花見なのだ> 吾輩が八歳、 妹が三歳。 記憶を検証すると、 そういう勘定になる。 一家そろって 花見 に行ったのだ。 地図の読み方もろくに知らず、 自由意思で移動することも ままならない年齢である。 親に連れて行かれたのは、 大きな川の河川敷のような場所であった。 もしかしたら 信濃川かもしれない。 広々と続く場所に、 見渡す限り、 桜、 桜、 桜……。 あっちもこっちも 桜だらけだった。 桜の下で弁当を食べ...

  • 天州晴神霊記 第二章――5

     星都の中央、 五本の都大路で区切られた五角形は 中町。 翌朝、 二人は中町の中心にある 大神殿を目指した。 旧家の大きな屋敷を横目で過ぎ、 洛中警邏隊の本部前を通り、 草木と花に彩られた おしゃれな遊歩道を抜け、 木の間から見える 公立学問所をやり過ごせば、 しんとした神域の杜(もり)に着く。 高く張り巡らされた石垣の上から 大神殿の大屋根が見えた。「もう、 火伏せ神事の季節なのね」 しとしとと降り続く雨が...

  • 天州晴神霊記 第二章――4

    「帝って どんな方なのかしら」「俺も会ったことがないから、 宮中のお姉さん方に聞いてみたんだ。 でも みんな笑い転げるばかりで、 よく分からなかった。 変な人らしい。 あっ、 そうだ。 大きな神事の時には、 宮中から大神殿までの短い道のりを 行幸(ぎょうこう)なさるらしいから、 輿に乗ったお姿が 拝見できるらしいぞ。 近々なんかあったような気がする。 なんだっけ」 思い出せない志信は 簡単に諦めると、 通りかか...

  • 天州晴神霊記 第二章――3

     帝が発案した『仲良しこよし計画』を知る者は、 当事者以外にほとんどいない。 国家極秘計画である。 故に、 今回の上洛は、 お忍び都見物ということになっている。 実質は たいして違わないと千勢は踏んでいる。 それはともかく、 斎布が出かけたい と言うと、 侍女が身支度をしてくれた。 白い小袖に浅葱の袴、 髪は一つに括られる。 一見して 地方から出てきた巫女に見える。 何故地方なのかというと、 星都には 巫女...

  • 天州晴神霊記 第二章――2

     さて、 表向き 屋敷を取り仕切るのは宗靭だが、 鬼道の役目を担って、 叔母にあたる 輪(りん)が居た。 星都の邪気を監視し、 妖魔を退治する役目だ。 幼い頃には遊んでもらったこともあるが、 都で役目に就いてからは ほとんど会っていない。 久しぶりだ。 輪にも挨拶をしようと顔を出した。「あら、 来たのね。 出来損ないの霧呼姫が」 輪が面倒くさそうな目つきを投げつけて 口を開いた。 いきなりのことに唖然として、 ...

  • 天州晴神霊記 第二章 星都――1

     魔性のものは、 線を与えられると 辿(たど)らずにはいられないという。 線と線が交差するところには 捕らえられて 動けなくなるという。 線と線の交点を『目』と呼ぶ。 星都は その名の通り 星の形をしている。 都大路が 五芒星に走っているのだ。 西から まっすぐ東に向かうのが 一条大路。 そこから 南西に向かうのが 二条大路。 さらに都の北、 大内裏を目指して 北北東に走るのが三条大路。 南南東に向かう 四条大路...

  • 仙台の三奇人

     戦前の仙台に、 「三奇人」 と呼ばれる人たちが生息していたという。  定山(ていざん)めっこ  福ちゃん  から傘婆(ばばあ) そう呼ばれていた彼等の本名を、 いったい どれだけの人が知っていただろうか。 たぶん、 ほとんどは 知らなかったろう。 とその人は言った。 斯く言うその人も、 知らなかったらしい。 定山とは、 仙台の人間なら だれもが知っている。 定山公、 伊達政宗の事だよ。 ほら、 定山公は片目...

  • 御礼!!!

