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2012年10月のエントリー一覧

  • くれないの影 第六章――4

     土岐野の声に驚いたのは、 賊ばかりではなかった。 鹿の子も驚いた。 話が違う。 その日の午後、  大きな荷物を抱えて こそこそと歩く隼人を見つけた鹿の子は 声をかけた。 荷物は、 たくさんの握り飯だった。 二つ分けてもらい、 夕飯には手をつけるな と注意され、  今夜 離れで騒ぎが起こると教えられた。 賊を離れにおびき寄せ、 一網打尽にする予定だったのだ。 鹿の子の部屋は、 その夜、 一座の面々の避難場所に...

  • くれないの影 第六章――3

     土岐野は 袿(うちぎ)をするりと脱ぎ捨て 立ち上がると、 腕を伸ばして 長押(なげし)の薙刀(なぎなた)をつかむや、  一気に障子を開け放った。「何者!」 一人、 二人、 三人、 四人、 五人とも 見たことの無い顔だ。 土岐野を見て 全員が抜刀した。 誰何(すいか)に応える者もいない。 土岐野は 油断なく薙刀を構えて、 庭に降り立った。 力量が同じならば、 長い武器は おおむね有利に働くが、 狭ければ逆だ。 部屋に...

  • くれないの影 第六章――2

    「うまくいったようだな。」 頭目とおぼしき男が 辺りの様子を確かめて、 かたわらの男に 囁(ささや)く。「当たり前だ。 ぐっすり眠ってる」 答えたのは、 昼間 火事見舞いに来た男だった。 しゃがみこんで、 門柱にもたれかかって眠る門番のおでこを ぺちゃりと叩く。 声を潜めてもいない。「おい、 余計なことをするな。 起きたらどうする」「大丈夫さ。 このくらいじゃ起きねえよ。  よく効く眠り薬を、 たっぷりと水がめ...

  • くれないの影  第六章 月下に舞う――1

     国司の使いだと名乗る男が、 領主屋敷を訪れた。 四十歳ほどの 落ち着いた男が一人。 無事を祝う口上と、 火事見舞いの品を持ってきたという。 使いの男は、 敷地内の奥に建つ別棟に案内された。 其処を 綺羅君と焼け出されて行き場の無い四人の召使い、 実は軽業師たちが使っている。 新しく流人屋敷が用意できるまでの 仮の住まいであるから、 家中の者どもは近づくな と命じられて、 余人が立ち入ることの無い 静かな一...

  • くれないの影 第五章――12

    「煌めきの君が 現れたらしい。 弔いをあげ損なった」 いやそうな口調とは裏腹に、 表情も 態度も さりげない。 言われた男の方も、 表情を変えなかった。「我らも それを聞き、 帰途急ぎ引き返して 真偽を確かめましたが、 本当のようです」 淡々と報告を告げるのみだ。「しぶとい方だ。 春に西外れの舞台が 火の気も無いのに焼けたのを幸いに、  たちの悪い夜盗の仕業として収めたが、 生きているのでは 仕方が無い」 口...

  • くれないの影 第五章――11

     白菊は 心引かれる若君に出会った。 二年半前のことだ。 胸の底から熱くなる想いを、 その時 生まれてはじめて知った。 身を焼き尽くすほどに焦がれた。 離れ離れに引き裂かれて 逢えないのなら、 かえって耐えられただろう。 想いを胸に秘めて生きることも、 白菊になら できたかもしれない。 だが、 近くにあって 義姉と呼ばれることには、 到底 我慢できるとは思えなかった。 そんな折に、 突然、 父が逝った。 あの...

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Author:しのぶもじずり
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