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2012年05月のエントリー一覧

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――7

     夕方から始まる祝賀興行には、 大勢の観客が 続々と集まってきていた。 満席の客席が ほぼ埋め尽くされたころ、 ユキアも 高く張り出した貴賓席に着いた。 右隣がカムライだ。  さりげなさを装うように、 視線を舞台にむけたまま、 小さな声で 話しかけて来た。「お話があります。 あなたと二人きりで会いたい。 いつが良いですか」「兄上、 せっかちが過ぎると 嫌われますよ。 申し訳ありません ユキア姫」 左隣から、 柔ら...

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――6

    「うわあ――――っ」 落ちた。 そんなに高くは無いが、 不意を突かれて 受身も取れずに転がる。「痛てて、 ううっ、 ここは何処だ。  真っ暗で 何も見えないじゃないか。 ユン!  大丈夫か」「ううっ、 頭ぶつけた」 何処にも 隙間が無いのだろう。  確かに これを作った者は、 いい仕事をしている。 目の前にかざした 自分の手さえも 見えない 真の暗闇だ。 ユキアは、 覆面を解いて 頭を調べたが、 幸い 傷にはなっていない...

  • 犬派のねこまんま 7である          byねこじゃらし

    <ねこじゃらしは  たまーに  名言を吐くのだ>「人間は  絶望の淵に立つと  笑えるものなのだ」 これは、 吾輩が吐いた 名言の一つである。 学生だった頃の話である。 卒業制作が進まず、 講義が無いのに登校した吾輩の元に、 専攻の違う友人たちが訪れ、 よもやま話に花が咲いて、 笑い合っていた。「笑っている場合なのか。 出来てないだろう」 そこに、 笑い声を聞きつけた助手が、 ツッコミに来た。 吾輩が 返した言...

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――5

     翌朝、 春の離宮前には、 なぜか ホジロまでが来ていた。 しかし、 春の離宮は 厳重に閉じられ、 あちこちに 鍵までつけてある。「どうなってるの。 いつもこんななの?」「いや、 管理している留守居役が 居るはずなんだけど」 仕方なく 周りをうろついてみると、 門の脇の門衛詰め所に、 手持ち無沙汰にしている門番とおぼしき男が 一人いた。「あれ、 一人なのか?  何故閉まっているのだ。 中を見たいのだが」「あっ、 ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――4

     宿に着いて、帳場に姫様からの労(ねぎら)いを ことづかってきたと言うと、 奥から驚きの声が上がった。「ユン!」 カムライだった。 後に 困った顔をした ホジロもいる。「ユン、 戻ってきたのか。 また助手をするのか」 ユキアの胸に 赤瑪瑙があるの見て、 カムライが 嬉しそうに眺めた。「いえ、 今度は 姫様一行の衛士を、 臨時だけど」「ユン、 会いたかった。  ホジロが意地悪で、 ユンの住まいを教えてくれないのだ」...

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――3

     カムライは、 晩餐会の間も やはり ユキアを見ようとはしなかった。 視線を向けることがあるのは 男たちと モクドの老女のみ。 少しでも若い女は 完全に 無視している。 ユキアは その様子を 面白がっていた。 始めて出会った時は、 身を挺して 襲撃者から庇ってくれた 凄腕の剣士。 二度目に会った時は、 おおらかな やんちゃ坊主。 そして今日は、 謹厳実直 女なんかには目もくれません、 といわんばかりの 冷たい顔で ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――2

     祝賀式典は、 大広間において 厳粛な雰囲気で始まった。 宮廷の主だった臣下はもちろん、 国のさまざまな要職にある人々が招待され、  いっぱいに埋め尽くされている。 その中で 一際華やかに目を引いているのは、 来賓席のユキアだ。 一見 何気なく見える衣装は、 山繭(やままゆ)の糸から織られた絹。 ごく淡い黄緑色の深い光沢を放って、 気品ある華やかさを 振りまいていた。 髪も若い姫君らしく 豪華に結い上げられ、 ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第四章――1