    「天州晴神霊記」の第一章が終わりました。 気がつけば、 カウンターが 五万を超えていました。 こんなにたくさん来て頂いたと思えば、 感無量です。 来て下さった皆様に、心よりお礼を申し上げます。 これから、 第二章、 第三章と続きます。 今後も 引き続きご愛顧を賜りますよう、 隅から隅まで、 ずずずい~と、おん 願い あ~げ たてまつりますー。 特に お礼企画とかありません。 自分、 不器用なもので……。 そ...

  • 天州晴神霊記 第一章――14

    「では、 護衛と案内に 颯(はやて)をつけよう」「は、 は…や…て…… は ちょっと。 華やかな都では、目立ち過ぎるのじゃないかしら。 そうだわ、 志信(しのぶ)がいいわ」 斎布は 颯が苦手だった。 背も高く、 引き締まった体と苦みばしった精悍な顔は、 人によってはいい男と思うだろうが、 いかんせん、 無口で ほとんどしゃべるところを見たことがない。 無口な大男は、 都では浮いてしまって 目立ちまくりになりそうだ。 ...

  • 天州晴神霊記 第一章―13

     斎布はそれまで、 ほとんど わがままを言ったことがなかった。 声高に主張することもなかったから、 千勢は 領主の姫として生まれ育った事の立場を 承知していると思っていた。 ありていに言えば、 扱いやすい子だった。 だからこそ 帝の提案を受けたともいえる。 千勢は 領主だが母親でもある。 我が子に無理をさせたいわけではない。 斎布なら大丈夫 と思ったのだ。 急に変化を見せた娘に、 千勢は改めてじっくりと目...

  • 天州晴神霊記 第一章――12

     やっと姉の言った意味に気づいた、 間抜けで お子様な斎布だった。 いつも八箭にはしてやられる。「そういうことだ、 斎布。 どちらに転んでも、 そなたは行くことになる。 しかし 居候も預かろう。 ものごとは 偏(かたよ)らぬに越したことはない」 奇御岳に借りを作るのは 真っ平だが、 貸しを作るのも鬱陶(うっとう)しい。 後の為にも、 つまらないことを残したくないと、 千勢は考えた。 斎布がむっつりしていると、 ...

  • 天州晴神霊記  登場人物紹介

    《鬼道門(きどうもん)家 と 水輪繋(みなわつぐ)の人》  斎布(ゆう) ―― 十四歳。 鬼道門家の次女。            政略により、 仲の悪い奇御岳家の後継ぎと 偽装結婚をさせられることに。  千勢(ちせ) ―― 鬼道門家の当主。 冷ややかな美貌の美女。  八箭(やや) ―― 十七歳。 後継ぎの長女。 ほんわりと柔らかな、天女とたたえられる美少女。            六郎太と偽装結婚をすることに。...

  • やっと主人公が登場しました

     「天州晴神霊記」ですが、 第一章が終わりそうなところで、 やっと 主人公(かもしれない)人物が登場しました。 これは 初めてです。 なかなか出てきてくれないんだものなあ。 まあ、 書いているのは私ですけど。 良いんだろうか、 と作者も心配しています。 そういう訳で、 少し長めの話になりそうです。 そろそろ、 <登場人物紹介>のページを作ります。 今までは 登場順に書き足して 作ってきたのですが、 いつも...

  • 天州晴神霊記 第一章――11

    「橋の件については、 遠からず 話が持ち上がるとは考えていましたけど、 婿取りがくっついてくるとは 思いもよりませんでしたわ」 おっとりとした口調で、 長姫 八箭(やや)は わずかに目を見開いた。 鬼道門家の領主 千勢は、 星都で 橋の建設にかかわる手配をはじめ、 あれやこれやの仕事を 留守居役の松毬(ちぢり)宗靭(むねゆき)に申しつけた後、 領地の城に戻ってきていた。 鬼道門の領地 水輪繋(みなわつぐ)は、 他...

  • 天州晴神霊記 第一章――10

    「陛下。 この書類に御璽(ぎょじ)をください」「よしきた。 そーれ」 ぺたん。 帝は景気良くハンコを押した。 相変わらず いいかげんにしか見えない陽気な態度で 政務をこなしている。「奇御岳と鬼道門の当主たちから 報告が来たようですね」 御璽を貰いにきた官吏が下がるのを待って、 鹿杖が話しかけた。 両家と密談を交わしてから 一月近くになる。「来た来た。 橋を架ける場所の選定やら 橋大工探しやらも始まり、 いよい...

