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2012年07月のエントリー一覧

  • くれないの影 第一章――8

    「昨夜は 当家の者が迷惑をかけた。 お屋形様がお呼びだ。 一緒に来てもらおう」 どうなるのだろう。 責められるのだろうか。 でも、 迷惑をかけたということは、 怒っていないのだろうか。 何にしても 行きたくない。 怖い。 鹿の子は 必死に首を横に振った。「とにかく 来い」「親方に許しを得ないと、 勝手に行けません」「我らから話しておく。 軽業師風情(ふぜい)が 断れぬ」 いきなり 朽葉色の被衣(かづき)を頭から...

  • 犬派のねこまんま 13である        byねこじゃらし 

    <ふたたびの 金魚> 前回、 途中で 牛に乗っ取られたので 、再び金魚である。 夏は、 金魚の季節なのだ。 池は 屋外にあった為、 木の葉やその他、 何処からか飛んでくる物などが入り、 汚れたりする。 水が濁ると、 せっかくの金魚が 見えにくい。 ある日、 父が 池の掃除を思い立った。 カルキを含む水道水は、 人間が飲むためには 安全で有難いが、 いきなり金魚では、 死んでしまう。 まず、 入れ替え用の水を 確保し...

  • くれないの影 第一章――7

     鹿の子が 舞台裏の通用口に戻ると、 囃子方(はやしかた)の 権佐(ごんざ)が居た。 太っているせいで、 万事 動きが鈍いが、 耳聡(みみざと)い。 音に気づいて 様子を見に出たのだろう。「何があったんだい」「うん」 と生返事を返して 通り過ぎる鹿の子を、 あきれたように目で追い、 戸締りを確かめると、 首をかしげて呟いた。「……狐にでも 化かされたのか」 ぼんやりと筵に座り込んだ鹿の子を見て、 都茱が 藤伍を呼んだ...

  • くれないの影 第一章――6

    「どうしたんですか。 人を呼びますから しっかりして」 だが、 女は 片手で鹿の子の足元をつかんで、 いやいやをするように頭を振り、  いっそう怯(おび)える。 困った鹿の子は、 とりあえず抱き起こそうと かがんで女に手を添えた。 地面に手をつき、 がくがくとしながらも ようやく頭上げて 鹿の子に振り向けた顔が、 いぶかしげにゆがみ、 ついで、 おそろしくゆっくりと開いた口から 悲鳴が上がった。 抜けたような腰を...

  • くれないの影 第一章――5

    「おまえは聞いたことがないのか。 俺は 鹿の子に聞いてみたことがある。 どうやって あんなに早く 技を覚えるんだってな」 隼人が 期待に目を輝かせて、 聞き漏らすまいと 藤伍の顔に見入る。「とり憑(つ)く らしい」 意外な答えに、 隼人は目を白黒している。「分からんだろう。 俺もよくは分からんのだが、 気のようなものを飛ばして 見ている相手の中に 入り込むんだそうだ。 そうやって 一緒になって技をすると、  どう...

  • くれないの影 第一章――4

     十六夜(いざよい)の朧月(おぼろづき)が、 今は 何も無い舞台を 照らしていた。 夜露が湿って、 何処からか 草の匂いを漂わせてくる。 がらんとした舞台の端っこに 腰をかけて、 足をぶらぶらさせているのは 隼人だった。「こんなところで 何をしている。 冷えるぞ」 さりげなく声をかけたのは 藤伍だ。 隼人は 揺らせていた足を止めるが、 うつむいて黙ったままだ。 藤伍は 自分が羽織っていた厚手の半纏(はんてん)を脱いで...

  • くれないの影 第一章――3

    「生まれ月が分からんし、 あの時は ぐったりして ひどい有様だったからなあ。 たぶん 六つか七つか そこら辺だと思ったが、 以前のことは 何にも覚えていないみたいでなあ。 はじめのうちは 黙りこくったままだったから、 口が聞けないのか と思ったほどだ」「九年前に 六つか七つなら、 今は十五か十六か。 よく育ったものだね。 しっかりして見えるから、 もう一つ二つ上かと思ってたよ。 じゃあ、 ここで軽業(かるわざ)...

