カテゴリ:迷惑な子どものエントリー一覧
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迷惑な子ども――7
五日目になると、 悪ガキは 昼過ぎにはやって来た。 ほとんど助手のように わがもの顔で陣取っている。 その内、 覗き込む客に、 申し込み台に置いてあったチラシを 渡したりもしはじめた。 まずいことをしそうな時は、 注意すると、 おとなしくいう事を聞く。 雇ったつもりはないのだが……。 高橋はというと、 余計な口出しはせず、 いつの間にか、 自然に 悪ガキとなじんでいた。 最終日、 旅館の女将さんが、 私も撮っ...
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迷惑な子ども――6
その後は、 特に悪さをするでもなく、 真剣に撮影を見学していた。 子どものくせに、 よく飽きずに見ていられたものだ。 旅館に戻って食堂に行けば、 一番乗りだった。「他の人が来る前に 食べちゃって」 女将が、 鯛の兜煮を出してきた。「一つしかないから 今のうちにね」 毎日残さず食べ、 お代わりすることに 気を良くしたようだった。 それからは、 目立たないようにだが、 毎食、 他の人よりおかずが一品増えた。 四...
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迷惑な子ども――5
調子よく働いて 夕方。 好事魔多し。「ねえ、 なにやってんの?」 足許に近いところから、 悪そうな声が聞こえた。 例の、 ちっちゃな悪ガキである。「写真を撮ってるんだよ」「ふううん、 じゃあ、 とって」「お母さんかお父さんに 申し込んでもらわないとね。 子どもを、 勝手には撮れないのよ」「ちぇっ、 しょうばいだからでしょ」「正解」 小学生になるやならずの年頃である。 それにしては、 言うことが いちいち生...
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迷惑な子ども――4
件の女の子は、 怒鳴られても悪びれることなく、 あかんべえをして 売り場を少しだけ離れた。 しかし、 生意気そうな顔で、 近くをウロウロしはじめ、 特に逃げるでもなく、 帰ろうとする素振りも無い。 垢じみて、 汚れのしみついた服で、 肩をそびやかせる。 怒鳴られるのも慣れている様子だ。 どうやら ここは、 困ったチャンのいる店のようだ。 数ヶ月前に行ったデパートでは、 子ども服売り場に隣接された 婦人服売...
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迷惑な子ども――3
テストを装って、 注意を引く為に、 ストロボを焚いてみる。「何をするんですか?」 興味を引かれて 寄って来たお客さんに、 セールストーク。「あら、 じゃあ、 子どもが学校から帰ったら 連れてこようかしら」「お待ちしています」 幸先が良さそうだ。 そうこうしているうちに、 最初のお客さんをゲット。 愛らしい幼児の笑顔をおさめることに成功した。 だが、 町はなかなか返ってこない。 いいかげん、 次の段取りを教...
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迷惑な子ども――2
翌朝は、 スタジオを組みたてる為に、 早めに出勤である。 気合を入れて、 どんぶり飯のお代わりも忘れない。 バイトの子は、 おとなしそうな女子高生だった。 本社からは 大学生を依頼してあるはずだが、 手違いだろうか。 女子高生は初めてだ。 いつもより やさしい笑顔をおまけに付けて、 仕事の説明をした。 手始めに、 店の出入り口で チラシを配ってもらうことにした。 出来なかった。 腰が引けてる。 恐る恐る出...
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迷惑な子ども――1
「部屋は、 空いてるっちゃ 空いてるんですけどね。 女の人が独りというのは……」 気の良さそうな旅館の女将は、 迷惑そうな表情を取り繕うこともせず、 それだけ言って、 押し黙った。 女将と言っても、 見た目は 普通のおばさんだ。「お部屋が空いているなら、 何とかお願いします。 決して 怪しい者ではありませんから。 ほら、 そこにマルダンがあるじゃないですか。 私、 そこで 一週間仕事をしなくちゃならないんです...