カテゴリ:へべれけな人たちのエントリー一覧
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へべれけな人たち 3
<山ちゃん> 私鉄の小さな駅の裏を少し進むと、線路沿いに、 ピンク色のネオン管で「へべれけ」とだけ書いてある下に、 古びた扉がある。 その扉が、がたりと開いて男が来た。 入り口を塞ぐほどの大男だ。 「おお、山ちゃんいらっしゃい」 ひげ面のマスターが、思いのほか愛想の良い声で迎える。 大男の山ちゃんは、慣れた様子で長椅子に腰を下ろした。「ビールをお願い」「よう、山ちゃん」 カウンターの入り口近い方に...
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へべれけな人たち 2−3
【すねの傷3】「クドポンはさあ、やっぱ忙しいんじゃないの。 二日酔いで、患者を切り損なって殺したらまずいじゃ〜ん。 ふぇへっへっへ」「シロクマちゃん、 そろそろウーロン茶にしとこうか。 笑い方が変だよ」 マスターはさりげなくグラスを替えた。「シロクマちゃんの前科って、道交法違反?」 おばさんが、肉にかぶりつきながら聞いた。「うん、駐禁。罰金刑だぞ。 金が無い時に。俺のばっかやろ〜」 扉が開き、ママ...
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へべれけな人たち 2−2
【すねの傷2】「マスター、肉のかたまりはある?」 奥のカウンターで飲んでいたおばさんが、声をかけた。「あるよ。焼く? 良い塩梅に熟成してるよ。 包丁を入れた時の感触が良い」「おお、じゃあ、そいつをぐさっとやってくれ。厚めにね」 Bが、また吹いた。 Aの目が、落ち着き無く店内を泳ぎ回っている。「はい、お待たせ」 マスターが、三人の前につまみを並べた。「久しぶりだから、腹にしみるわあ。娑婆は良いね」 中...
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へべれけな人たち 2−1
【すねの傷−1】 私鉄の小さな駅の裏を少し進むと、線路沿いに、 ピンク色のネオン管で「へべれけ」とだけ書いてある下に、 古びた扉がある。 通りかかった三人の男たちが居た。「おい、ここで一杯ひっかけていくぞ」 中の一人が扉に近づいた。 体格のいい中年だが、 乱暴な言葉ほどには、気迫のようなものは感じられない。「なじみの店に話を通してありますから」 チンピラ風の若いのが慌てて止めようとした。 とりあえ...
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へべれけな人たち 1
<ありがとうの洪水大作戦> 私鉄の小さな駅から、 二人の若者が吐き出された。 疲れた様子で歩き出す。 「今日は ずいぶん長引いたな」 物慣れた様子の、 いまどきの若者風が言い、 「でも、 面白かった」 おとなしそうな、 ごく普通が答える。 名前は ショウとマサヤ ということにしておこう。 ショウが 「一杯飲んで帰らないか」と、 誘う。 「飲むなら、 駅の反対側に出ればよかったね。 こっちに飲む...