  • くれないの影 第一章――2

    「うわあ、 広いなあ。 こんなに開けた場所とは 思わなかった」 鹿の子と隼人が 眼下の家々と田畑に 目を見張る。 無理も無い。 山また山を越えてやってきた山奥に 平地が広がっているとは、 若い二人の思いもよらぬことだった。 狭い山道を歩いてきたばかりの目には、 実際よりも さらに広く感じられる。 それまで、 一座は 都に続く街道沿いか、 港町を移動してきた。 人と物の流れに乗って、 流れ歩いてきたのだ。 若い...

  • くれないの影 第一章 次嶺経(つぎねふ)は山また山――1

    <はじめに>「くれないの影」は ファンタジーです。日本の「昔」を参考にしていますが、 実際の歴史と整合性はありません。人物、 場所 にも特定のモデルは ありません。本当の歴史と ごっちゃにしないよう、 ご注意ください。 あくまで 作者の想像の世界です。では、 和風ファンタジーの世界を お楽しみくださいませ。 木の間隠れの峠道に、 荷車を引いて通る一団があった。 総勢八人。 二人の男女が 道を確かめるように 先を...

  • 犬派のねこまんま 12である        byねこじゃらし 

    <金魚を 一度に 26匹飼う方法> 1)まず、 庭に 穴を掘る。                                 2)ある程度の大きさを確保したら、 穴の内側に コンクリートを塗る。 3)コンクリートが乾くのを待つ。 4)水を張り、 コンクリートの臭いが消えるまで、 何度か水を入れ替え、   池の風情を楽しみつつ、 夏が来るのを待つ。   (急ぎの場合は、 防水塗料をぬるのも良いかもしれない) ...

  • あとがき のようなもの

     赤瑪瑙奇譚を、 最後までお読みいただいたお客様、 ありがとうございました。 あとがきを書くのは 初めてなので、 どうしたらいいのか 分かりません。 そこで、 作者の舞台裏を ちょっとだけ、 書いてみることにします。 登場人物の名前を、 最初は 漢字で考えていました。     斎季安→ ユキア     神羅維→ カムライ     女鳥 → メドリ     星白 → ホジロ     井氷鹿→ イヒカ     海界...

  • 赤瑪瑙奇譚 物語のその後

     水面下の騒ぎが何度か起こったが、 長い時を費やして、 マサゴ、 コクウ、 モクドの三国は、 やがて まとまってマコモ国になり、 マホロバほどの華やかさはないものの、 強く穏やかな国として 発展を見せた。〈ユキア〉  皇太子妃として、 夫のカムライを助けて 東奔西走し、 寝る間も惜しむ働きをした。  二十二歳で姫を産み、 その後 二男一女を儲けて 四人の子の母となる。  本当に 寝る間を惜しんでいたらしく、  ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――11

     ウルク、 ミノセ、 二人が、 ともに息絶えた時、 雨が 止んだ。 勝率四割でも、 部下の命を 誰よりも惜しんだ王子は、 生涯にただ一度の勇姿を 見届けられることもなく、 庭の隅で 命を終えた。 伝記にも残らず、 詩に讃(たた)えられることのない 英雄の死だった。 ほとんどの反乱兵が捕らえられ、 雨も上がった時、 ユキアの額にかかる 『マホロバの星』 が一際輝き、 晴れ渡った天空の星が、 明るく輝いた。 砂をまいた...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――10

     狙いを定めて 放たれた矢は、 豪雨を切り裂いて 飛び、 上がり始めた炎を 火皿ごと 雨の中に はじき飛ばした。 白い煙を引いて 地面に落ちてゆく。 あきらめきれないように、 手を伸ばして 火皿を追う反乱兵の目に、 城の兵士たちが、 狼煙塔めがけて やってくるのが見えた。  狼煙塔の見える場所に ウルクがいた。 炎の上がらぬ狼煙塔を睨み、 そして、 目を瞑(つむ)った。「こうなったら、 せめて カムライだけでも 殺...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――9

    「……ユン……」 カムライの声が 聞こえたのか、 ユキアが 振り向いた。 その姿を見つめて 自失しているカムライに 隙が出来た。 反乱兵の一人が その有様に気づき、 じわりとにじり寄り、 剣を振りかぶる。 一気にカムライめがけて 振り下ろされた剣を、 飛び込んだユキアが、 鮮やかに なぎ払った。 一瞬にして 気を取り直したカムライが その兵を あっさり倒して、 驚いたままの目を ユキアに向けた。「ユン……だったのか!...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――8