    「カムライには勿体ないほど 見事な姫君だな」 しかし、 謁見の挨拶を終えたカリバネ王は、 側近のウガヤの前で ため息をついた。 おそらく 初めて心を寄せる女性にめぐり合ったというのに、 息子が不憫な気がした。 話から察する女性とは、 ユキア姫は 正反対に思える。 顔の傷を覆面で隠し、 男の子のような身なりで 剣を振るい、 馬で駆け巡り、  ドスの利いた声で 話す娘とは、あまりに 違いすぎる。「陛下、 今この時期...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――9

     ユキアの仕度を取り仕切ったのは、 もちろんセセナだが、 見事な手腕を 発揮していた。 自分の装いを選ぶときとは まるで違う。 ユキアと目的にあったものを 的確に用意していた。 道中に纏っている物も、 色は ごく淡い朱色で 華やかだが、 余計な装飾を排して、 その代わりに 生地と仕立ては 極上。 高貴な気品をかもし出して、 ユキアによく似合う。 宝飾も 数を抑えて 良い物だけを 身に着けている。 原石そのままの 赤...

  • 犬派のねこまんま  6である          byねこじゃらし

    <子どもの暮らしは ハードボイルド> 小学校に入るまでには 二回引っ越しをしているはずだが、 全く記憶に無い。 白いワンピースを着て湖のほとりに母とたたずむ写真が、 その頃の物らしいので、  二歳くらいの頃だと思う。 温泉町だった。 お風呂で 溺れかけたらしく、  今でも 頭の中までぼんやり温かいのは、 きっと そのせいに違いない。 一年生になったのは、 東北のド山の中。  父の職場である工事現場のすぐ近くだ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――8

    「ユン、 名前は ユン」「ふむふむ、 それから?」「えーと、 年齢はいくつだろう。 マホロバの民です、 多分。 何処に住んでいるのかは、 ホジロに聞いたけど、 あ――っ、 はぐらかされた!  いつも覆面をしているので 顔は はっきりとは分かりませんが、 声が 低めの 迫力のあるドスの利いた感じで、 ……で、 でも 剣の腕は なかなかのものです。 性別は 女」 王とウガヤは 顔を見合わせた。「カムライ、 ふざけているのか」...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――7

     コクウ王国カリバネ王のもとに、 参謀でもある側近 ウガヤ がやって来た。 祝賀式典の準備について、 相談と報告である。 着々と準備が進められていた。「おお、 よいところに来た」 顔を出したカムライを、 すかさず 手元に招き寄せた。「主役のおまえに 段取りを 説明せんとな」「何の主役ですか」 暢気に聞くカムライに、 王は にやりと笑って言う。「使者に発つ前に言ったろう。 華やかな両王家の 結婚じゃ。 式典に マ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――6

    「祝砲の 二発目を撃った者は 居らぬのだ」 驚くユキアを見据えて、 ホヒコデは 冷静に続けた。「喜びのあまりとはいえ、 死人が出た騒ぎになったのでな、 責任を明らかにせよ と命じたが、 ついに 判らなかった。 祝い事でもあるし、 重い罪は問わぬ、 その罰も 余の初孫誕生の祝いに 恩赦にする、 とまで言ったのだが、 隠したわけでも、 ごまかしたわけでもないらしい」 二台目の砲台を指揮した男が、 数日前に 男子をもう...

  • 精進なのか? 遊びでしょ!

    昨日UPした音楽ファイルは、投稿日付を変更して、奥深くに隠しました。聞きたいと思って下さる殊勝な方は、カテゴリーの「♪ミュージック」からお越しくださいませ。FC2ブログでは データサイズの問題で、直接音楽ファイルをアップロードできません。see saaブログを使って リンクする方法をサイトで見つけて、やってみたのですが、オートスタートを解除する方法が上手くいきませんで、ページを開くといきなり音が流れる事を...

