カテゴリ:富士山の見つけ方のエントリー一覧
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富士山の見つけ方 あとがき
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の小説に、富士山が出てくるのがありました。 ごめんなさい。題名が全く思い出せません。 海外でひと旗挙げようとした日本人の青年が、上手くいかず、 各地を転々としたあげくに、尾羽うち枯らして日本に返って来る話です。 エンディングで、 太平洋を日本に向かう船の船底に青年が転がっていると、 「日本だぞー」という声が聞こえ、船内が騒がしくなります。 青年が甲板に上がると、見...
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富士山の見つけ方 3
「もっと 上だ!」「えー、 上だろ」「ばーか、 どこ見てんだよ。 もっともっと 上だよ」「上は空だぞ」「あっはっはっは、 空の上だよ」 笑い声に混じる会話を頼りに、 いさ子も視線を上げていった。 あった。 富士山の頂は、 青い空の真中に浮かんでいた。 ああ、 こんなにも高かったんだと思うと、 何だか泣きそうになった。 * * * 覚えていたはずだった。 富士山の高さと、 我が身の低さを...
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富士山の見つけ方 2
一日目は、 あいにくの曇り空だった。 美術館を見物し、 強羅温泉の旅館に着いた。 富士山は見えなかったが、 温泉は気持ち良かった。 焦ることはない。 旅は 始まったばかりだ。 翌日、 ケーブルカーとロープウェイに乗ったが、 ガスばかりで 景色はまったく見えず、 もちろん、 富士山の影も形もない。 温泉卵は食べ損ね、 芦の湖で船に乗り、 元箱根へ。 旧街道の杉並木を歩き、 関所跡を見物した。 もう 完全に た...
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富士山の見つけ方 1
いさ子の父親は 転勤族だった。 おまけに 家族を引き連れて旅行するのも 好きだった。 その上、 日本の何処にいても、 盆暮れには、東京にある母の実家を訪れた。 列車に乗るのが 好きだったのかもしれない。 いさ子は、 寝台車は未経験だったが、 グリーン車だって乗ったことがある。「本来、 グリーン車は 立派な大人が乗るものである。 子どもが乗る物ではい。 騒いだら、 どこの駅であろうとも 引きずりおろして置いて...