カテゴリ:馬十の辻に風が吹くのエントリー一覧
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あとがき かな
<馬十の辻 あとがき かな> 訓練は完ぺきでも 実戦は初めて、 という ルーキーの危なっかしさを書きたかったのですが、 加減が難しいです。 キャラがブレてしまったかもしれない と心配です。 ドラマの世界では 「キャラブレ」 という言い方があるらしいです。 言葉があるということは、 要注意事項なのでしょうね。 1/3の「次回作のご案内」に書いたように、 「馬十の辻」は 仙台にある「芭蕉の辻」からヒントをもらい...
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馬十の辻に風が吹く 第九章―5(完)
たまたま通りかかった親切な人が 援けてくれて、 保護してくれていた。 そんなあいまいで、 いいかげんにも程がある 言い訳とともに、 桜子皇女と幸真千皇子が帰ると、 内裏は ひとしきり大騒ぎになった。 どこにいたのかと聞かれた幸真千が、 「あっち」と、 適当に指差した方角が、 たまたま南西だったことで、 皆が何となく納得してしまい、 二人に何の障りもないと判明するや、 たちどころに内裏は元の様相に戻った。...
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馬十の辻に風が吹く 第九章―4
表向きは、 不幸な手違いにより、 石動原邸で 何人かの死人が出た、 というだけになっている。 まさか、 帝、東宮、葦若、ついでに佐々姫の 暗殺計画だったと知っているのは、 ほんのわずかである。「大丈夫です。 しっかり者の叔母が居ますから」 先の右大臣一家を襲ったのは、 ほかならぬ多万記だった。 斗平野は 真央土馬の名産地である。 先の右大臣が、 熱密から軍馬を入れようとしていたのを知り、 阻止を図っての...
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馬十の辻に風が吹く 第九章―3
「待ってくれ。 その他人事(ひとごと)な言い方は、 つれないではないか」「他人事ですから」「前に言いましたよね。 妻にするなら、 命の恩人に決めていると」「ですから、 砂々姫様とお幸せに!」「私を、 じゃじゃ姫に押し付ける気ですか。 酷い」「酷いのは誰ですか。 盃事を済ませて間もないというのに」「だあって、 あれはあれだし」 あまりの言い草に カッとした真咲は、 今度こそ殴ってやろうとして振り返った。 殴るに...
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馬十の辻に風が吹く 第九章―2
慰めにもならない言葉しか返せない真咲を咎めるでもなく、 葦若は、 ゆっくりと顔を上げた。「来て良かった」 晴れ晴れとした笑顔が浮かんだ。 真咲が それとなく感じていた、 どこか取り繕ったような笑顔とは別物だ。「命の恩人に会えた。 やはり あなただったのですね」「ホヘ、 いったい何の事でしょう」 真咲は、 とっさに とぼけることができた自分を褒めた。 この期に及んで 何を言い出すのだ、 と葦若を責めたい。 ...
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馬十の辻に風が吹く 第九章―1
馬十の辻から南に少し。 さらに、 わき道に逸れれば、 茂った藪に覆われて、 思いもよらぬ どん詰まり。 四年前の惨劇を、 すでに 草木と時の流れが覆い隠した場所に、 真咲は立っていた。 ゆっくりと見まわした視線の先を、 白い蝶が ひらひらと飛び、 一本の野草にとまった。 蝶が羽を休めたのは、 あの日、 少年だった葦若が倒れていた辺りだ。 過去の悲しみを隠すように、 ぎっしりと草が生い茂っていた。 やがて、 ...
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馬十の辻に風が吹く 第八章―9
「なんだと?」 太保以が小さく叫んだ。「守護の呪を、 御存じないのですか」 帝の即位の儀は、 丸三日かけて盛大に催される。 その式次第の最後には、 確かに『守護の呪』がある。 しかし、 およそ儀式を盛り上げる演出くらいにしか認識されていない。 だれも 本気になどしていないのだ。 ところがどっこい、 真神門最高の術者が掛けるのだ。 ものすごく効いてしまうのである。 だが、 効いてしまう故の問題もあって、 ...
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馬十の辻に風が吹く 第八章―8
しなくてはならない後始末が、 また増えた。 幸真千の居どころを 真咲は容易に吐かないだろう。 強い瞳を見れば、 想像がつく。 殺すしかないと思えば、 残念だ。 気に入っていたのに。 広い庭の雑草のここかしこに、波が走り、 何とも知れぬ音が聞こえる。 太保以は、 そぞろに眺めて、胸を押さえた。 痛みは、いっこうに引く気配が無い。 そうこうしているうちに、 空は深い菫色に変わり、 夜の帳を下ろした。 雑草の...