カテゴリ:まだまだのエントリー一覧
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まだまだ (4) 完
「ああ、 砲丸投げクラブの」「いや、 無いから。 そのクラブ。 陸上部でしょうに。 あっはっはっは、 砲丸投げクラブって、 笑えるんですけど」 笑ってる場合じゃない事に気付かなかった。 けっこう長い間 気づかなかった。 噂の当事者なんて、 そんなものだ。 私が、 水野君ラブ ということになっていたらしい。 びっくりだ。 誤解が解けたのは、 学年が上がって クラスが変わり、 接点が全くなくなってからだった。「...
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まだまだ (3)
うちのクラスは、 男女が隣同士になるように席が決められる。 だから 両隣りは男子だ。 右は、 狆みたいな顔の眼鏡男子 田中君だ。 アホだ。 狆ならペロペロするだろうが、 田中君は 一応これでも人間だ。 左は、 ガタイの良い水野君だ。 砲丸投げで 県大会の二位になったらしい。 いかにも砲丸投げをしそうな体型だ。 こいつらも、 いずれは ペロペロするようになるのだろうか。 想像できない。「あれっ、 消しゴムが...
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まだまだ (2)
う~む、 しかし、 生理痛に不妊症とくれば、 産婦人科方面しか思いつかない。 もしかして、 医学用語か?「生方(うぶかた)君。 あの子んち、 お父さんが産婦人科だよ。 ふわ~」 帆織美代子は 朝から眠たそうだ。 生方義明。 真面目で 成績の良いやつだと思っていたが、 お父さんが医者だったのか。 あいつも医者になるつもりなんだろうか。 産婦人科かあ。 何をするのか よくは知らないけど、 知り合いの産婦人科に...
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まだまだ (1)
「ねえ 納念(のうねん)さん。 ペッティングって知ってる?」 磐田治美(いわたはるみ)が 声をかけてきた。 珍しく、 声をひそめた小声である。 大声で言えない事なのだろうと、 とっさに判断したものの、 そんなものは知らなかった。 首を横に振った。「ペインティングナイフじゃなくて?」 斜め後ろの席から、 眠そうな声で 帆織美代子(ほおりみよこ)が言った。 聞こえたのだろう。 充分な小声ではなかったようだ。 始業時...