    「火を放つのか。 何処だ!」 詰め寄ったハヤブサに、 反乱兵は 不敵な笑みで答えた。「各所から 同時に火を放つ。 一箇所、 二箇所だけ防いだところで 止められぬ。 城は燃え落ちる。 燃え上がるコクウ城を合図に、 町の外に潜んでいる兵たちが、 城下にも火を放ち、 なだれ込んでくる。 皆殺しだ。 全てが 焼き尽くされる」 それを聞いたユキアが、 すっく と立ち上がった。 左腕の青玉を 撫でる。「『人魚の涙』よ、 その...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――7

     しかし、 倒れないのを見て、刺客は 予備の吹き矢を慎重に構え、 もう一度飛ばす。 首と額に 当たったはずだ。 外すわけがない。 それでも 微動だにしない人影に、 四人は うろたえた。「終わりか」 カムライの声が 聞こえるが、 四人には、 もう毒は残っていなかった。 失敗を悟って くず折れる。 人に見えていたものが 不自然に ぐにゃりと倒れ、 幹の陰から現れたカムライが、 それを引きずって 歩き出した。「危なかっ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――6

     四人の刺客は、 声を追って、 さらに 奥へと進んでいった。 庭に面した回廊に行き着き、 一つずつ 扉の中を確かめていく。 次の部屋から、 コトリ、 物音がした。 互いに目配せを交わして、 部屋に なだれ込んだが、 空だ。 しかし、 奥の扉が 閉め残されたかのように、 わずかに 隙間を見せていた。 三人が部屋の中に入り、 残る一人が 振り返って 辺りを確かめた。 近くに人は居ない と思い、 後に続いて 部屋に足を踏み...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――5

     時は 前日に さかのぼる。 結局、 メダカを一匹 殺す羽目になったホジロは、 春の離宮へと向かった。 カムライに 面会を申し入れたが、 門番に すげなく扱われる。「明日のご婚儀を控えて、 殿下はお忙しい。 今日は 無理だな」 ホジロは 仕方なく 手紙を書いて 渡した。「火急の用なんだ。 これを 急いで渡して欲しい。 読めば 絶対に 会ってくれるはずだから。 渡さなかったら、 後悔するのは 君だよ」 脅し半分に 押し付...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――4

     メドリが 扉を細く開けて、 大広間の様子を うかがった。 大きく開け放たれた 広間の入り口から、 押し入ってきた者たちがいた。 ここまで 一気に入り込むとは、 城内に手 引きした者でも いるのだろうか、 意外に 人数が多い。 皆、 旅人が 道中に着るような 袖なし外套を羽織っていた。 一人が、 それを するりと足元に落とすと、 真っ黒い姿が現れた。「いまさら 何が三国同盟だ、 和平だ。 俺の可愛い二人の弟は コク...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――3

     コクウの婚礼は、 日の入り とともに始まるのが慣例になっていた。 今回ばかりは 早めに始めたかったのだが、 そうも行かず、 少しだけ早められるにとどまった。 大広間に続く 控えの小部屋に、 支度を終えたユキアがいた。 年若い花嫁らしく、 髪は 清楚にまとめられ、 細い金の冠を載せていた。 きらびやかな冠の中央には、 額にかかるあたりに 大粒の金剛石が輝いている。 『マホロバの星』 と名づけられた 名高い石であ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――2

    「あれ、 この臭い」 注意深く、 ボロ布を 広げてみた。 ほんの小さな しみがある。 帳場に戻って、さっきの番頭に 聞いた。「あのう、 金魚とか メダカを 売っているところは ありませんか」「はっ?  まだこの季節ですから、 金魚は 出ていませんねえ。 メダカなら 裏の池に いると思いますが」「一匹もらっても いいでしょうか」「ああ、 どうぞ」 番頭は、 こいつを泊めても 良かったのだろうか と、 不安そうな顔をした...

  • 赤瑪瑙奇譚 第九章――1

     カムライが 花嫁を迎えるために、 春の離宮に入った。 マホロバからの一行は、 さる 高位の貴族の屋敷に迎え入れられ、 その屋敷を コクウの護衛兵が 守った。 マホロバから 数はさほどでもないが 精鋭がついてきている。 特に 屈強な者七人が 姫の間近に控え、 警護を固めていた。 ホジロも おまけのように 一緒に くっついてきたが、 馴染みになっていた 調査団の使った宿に 泊まろうとしていた。 婚礼を翌日に控えて、...