  • ♪夕陽よ沈め

    今日は 文章をUPできそうにありません。つなぎに 自作の曲で お茶を濁します。オートスタートが外せません。聞きたくない方は□でストップさせるか、他のページに跳んでください。目次へ誰か 助けて!!!あたし やりました。 ヤッホー夕陽よ沈め 夕陽よ沈め.mp3 作詞も一応しました。一応ですね。        ♪夕陽よ沈め 沈んでしまえ         西の空に赤く燃えても 名残を惜しむなみたいな感じですが、...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――5

     せセナの様子が おかしい。 以前の華やかさが、 まるで 感じられない。 ともすると、 オトヒコや モクドの末っ子と一緒のことも多くなって、 口の悪い連中から 『壁紙三兄弟』 などと言われたりしている。 急激な変化に 皆驚いていた。 父ウナサカと母アリソが 心配して 呼び出した。「セセナ、 何があった」「正気に 戻りました」 ひどく 落ち着いた声だった。 アリソが目を見張る。 本当に 変わってしまった。「わたした...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――4

     そうこうするうちに、 モクドの末っ子王子までが、 人質になりに やってきた。 何故 こんなに早く来たのか と問われて、「マホロバ王国を 早く拝見したくて、  それと 、タマモイ王子が いらっしゃるとうかがい、 見物に……」 マサゴの第二王子は、 結構な有名人らしい。 モクドの王子は おとなしい少年で、 マホロバの王子たちと歳も近い為か、 オトヒコと気があったようだ。 以後、 目立たない二人が 一緒にいるところが...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――3

     ユキアは 書庫に向かった。 が、 目指したものは 見つからない。 大雑把(おおざっぱ)なものはあるが、 欲しいのは 詳しく書いてあるものだ。 やはり、 マホロバにいては 無理かと思ったとき、 書庫の隅で 熱心に本を読んでいる タマモイを発見した。「あら」 と声をあげると、 相手も気づいた。「引きこもり姫も お勉強でおじゃるか」「タマモイ様こそ、 珍しいところで お会いしますね」「そんなことは無いぞよ。  人質では...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――2

     風変わりな王子の噂は、 宮中を 駆け巡った。 ぞろりぞろり と神出鬼没に現れては、 意味不明な言動を残して 消えるらしい。 よく見れば 美しい王子なのだが、 よく見ることさえ躊躇(ためら)われる様子に、 物好きな女官たちも、 手を出しかねているようだ。 ユキアが 改めて訪れると、 セセナは 相変わらず 落ち込んでいた。「ごきげんよう、 コクウに行っているホジロから 知らせが入ったのよ。 カムライ殿下は、 別荘の...

  • 赤瑪瑙奇譚 第三章――1

     目的を果たした ユキアは、 単身 マホロバの城に 帰りついた。 季節の生り物を献上しようと、辺境から来た団体さんに紛れて、 城の中に 忍び込む。 目立たない修行を積んだユキア には、造作も無いことだった。 お姫様に戻って メドリを安心させ、 さて、 次は セセナの部屋に行こうとしたが、 城内が あわただしい。 まずは メドリを遣って、 様子を うかがわせた。 なかなか 帰ってこない。 随分経って、 なんともいえな...

  • 犬派のねこまんま  5である          byねこじゃらし 

    <貧乏人の海苔> 故郷のボロい借家には、 松 が生えている庭があった。 きれいなシャボン玉を作るレシピには、松脂(まつやに)が重要なアイテムである。 削った洗濯石鹸、 番茶の出がらし、 そして松脂が基本の材料だ。 番茶はつややかな七色にする為、 松脂は大きく壊れにくいシャボン玉にする為 である。 ……たぶん。 幼い吾輩がシャボン玉遊びをする度に 、松は皮を剥ぎ取られて 傷になっていったから、 記憶にあるのは、...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――9

     翌日、 ユキアとホジロの二人と別れたカムライは、  イヒカを伴い、 駆けつけた一隊と共に 砦の奥を調べたが、例の部屋は もぬけの殻になっていた。 イヒカは 嘘をついていると思われるのが嫌で、 必死に叫ぶ。「本当に あったんだ!  嘘じゃない!」「少なくとも、 何かが あったことは確実でしょう。 きれい過ぎる。 他の場所は 埃だらけなのに、 ここは 塵一つ落ちていない」 隊を率いてきた逞(たくま)しい男が、 落ち着...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――8

     イヒカに話を聞いたユキアは、 二人のところに戻るや、 急き立てるように 砦を離れた。 帰りは、 途中の町で 宿をとった。 ホジロがへたばっていたし、 子供連れになってしまった からでもあった。 イヒカを 置いてはいけない。 砦の奥にあった扉の中には、 大量の、 イヒカに言わせると、 ピカピカの 武器が在ったという。 それを聞いたカムライは、 宿に着くや否や 伝令をとばした。「マサゴとの講和の条件に、 砦の完全...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――7