  • 天州晴神霊記 第一章――9

    「待ちや」 もうすぐ門だというところまで来て、 またもや呼び止められる。 氷のように冷ややかな美貌に、 思わず後退りしてしまった。 身なりと態度から、 女官にも召使いにも見えないが、 場所柄を考えれば 『偉い人』に間違いない。 後ろに 豪華な輿も控えている。 思い当たるのは、 どこかの女領主か。「先ほど盗み聞きをしていた輩だな。 気配が同じだ」 だから、 何でばれるんだよ。「ひえーっ。 ま、 迷って通りかか...

  • 天州晴神霊記 第一章――8

     見習い神官は 散々迷って、 ようやく役目を果たし、 帰途に就こうと建物を出た。 忙しげに行き交う人々が 今になって 湧いて出たようにたくさんいるが、 大内裏は広すぎて、 混雑はしていない。 見渡せば、 ちゃんと門が見えるから、 大丈夫、 帰れそうだ。 思い返せば、 変な話を聞いたような気がする。 あれは何だったのだろう。 ちょっと気になるが、 聞かなかったことにしよう。 嫌な予感がする。 忘れてしまおう。 ...

  • 天州晴神霊記 第一章―7

    「何処が一件落着ですか」 二人揃って、 異口同音に噛み付いた。「奇御岳から 居候を一人鬼道門に預ける。 鬼道門から 姫を一人奇御岳に預ける。 一件落着ではないか。 めでたし、 めでたし」 二人は 苦い顔をした。 帝にしてやられた感が否(いな)めないが、 双方とも 我が子を気に食わない相手に預けたくないのだから、 一組では話がまとまるはずがない。 他に方法は、 たぶん無い。 四郎五郎と八箭は世継ゆえ、 他家には...

  • 天州晴神霊記 第一章――6

     赫衛は 落ち着いて答えた。 紫水川は 少しさかのぼれば、 妹背川と名を変える。 地歌(じうた)の一節にも歌われて、 その名も広く知られていた。    間を流れる 妹背川   日毎夜毎に 願っても   想い届かぬ 暴れ川 上流にありながら 四季を通して豊かな水量と広い川幅を持ち、 しかも 激流がほとばしる流れは、 よほど水練に達者なものにさえ 泳いで渡ることは難しく、 船を操れる者も少ない。 両家のいきさつか...

  • 天州晴神霊記第一章――5

     以前、 朝賀(ちょうが)のため 都を訪れた二郎三郎を垣間見た女たちが、 老いも若きも 次々失神する という騒ぎが起こっていた。 その美しさは常識はずれ とたちまち評判になり、 都にある奇御岳屋敷に、 一目見ようとする人々が男女にかまわず押し寄せ、 黒山の人だかりで大混乱になった。 噂は噂を呼び、 今や天州晴一の有名な男 と言っても過言ではない。「余も東宮も、 国中の役者たちもわりを食った。 冗談みたいに美...

  • 天州晴神霊記 第一章――4

     奇御岳赫衛(かくもり)と 鬼道門千勢(ちせ)は 脇殿になっている小さな部屋に通された。 同じ部屋に通されても、 互いに視線も交わさず 会釈もなければ もちろん会話はない。 そもそも、 両家の当主が同席することなど ありえない事態だったが、 帝の直筆の文を貰えば、 従わないわけにはいかない。 やって来たものの、 互いに完全無視の態勢だった。 そんな二人を、 帝はニコニコ見比べる。「考えたら、 二人一緒のところを...

  • 天州晴神霊記 第一章――3

     帝自ら、 個性的な字を すらすらと書き並べて文を書いているところに、 別の侍者が 大神官の来訪を告げた。「新しいご神託でも出たのかな」 帝は手を休めて、 顔を上げる。 大神官を務める 意富美(おおび)は 帝より二歳上だが、 十歳も年上に見えるのは 白髪頭のせいだ。 けっこうな年のくせに 黒々とした髪を持つ帝と相対すると、 落ち着いた物腰といい、 堂々とした態度といい、 十倍も偉そうに見える。「ご神託を受けな...

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