  • 赤瑪瑙奇譚 第八章――6

     年が明けて、 婚礼の話が 華やかな話題を振りまいている まだ浅い 春に、 ユキアの元を、 マサゴの第二王子 おじゃる丸こと タマモイが訪れた。「げっ、 今日は 何の御用ですの」 取次ぎに出たメドリは、 相変わらずの拒否反応で 出迎えた。「メドリ殿に 求婚に参ったでおじゃる」「本当の御用を おっしゃってください」「……」 全く相手にされていない、 というか 摘み出されそうな勢いである。「姫君に、 マサゴからの お祝...

  • 赤瑪瑙奇譚 第八章――5

    「なんと、 軍師が 直接参ったか。 ウガヤ殿、 して、 用件はなんじゃ」 ユキアとメドリに、 間違いなく コクウの軍師だ と紹介された男を、 王は 目を丸くして眺めた。「知っている人間を 最小限に抑えたくて、 失礼ながら、 こんな姿で まかりこしました。 婚礼の儀について、 ご相談があります」「うむ、 事情は 承知しておるが、 発表したからには あまり先延ばしにするのも どうかと思うぞ」 ホヒコデ王は、 ウガヤの扮装...

  • 赤瑪瑙奇譚 第八章――4

     そんなある日、 詩語(うたがた)りの流れ芸人が ウケラ城にきた。 楽器を奏でながら 詩を語り、 歌い、 定住せずに 各地を流れ歩く輩である。 彼らは 国境を気にすることなく、 何処にでも ふらりとやってくるが、 さすがに 城にまで押しかけてくる者は めったにいない。 メドリに 詩を見せたい と言っているらしい。 心当たりは 無かった。「なんで詩語り、 私にですか」 取り次いだ召使に 聞き返す。「はい、 詩を預かっ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第八章――3

     やがて、 調査を終えた調査団員も 帰還し始め、 技術援助の具体案や 予想できる見返り等が 検討され、 それぞれの国の 担当者の行き交いも 始まった。 彼らを通じて、 不穏分子の取り締まり状況について、 情報も入ってきていた。 頑張っているらしいが、 肝心の首謀者が 未だになんともならないようだ。 復興や 技術援助の計画は、 着々と 話が進んでいったが、 それらに対しての妨害は 一切無い。 利用するつもりなのか...

  • 赤瑪瑙奇譚 第八章――2

     捕らえられたメギド公は、 王位継承権を剥奪(はくだつ)され、 とりあえず 投獄された。 春の離宮の なかば勝手な修復も、 カムライとユキアを 閉じ込める為の 仕掛けを作る目的で 行われたものだった。 すべての出入り口に 格子が 落ちるようになっていたのだ。 ちなみに 二人が落ちた穴は、 指示して作らせたものではなく、 工事を請け負った からくり好きの大工、 アトメの 趣味だったとか。 町外れに在った小屋は、 実...

  • 犬派のねこまんま 11である         byねこじゃらし

    <風と共に去った――ことに しておいてくれ> マーガレト・ミッチェルの名作 「風と共に去りぬ」 の冒頭に近い 場面で、 主人公 スカーレット・オハラが、 ガーデンパーティで 酔っぱらい、 やたらと からむシーンがある。 吾輩が読んだのは、 古い 翻訳版なのだろうか。 スカーレットが 飲んだのは 「はっか水」 となっていた。 「はっか水」 を飲んで、 何故酔っぱらうのか が謎だったが、 後に 「ミントジュレップ」 ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第八章――1

     モクドのまじない師 イマナジは、 一旦 迎賓館に移ったが、 すぐに国に帰るといって、 ユキアの部屋に 別れを告げに来た。「居候先があんなことでは、 もう ゆっくりもしていられぬでな」「わざわざのご挨拶、 いたみいります。  ところで、 『妖精王の瞳』は モクドにあったものだったとか」 ユキアの問に、 イマナジは 飄々(ひょうひょう)として答えた。「戦というものは、 いろいろなものを失くします。 ご神木から彫り...

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