    「助けて」 イヒカは、 覆面の人物の背後に隠れて 気づいた。  女だ。 もう 駄目だ。 が、 意外にも 悠々とイヒカをかばう。 もちろん ユキアだ。「大の男が 二人がかりで 、子どもをいじめちゃ 駄目じゃないの」 呑気な口調を 吹き飛ばすかのように、 男の一人が 詰め寄る。「おまえ、 何者だ」「通りすがりの者よ」「へっ、 よりにもよって こんな場所を通りすがるとはな。 何が目当てだ」 男の顔には、 不信感しか 浮かん...

  • 赤瑪瑙奇譚 人物紹介 (登場順)

    ※人物紹介です。新しく登場する度に、随時 追記していきます。 ホヒコデ――――マホロバ王国の王。ユキアの祖父。 ウナサカ――――マホロバ王国の皇太子。ユキアの父。イケメン。 テフリ―――――ウナサカの后。ユキアとエヒコの母。美女。 アリソ―――――ウナサカの側室。セセナとオトヒコの母。 ユキア―――――ウナサカ皇太子の一の姫。「徹底的に目立たない姫」を目指した揚句、武道にのめりこんだ。            セセナの為に、...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――6

     イヒカは 砦に潜り込んだ。 村長から 危険だから入るな と釘を刺されていたが、 知ったことではない。 腹が減っていた。 両親は 戦で死んだ。 村長は 悪い奴ではない。  親を亡くした孤児たちに、 一日一回 わずかな量だが 食べ物をくれた。 だが、 九歳の少年、 イヒカの身体には 到底足りない。 今は 腹を満たすことしか念頭に無いが、 本人の意識していないところで 不安も渦巻いていた。 一人ぽっち。 無茶を承知で...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――5

     翌日、 ユキアとホジロは、 朝早くから押しかけてきたカムライに 引っ張り出された。 三人を乗せた二頭の馬は、 北へ向かって駆けた。 早朝から休むことなく 駆け続け、 日が中天に懸かる頃、 目的地に着いた。 一見 のどかにも見えたそれは、 砦の跡だった。 近付いて見れば、 武器が当たって付いたのだろう 多くの傷があり、 折れて 刺さったまま残る矢もある。 焼け焦げた跡、 不器用な修理の跡、 戦場の様が 今なお窺い...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――4

     タヅムラが、 コクウ側に 調査団の名簿を渡したところ、 居合わせたカムライ王子が ホジロの名を見つけて、『このホジロというのは、 丘の上の屋敷に住んでいる ぼうっとした男か』 と 聞いてきたという。 たぶんその男だ と答えると、 嬉しそうにしたらしい。 それを聞いた ユキアとホジロの二人は、 顔を見合わせた。「ほんのちょっとしたご縁で、  そうだ、 ご挨拶に行きたいけど、 どうしたら お会いできますかね」 ホ...

  • 赤瑪瑙奇譚 第二章――3

     翌日から ユキアとホジロは、 適当な誰かの後にくっついて、 ぶらぶらと見物して歩いた。 町や村のたたずまいは、 まだ繕いきれずに貧しさを露呈していたが、 明らかな活気が満ちていた。 長い戦が終わったことを実感したのだろう。 雑多な印象の中に 笑顔が垣間見える。 宿屋は 一行の貸し切りになっていた。 調査から帰ってきた団員は 広間に陣取って、 資料のまとめと情報交換の話し合いに忙しい。 ある大雨になった日、...

  • 犬派のねこまんま 4である          byねこじゃらし

    <人間だって 生き物なのだ> 35年前、 奴隷として アメリカに連れてこられた黒人を描いた「ルーツ」というドラマが 大ヒットした。 日本でもブームになり、 「あなたのルーツを調べます」 とか言って、 インチキっぽい家系図をでっち上げる、 怪しげな商売 も繁盛した。 主人公の クンタキンテという名前も、 けっこう有名になった。 色の黒い男の子の あだ名になったりもしたはずだ。 わーい、 クンタキンテ 人間は時...

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Author:しのぶもじずり
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