・香美位山  六 (完) ・香美位山  五 ・香美位山  四 ・香美位山  参 ・香美位山  弐 ・香美位山  壱  (短編)

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カテゴリ:香美位山のエントリー一覧

  • 香美位山  六 (完)

    「……」 戸惑いの沈黙は一瞬。 無遠慮な動きが、水と飯を奪い取った。「礼だ。 おかげで 私が為すべきことが見えた。 礼を言おう」 水を飲み、 握り飯に齧り付く闇に、 晴れやかな感謝を告げた。「近くに 土地神様はいないらしい。 私の願いは 届かぬらしい。 だから、 私が生まれ変わって土地神になり、 この地を護ることにする」「おめでたい事だ。 姫さんは 何故ここに居る。 何故光を奪われ、 闇の中に閉じ込められて、 ...

  • 香美位山  五

     嘲笑う声が、楽しげに続けた。「教えてやろう。 何もできない。  ククク、 たくさんの『過去』が積み重なって、 『今』がある。 ゆがんだ、 あるいは間違った『過去』が しょうもない『今』を作っている。 そして、 いくつもの『今』が 未来を創る。 閉じ込められ、 身動きも自由にできないおまえの『今』が 何を作れると思うんだい?  なーんにもできない。 クククク」「一理ある。 私は私の『過去』を 私に語ってみよう...

  • 香美位山  四

    「………… さあ…… な、 …………………… わ、 …… わ す…… れ…… た」 とぎれとぎれの、頼りない音が答えた。「名は」「…………」「ないのか」「……………… あー るー」 それきり、 どちらも声を出さなくなった。 身動きする気配すら、 途絶えた。 いくばくかの時が過ぎ、  祈りを唱えようと思い立った姫が両手を合わせると、 再び 喉の渇きを思い出した。 しかし、 あるかなきかの心細い光さえもが、  何処にも残っていない 真の闇ばかりだった...

  • 香美位山  参

     時の流れは 目に映らない。 特に 手がかりさえ無い闇の中では ことさらである。 どれほどの時が流れ去ったのか、 気がつけば、 辺りは 静けさに囲まれていた。 祈姫は 手探りで姿勢をただした。 出来ることは、 一つしかない。 静かに両手を合わせ、 土地神に届くようにと、 祈りをささげた。 開けても閉じても変わらないが、 いつもの習慣で 目は閉じた。 何処からか聞こえてきた、 ねぐらに帰るらしい鴉の声に、 わずか...

  • 香美位山  弐

     南に座す香美位山(かみいやま)の中腹で、 儀式は行われた。 ぽっかり空いた 底知れぬ洞穴を塞いでいた岩が 取りよけられ、 朽ち果てんばかりに古びた 封印の印が外された。 領民でさえ、 いわれを忘れて久しい洞穴の前に立った祈姫は、 紛(まご)うかたなく 清らかで美しく、 また、 気高かった。 耳に馴染(なじ)みの無い 祝詞(のりと)に送られ、 気高き生贄は 謎の洞穴に消えた。 まん丸い二つの握り飯と、 水の入った三本...

  • 香美位山  壱  (短編)

     それには 名前があった。 いつからなのかは 分からない。 誰が名づけたのかも 分からない。 それを生み出したものが 名付けたのか、 それを恐れたものたちか 呼んだのか、 あるいは、それ自身が 名乗ったのか。 闇と書いて ヒソカ。 それが奴の名前だった。 いづれにしても、 祝福された名前ではないことは、 容易に推察できる。 問われて名乗る機会がなかったとしても、 それが 奴の名前だった。           ...

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